【シアターオルト】食神都市オーサカ
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【第一幕】食の使いを手に入れろ!(2)
ドラゴンサーモンが改めて堀田小十郎に向き直り、本格的な戦闘シーンの緊張が舞台上に漲る。
小十郎の両横にスッと並び立ったのは、アーヴェント・ゾネンウンターガングと、【セクシーネコスーツ】で猫耳尻尾付きの弥久風花だ。
アーヴェントはドラゴンサーモンを見上げて、「でかいな……」と呟いてから小十郎に言った。
「ここは共に戦おう」
「私も協力するわ!」
風花が力強く頷く。
「ああ、皆で協力せねば倒せぬほど食の使いは強いからな。たとえ演劇でもそれは伝えたいものだ」
小十郎が言うと、風花もそれに賛同する。
「そうなのよ。安易に『美味しいのがある』とか『狩りが面白そう』なんて理由で、今の大阪周辺の山に入ると死んじゃうからね。
ここはド派手に戦って、皆をビックリさせなきゃ!」
「そのためには、この大きさを活かした迫力が必要だな! 皆、折角興味を持ってくれたんだ。楽しんでほしいよな!」
ドラゴンサーモンから目を逸らさず、アーヴェントは剣を構えて不敵な笑みを浮かべている。
風花は【セクシーネコスーツ】の上につけた【ビーナスアーマー】の存在を手で触って確認した。
もはやビキニでは? と言われるほど露出の多い鎧だが強度は抜群、しっかり防御力もあるのだ、鎧が覆った部分だけは。
「さあっ! 行くわよ!」
風花は叫ぶと、ヘアッ! と気合の入った掛け声と共に【食神降臨】で巨大化した――。
***
ドラゴンサーモンに正面から立ち向かう三人を、舞台セットの岩の上に腰かけて眺めているのは瀬那覇智里だった。
智里は、どんな時も心のスタイルがストーリーテラーだ。
演じる側ではなく創造する側。演劇だろうが現実だろうが、自分はモブでいたいのだ。
一言で言うと、目立ちたくない。村人Aとか通行人Bが最高!
今日は、やられ役も悪くないと思って来たけど、さっき花儀が蹴り飛ばされたのを見て、やられ役は一抜けた。すごく痛そうだったし。
それにしても、ナズナとよもぎを百合ップルにしていいと聞いてやってきたのに、第一幕にはナズナしか出てないなんて話が違う、と智里は思う。
「ナズナちゃんは水で撃たれて休んでるし、よもぎちゃんはいないし……」
つまんなーい、と思いながら智里は一人妄想の世界に入り込んだ――。
…………
……
智里が【飾り包丁・渦潮】でドラゴンサーモンを攻撃し、動きを鈍らせておいて二人に攻撃を促す。
「ナズナちゃん、よもぎちゃん――奴の弱点はひれの付け根だ」
二人が躊躇して攻撃できないでいるので、智里が急き立てる。
「二人共、早く! おねーさんが鈍らした今の内に!」
「わかった! さあ、よもぎ、行くよ。どんなことがあっても、私達は一緒だ!」
「はい!」
よもぎとナズナは手に手を取り合って、ドラゴンサーモンに斬りかかっていく――。
…………
……
「斬りかかった後はあっさりドラゴンサーモンを倒してもいいけど、よもぎちゃんがナズナちゃんを庇って瀕死の重傷を負うっていうのもアリだよね。それでナズナちゃんが死にもの狂いになってやっとドラゴンサーモンを倒すことができるんだ~。そして食の使いを食べたよもぎちゃんの傷が治ってハッピーエンド! あぁ~、やっぱり百合はハッピーエンドでないとねー。くーっ! 百合最高!」
自分の妄想に興奮して、内容が口からダダ漏れの智里である。
しかし、舞台上ではドラゴンサーモンVS三人のアイドルの戦いが激しさを増しており、智里の存在に気を留める者は誰もいなかった。
***(戦闘シーンに戻ります)
【食神降臨】で巨大化した風花が【爆裂∞エナジー】を一気飲みして覚醒し、さらに【巨獣入魂】で興奮を高めていく。
ドラゴンサーモンの攻撃は容赦なく続く。
小十郎が【無拍子】と【猿飛の構え】で仲間を護りつつ攻撃を避け、己が一刀を振るう機会を探っている。
アーヴェントはドラゴンサーモンの周りを回って、一撃、二撃、試しに攻撃してみては深追いせずに後退して距離を取る。
そうしている間にドラゴンサーモンの隙を突いて、弱点であるひれの付け根を攻撃しようと狙っているのだ。
食の使い相手に激しい戦いは長く続けられないし、第二幕も控えている演劇であることも考慮して、早期決着を目指すアーヴェント。
短期決戦なら強力な力を発揮できる【餓獣纏身】で獣性を目覚めさせ、獣のような身のこなしでドラゴンサーモンの攻撃を回避した。
すぐさま反撃に転じ、弱点のひれの付け根に急接近し【火遁蘇芳緋柱】を叩き込む!
