【異世界カフェ・番外編】夏祭り 出張かふぇ
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◆備えあれば憂いなし
日がとっぷりと暮れ、夏祭りの人出も増えてきた。
藍と茜は猫のお面を被り直し、気を引き締める。
二人を守るためにやって来た狛込 めじろは宣言した。
「先手必勝ですっ! 対症療法的に対応するのではなく、事前に手を打たねばなりません」
「何か考えがあるのですか?」
茜の問いに、めじろは不敵な笑みを浮かべた。
「不逞の輩が人混みに紛れて忍び寄るなら、わたしもその人混みを盾であり、剣としましょう。ではっ!」
言うや否や、めじろは外に飛び出し、【陽気:妖翼】で空に舞い上がった。
「めじろさーん、どういうことなんですかー?」
見上げて茜が叫んだが、めじろは答えず悠然と飛行して、空中で【大桜の舞】を舞い踊って出張かふぇの宣伝を始めた。
めじろの舞に惹かれて、お客さんが多く集まって来た。
(たくさん人を集めれば二人を見守る目は増えますし、お客も増えて一石二鳥。二人の頑張りでかふぇを愛するようになった常連さん達はきっといちゃもんや暴力からも守ってくれるはず)
めじろを見上げるお客たちは、【大桜の舞】の効果に煽られて、だんだん楽しい気持ちになっていく。
中には浮かれて踊り出す者まで現れた。
出張かふぇの周りの人目を増やし、空からも警戒の目があることをアピールしておく。
この抑止力が効いて、誰も襲ってこなければいいなと願うめじろだった。
***
めじろにやや遅れて、出張かふぇに頼もしい助っ人がやって来た。
「はーい、今回もお手伝いの双玉夜光ですわー!」
「ふふっ、こんばんわぁ」
蔵樹院 紅玉と蔵樹院 蒼玉の姉妹だ。
「紅玉さん、蒼玉さん、来てくれてありがとうございます!」
「今回はお二人共、ライブができなくて残念でしたわねぇ……。同じ双子の私達のライブをしても良かったのですけど……」
蒼玉がしみじみと呟くと、紅玉もそれに続く。
「ライブは本当に残念でしたわね……私達も楽しみにしていたのですけど……」
「それよりも気になるお話を聞きましたのでぇ」
「気を取り直して夜店、頑張りますわよ!」
「さぁ、夜店のお手伝いを始めますわぁ」
まず手始めに、と紅玉は、茜に衣装バッグを差し出した。
「これに着替えていただけます?」
「これは……?」
受け取りながら訝る茜に、紅玉は説明する。
「あの時(葦原かふぇ開店の時)の【傾奇侍女服 紅猫式】ですわ。わたくしも着てきましたの」
紅玉がその場でくるりと回って、衣装を見せる。
「ふふっ、わたくしも【傾奇侍女服 蒼猫式】を着て参りましたわぁ。もちろん藍さんにも衣装持ってきていますわぁ」
蒼玉もくるりと回ってみせる。
そして、蔵樹院姉妹は、藍と茜が被っている猫のお面と同じものを被ってみせた。
「同じ衣装を着て、同じお面で顔を隠した双子が二組。これで私達もターゲットに間違われる可能性が高くなりますの」
「顔を隠せば私達の方が猫耳がある分、猫の半妖に間違われる可能性がありそうですわぁ。まぁ、それが狙いなのですけどねぇ?」
「そんな! お二人が狙われたら困ります!」
藍がふるふる首を振るが、そんな藍の肩を紅玉が押さえて正面から目を見つめた。
「今回の私達の護衛作戦、私達自身がデコイになる事ですわ!」
「心配してくださるのはありがたいですが、心配ご無用ですわぁ」
蒼玉が藍と茜を安心させようと、作戦を語る。
「もし私達が攫われそうになって捕まったら、隙を見て【マジカル☆ガントレット】で忍者的に軽くサクッと……そうすれば痛がって放してくれると思いますわぁ。ああ、ご心配なく。殺しませんわぁ」
蒼玉に続いて紅玉も作戦の説明をする。
「もし、私達ではなくお二人が攫われそうになったら、私達は【隠形の術】で下手人の裏に回り【マジカル☆ガントレット】で忍者的に目立たないように何とかして無力化して、お二人を助け出しますわ。もちろん殺しはしませんわ」
蔵樹院姉妹の、蔵樹院姉妹にしかできない囮作戦を聞いた藍と茜は感激した。
「ありがとうございます!」
「怖いけど、紅玉さんと蒼玉さんのおかげで、ちょっと楽しみな気がしてきました」
藍と茜は口々に感謝を述べ、【傾奇侍女服】に再び袖を通したのだった。
藍と茜が着替えている間に、紅玉と蒼玉は【自然体】を使って、すっとその場に溶け込んだ。
それはまるで忍者の術のようにさりげないものだった。


