【伯爵令嬢アリスの憂鬱】突然の手紙(第1話/全4話)
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◆大広間をきれいにする ネズミ退治(1)
ネヴァーランドの片田舎。
ブラウブルート伯爵家のアリスの住む屋敷にやって来たアイドルたちは、それぞれの持ち場へと分かれていった。
***
大広間の両開きの扉を開いた千夏 水希は咳き込んだ。
「ゴホッ、ゴホゴホ……なんだよこの埃は! それに木の匂いが強すぎる……」
「わ~、本当に凄いですね」
水希の後ろからひょいと顔を覗かせて、大広間を覗き込んだケルル・ルーは目を見張った。
「これはまた……凄まじいな」
部屋中を埋め尽くす茨を見て嘆息しているのは堀田 小十郎。
小十郎は睡蓮寺 小夜からどうしても、と助力を求められてここへやってきているのだ。
確かにアリスや小夜だけでは手に余るだろうよ、と納得している。
「アリスの嬢ちゃん、よくここまで放っておいたな」
睡蓮寺 陽介も呆れ顔で茨を見上げる。
「俺的には伯爵さんに謝っちまった方が早い気がすっけどよ、どっちにしろ掃除はした方がいいんだ。
皆で綺麗にして、まずは形から整えていこう! ま、頑張っていこうぜ!」
そこへ町田 花儀が水の入ったバケツとモップを二本持ってきた。
「はいは~いアイドルの皆さん、足の踏み場はわたし達が作るから、茨もネズミさんも心ゆくまで倒しちゃってねぇ~♪」
楽しそうに言うと、花儀は自分と瓜二つのケルルにモップを一本手渡す。
花儀はケルルに目を合わせて、思わせぶりにニヤリと笑ってみせる。
「お掃除は高い所から……が基本だけど、例外もあるのだ!」
「お掃除は高い所から……が基本ですけど、例外もあります!」
思わず二人の声が揃って、ころころと笑い合う。
花儀とケルルは早速モップをバケツの水に浸し、軽く絞って水気を多目に残し床を走らせる。
時々飛び出してくるネズミに怯むことなく、二人は合わせ鏡のように息の合ったモップ掛けで、分厚い埃を拭き取って道を作っていく。
「さっすがケルルちゃん、お掃除スキルはこのわたしとほぼ互角なのだ」
花儀に褒められてケルルは花のように笑う。
踊るような二人のモップ掛けで大広間の入り口付近は、人が入っても埃が舞い上がることはなくなった。
きれいになった床に一歩足を踏み入れて、顎に手を当てて思案しているのは辿 左右左。
「和を持って貴しと為す」の精神を身上とする左右左は、どんな時でも話し合いで解決したいと考えている。
茨やネズミと話をすることは無理だとしても、かつてここに骨をうずめた執事やメイドの霊の声が聴けないか試し、大広間の手入れについての対策などを聞ければと思う。
しかし耳を澄ましても霊の声は聞こえず、期待はしていなかったが少し落胆して、左右左はネズミや茨と戦う覚悟を決めた。
一方、屋敷の外で、ネズミをおびき出す仕掛けを講じている者がいた。
世良 延寿は【虹色ショートケーキ】、行坂 貫は【白雲のパンケーキ】を置いて、美味しそうな匂いに釣られて出てくるように仕向けている。
たくさんのネズミのうち一部でも屋敷の外に自主的に出て行ってくれたら、それだけ退治する負担が軽くなる。
むやみに殺さなくてもいいなら何よりだ。
延寿と貫が物陰から見ていると、チョロチョロと数十匹のネズミが出てきた。
警戒しながらも、甘いお菓子を手に持って齧る姿は、意外に可愛い。
二人は互いに微笑み合うと、大広間に戻った。
大広間では花儀とケルルがモップの道を付け、埃の無い床面積を拡大していた。
そうしているうちに、ケルルが面白いものを発見した。
埃の上に点々と一定方向に向かって続く、たくさんの小さな足跡。
生い茂る茨の隙間からケルルが腰をかがめて覗き、足跡の行く先を目で辿っていくと、茨の陰にネズミの隠れ家を見つけた。