巨大な食の使いに巨大な火柱。演出の派手さは一級品だろう。
しかもドラゴンサーモンは火に弱い。
炎に驚き、苦し気に咆哮するドラゴンサーモンに、アーヴェントは間髪入れず【活け造りの極意】をお見舞いした。
暴れるドラゴンサーモンの巻き添えにならないように、獣の脚力でその場から素早く離脱する。
炎におののくドラゴンサーモンに、小十郎が【無明絶刀】で大上段から高速で斬りつけた。
同時に、極度の興奮状態に達した巨大な風花が【断滅大刀】で斬りかかる。
「あははははっ! 美味しそうね貴方!」
風花の台詞は若干狂気じみているが、それも【巨獣入魂】のなせる業だ。
「ぐっ、がぁぁぁっ……」
ドラゴンサーモンが苦しそうに呻いて倒れ込んだ。
興奮状態がやや冷めてきた風花がドラゴンサーモンが振り回した尾をかわして、【入刀賛賀】でひれの付け根にトドメの一撃を放つ。
この一撃でドラゴンサーモンはより美味しくなったことだろう。
「……ぐぅ……参った。お前たち、よくやった――。おいしく料理するがよい……」
ドラゴンサーモンは負けを認めると、「食の使い」ではなく「食材」に変化した。
バトルスキルを駆使して力の限界まで出し切った三人は疲れ果てていた。
風花はもう元の大きさに戻っている。
小十郎は誰に言うともなく呟いた。
「オーサカにおいて、食とは神事だ。生きる糧を得る以上の想いがそこにはある。だからこそ、我々は食材への感謝を以て刀を振るのだ。
これで皆に食材を届けることができる」
小十郎の台詞で、第一幕のラストが感動的に引き締まった。
共に戦った二人は神妙な面持ちで黙っていたが、心中の思いは至極現実的だった。
アーヴェントは
(観客が見やすい位置を意識して立ち回ったが、さて、楽しんでもらえただろうか?)
と客席を見渡しているし、風花は
(なかなか派手に活躍できたんじゃないかしら?)
と自分の動きを脳内再生して検証していた。
その時、「ぐぅぅーーーっ」とお腹の鳴る音が派手に鳴り響いた。
「すまん。……腹減った」
バツの悪そうなアーヴェントが少し顔を赤くしながら白状し、第一幕の幕が下りた。
ドラゴンサーモンが改めて堀田小十郎に向き直り、本格的な戦闘シーンの緊張が舞台上に漲る。
小十郎の両横にスッと並び立ったのは、アーヴェント・ゾネンウンターガングと、【セクシーネコスーツ】で猫耳尻尾付きの弥久風花だ。
アーヴェントはドラゴンサーモンを見上げて、「でかいな……」と呟いてから小十郎に言った。
「ここは共に戦おう」
「私も協力するわ!」
風花が力強く頷く。
「ああ、皆で協力せねば倒せぬほど食の使いは強いからな。たとえ演劇でもそれは伝えたいものだ」
小十郎が言うと、風花もそれに賛同する。
「そうなのよ。安易に『美味しいのがある』とか『狩りが面白そう』なんて理由で、今の大阪周辺の山に入ると死んじゃうからね。
ここはド派手に戦って、皆をビックリさせなきゃ!」
「そのためには、この大きさを活かした迫力が必要だな! 皆、折角興味を持ってくれたんだ。楽しんでほしいよな!」
ドラゴンサーモンから目を逸らさず、アーヴェントは剣を構えて不敵な笑みを浮かべている。
風花は【セクシーネコスーツ】の上につけた【ビーナスアーマー】の存在を手で触って確認した。
もはやビキニでは? と言われるほど露出の多い鎧だが強度は抜群、しっかり防御力もあるのだ、鎧が覆った部分だけは。
「さあっ! 行くわよ!」
風花は叫ぶと、ヘアッ! と気合の入った掛け声と共に【食神降臨】で巨大化した――。
***
ドラゴンサーモンに正面から立ち向かう三人を、舞台セットの岩の上に腰かけて眺めているのは瀬那覇智里だった。
智里は、どんな時も心のスタイルがストーリーテラーだ。
演じる側ではなく創造する側。演劇だろうが現実だろうが、自分はモブでいたいのだ。
一言で言うと、目立ちたくない。村人Aとか通行人Bが最高!