何匹ものネズミがこちらを見て警戒しているのが見える。
ネヴァーランドの片田舎。
ブラウブルート伯爵家のアリスの住む屋敷にやって来たアイドルたちは、それぞれの持ち場へと分かれていった。
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大広間の両開きの扉を開いた千夏 水希は咳き込んだ。
「ゴホッ、ゴホゴホ……なんだよこの埃は! それに木の匂いが強すぎる……」
「わ~、本当に凄いですね」
水希の後ろからひょいと顔を覗かせて、大広間を覗き込んだケルル・ルーは目を見張った。
「これはまた……凄まじいな」
部屋中を埋め尽くす茨を見て嘆息しているのは堀田 小十郎。
小十郎は睡蓮寺 小夜からどうしても、と助力を求められてここへやってきているのだ。
確かにアリスや小夜だけでは手に余るだろうよ、と納得している。
「アリスの嬢ちゃん、よくここまで放っておいたな」
睡蓮寺 陽介も呆れ顔で茨を見上げる。
「俺的には伯爵さんに謝っちまった方が早い気がすっけどよ、どっちにしろ掃除はした方がいいんだ。
皆で綺麗にして、まずは形から整えていこう! ま、頑張っていこうぜ!」
そこへ町田 花儀が水の入ったバケツとモップを二本持ってきた。
「はいは~いアイドルの皆さん、足の踏み場はわたし達が作るから、茨もネズミさんも心ゆくまで倒しちゃってねぇ~♪」
楽しそうに言うと、花儀は自分と瓜二つのケルルにモップを一本手渡す。
花儀はケルルに目を合わせて、思わせぶりにニヤリと笑ってみせる。
「お掃除は高い所から……が基本だけど、例外もあるのだ!」
「お掃除は高い所から……が基本ですけど、例外もあります!」
思わず二人の声が揃って、ころころと笑い合う。
花儀とケルルは早速モップをバケツの水に浸し、軽く絞って水気を多目に残し床を走らせる。
時々飛び出してくるネズミに怯むことなく、二人は合わせ鏡のように息の合ったモップ掛けで、分厚い埃を拭き取って道を作っていく。
「さっすがケルルちゃん、お掃除スキルはこのわたしとほぼ互角なのだ」
花儀に褒められてケルルは花のように笑う。
踊るような二人のモップ掛けで大広間の入り口付近は、人が入っても埃が舞い上がることはなくなった。
きれいになった床に一歩足を踏み入れて、顎に手を当てて思案しているのは辿 左右左。
「和を持って貴しと為す」の精神を身上とする左右左は、どんな時でも話し合いで解決したいと考えている。
茨やネズミと話をすることは無理だとしても、かつてここに骨をうずめた執事やメイドの霊の声が聴けないか試し、大広間の手入れについての対策などを聞ければと思う。
しかし耳を澄ましても霊の声は聞こえず、期待はしていなかったが少し落胆して、左右左はネズミや茨と戦う覚悟を決めた。
一方、屋敷の外で、ネズミをおびき出す仕掛けを講じている者がいた。
世良 延寿は【虹色ショートケーキ】、行坂 貫は【白雲のパンケーキ】を置いて、美味しそうな匂いに釣られて出てくるように仕向けている。
たくさんのネズミのうち一部でも屋敷の外に自主的に出て行ってくれたら、それだけ退治する負担が軽くなる。
むやみに殺さなくてもいいなら何よりだ。
延寿と貫が物陰から見ていると、チョロチョロと数十匹のネズミが出てきた。
警戒しながらも、甘いお菓子を手に持って齧る姿は、意外に可愛い。
二人は互いに微笑み合うと、大広間に戻った。
大広間では花儀とケルルがモップの道を付け、埃の無い床面積を拡大していた。
そうしているうちに、ケルルが面白いものを発見した。
埃の上に点々と一定方向に向かって続く、たくさんの小さな足跡。
生い茂る茨の隙間からケルルが腰をかがめて覗き、足跡の行く先を目で辿っていくと、茨の陰にネズミの隠れ家を見つけた。
何匹ものネズミがこちらを見て警戒しているのが見える。