今日は、やられ役も悪くないと思って来たけど、さっき花儀が蹴り飛ばされたのを見て、やられ役は一抜けた。すごく痛そうだったし。
それにしても、ナズナとよもぎを百合ップルにしていいと聞いてやってきたのに、第一幕にはナズナしか出てないなんて話が違う、と智里は思う。
「ナズナちゃんは水で撃たれて休んでるし、よもぎちゃんはいないし……」
つまんなーい、と思いながら智里は一人妄想の世界に入り込んだ――。
…………
……
智里が【飾り包丁・渦潮】でドラゴンサーモンを攻撃し、動きを鈍らせておいて二人に攻撃を促す。
「ナズナちゃん、よもぎちゃん――奴の弱点はひれの付け根だ」
二人が躊躇して攻撃できないでいるので、智里が急き立てる。
「二人共、早く! おねーさんが鈍らした今の内に!」
「わかった! さあ、よもぎ、行くよ。どんなことがあっても、私達は一緒だ!」
「はい!」
よもぎとナズナは手に手を取り合って、ドラゴンサーモンに斬りかかっていく――。
…………
……
「斬りかかった後はあっさりドラゴンサーモンを倒してもいいけど、よもぎちゃんがナズナちゃんを庇って瀕死の重傷を負うっていうのもアリだよね。それでナズナちゃんが死にもの狂いになってやっとドラゴンサーモンを倒すことができるんだ~。そして食の使いを食べたよもぎちゃんの傷が治ってハッピーエンド! あぁ~、やっぱり百合はハッピーエンドでないとねー。くーっ! 百合最高!」
自分の妄想に興奮して、内容が口からダダ漏れの智里である。
しかし、舞台上ではドラゴンサーモンVS三人のアイドルの戦いが激しさを増しており、智里の存在に気を留める者は誰もいなかった。
***(戦闘シーンに戻ります)
【食神降臨】で巨大化した風花が【爆裂∞エナジー】を一気飲みして覚醒し、さらに【巨獣入魂】で興奮を高めていく。
ドラゴンサーモンの攻撃は容赦なく続く。
小十郎が【無拍子】と【猿飛の構え】で仲間を護りつつ攻撃を避け、己が一刀を振るう機会を探っている。
アーヴェントはドラゴンサーモンの周りを回って、一撃、二撃、試しに攻撃してみては深追いせずに後退して距離を取る。
そうしている間にドラゴンサーモンの隙を突いて、弱点であるひれの付け根を攻撃しようと狙っているのだ。
食の使い相手に激しい戦いは長く続けられないし、第二幕も控えている演劇であることも考慮して、早期決着を目指すアーヴェント。
短期決戦なら強力な力を発揮できる【餓獣纏身】で獣性を目覚めさせ、獣のような身のこなしでドラゴンサーモンの攻撃を回避した。
すぐさま反撃に転じ、弱点のひれの付け根に急接近し【火遁蘇芳緋柱】を叩き込む!
巨大な食の使いに巨大な火柱。演出の派手さは一級品だろう。
しかもドラゴンサーモンは火に弱い。
炎に驚き、苦し気に咆哮するドラゴンサーモンに、アーヴェントは間髪入れず【活け造りの極意】をお見舞いした。
暴れるドラゴンサーモンの巻き添えにならないように、獣の脚力でその場から素早く離脱する。
炎におののくドラゴンサーモンに、小十郎が【無明絶刀】で大上段から高速で斬りつけた。
同時に、極度の興奮状態に達した巨大な風花が【断滅大刀】で斬りかかる。
「あははははっ! 美味しそうね貴方!」
風花の台詞は若干狂気じみているが、それも【巨獣入魂】のなせる業だ。
「ぐっ、がぁぁぁっ……」
ドラゴンサーモンが苦しそうに呻いて倒れ込んだ。
興奮状態がやや冷めてきた風花がドラゴンサーモンが振り回した尾をかわして、【入刀賛賀】でひれの付け根にトドメの一撃を放つ。
この一撃でドラゴンサーモンはより美味しくなったことだろう。
「……ぐぅ……参った。お前たち、よくやった――。おいしく料理するがよい……」
ドラゴンサーモンは負けを認めると、「食の使い」ではなく「食材」に変化した。
バトルスキルを駆使して力の限界まで出し切った三人は疲れ果てていた。
風花はもう元の大きさに戻っている。
小十郎は誰に言うともなく呟いた。
「オーサカにおいて、食とは神事だ。生きる糧を得る以上の想いがそこにはある。だからこそ、我々は食材への感謝を以て刀を振るのだ。
これで皆に食材を届けることができる」
小十郎の台詞で、第一幕のラストが感動的に引き締まった。
共に戦った二人は神妙な面持ちで黙っていたが、心中の思いは至極現実的だった。
アーヴェントは
(観客が見やすい位置を意識して立ち回ったが、さて、楽しんでもらえただろうか?)
と客席を見渡しているし、風花は
(なかなか派手に活躍できたんじゃないかしら?)
と自分の動きを脳内再生して検証していた。
その時、「ぐぅぅーーーっ」とお腹の鳴る音が派手に鳴り響いた。
「すまん。……腹減った」
バツの悪そうなアーヴェントが少し顔を赤くしながら白状し、第一幕の幕が下りた。


