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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

100匹のゆきうさぎ

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100匹のゆきうさぎ

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■合体!うさ耳ゆきだるまだピョン♪


 千夏 水希はひとり黙々と、祟咬の力と星球式鎚矛を併用する習熟訓練をしていた。そこはまさにゆきうさぎが出没すると話題になった場所だったが、水希はまだ、この騒動を知らない。

「そりゃっ」

 はりきった水希の手から星球式鎚矛がすべり抜けた。恐ろしいトゲがついた重たい鉄球は相当重いはずなのに(習熟訓練のたまものなのか)ほんの短いあいだながら宙を飛び、

どすん!
 
 少し離れた草むらに落ちた。水希が急いで星球式鎚矛を拾いに向かうと……

 ぴょん★

 草むらから、白くてまるい、大福のようなものがひょこひょことたくさん飛び出してきた。

 ぴょん、ぴょん、ぴょんっ★

 それはまるいだけではなく、つんと長い緑の葉っぱの耳と、真っ赤な南天の実の目をつけている。

 ぴょん、ぴょん、ぴょんっ★

水希は、ゆきうさぎたちを驚かせてはいけないと思い、声を出すのをやめた。とにかく落ちていた星球式鎚矛を拾い上げる。

「!!」

 なにかを感じ取ったゆきうさぎたちが、一斉に身を寄せあい水希を見上げた。草の耳はぺたりとたれ、目から艶もなくなり、おびえていることが見てとれる

(な、なでたい。かわいい。どうしよう。おどかさないようにしてあげないと、どうしよう)

 無言のままもだもだする水希の星球式鎚矛からは、(習熟訓練のたまものなのか)瘴気がひときわたちこめている。

 そんな水希のそばを、さささっと二匹のゆきうさぎが横切った。自分の持っているものがうさぎを怖がらせているとこに気づかぬまま、水希はその二匹を追いかけ、なでたくて、おどかしたくなくて、とにかくそっと、手をのばした。
 
 その隙に、ほかのうさぎたちが、ひとところに集まり身を寄せ合い、いっせいにピョン!と飛び跳ねた。

 ポン!

 ゆきうさぎの集団が、大きな一体の『うさ耳雪だるま』に変化した。

 水希の前にいた二匹も、文字通り脱兎の勢いで水希のそばをかけぬけ、大きなうさ耳雪だるまに飛び込む。

 ポポン!

 彼らはうさ耳雪だるまに同化した。そして、ひょこひょことジャンプしながら、その場を逃げ出した。

「うぅ」

 困り果てた水希の後ろで、やさしい声がした。

「そのゆきうさぎは、身の危険を感じたときに合体して危険を回避するらしいです。 もしや、手にしている武器が怖いのでは?」

 水希の前に加賀 ノイが現れた。手には大きなクーラーボックスを持っている。
 
「あの状態が長いと、ゆきうさぎであることを忘れ、ただの雪だるまになってしまうらしいです」

 ノイはクーラーボックスを開き、保冷剤の上に置かれた『猛烈∞エナジー』を取り出すと、一気に飲み干した。

「だんだんとお日様も出てきましたから、溶けてしまう心配もあります。早急に対処しましょう」

「でも、もう怖がって、こっちに戻って来てくれないよ」

 水希がしょんぼりすると、悲しい空気をくつがえす、大きな、迫力ある歌声が響きだした。


 溢(こぼ)れてしまう気持ちは
 前よりもきっと多くて ため息と共に流れていく


 深郷 由希菜の『お菓子な気持ちと○心』だった。
 
「うさ耳雪だるまになっても、歌が好きってのは変わらないよね? 俺の歌がどれくらい響くか試したい」

 由希菜の歌声がすると、すぐにうさ耳雪だるまたちは動きを止めた。

「とにかくこちらに引きつけましょう。由希菜さん、引き続きお願いします」

「もちろん! お日様出てきたから、一応日陰で歌うね?」

 由希菜がやさしい心づかいをみせ、大きな声量で歌を続ける。


 腫れの日も 雨の日でさえも一緒にいるなら
 心の中はいつも キラ星(金平糖)光る 甘い甘い砂糖菓子


 由希菜の歌に興味を示したうさ耳雪だるまたちを、ノイの『スノウスパークル』が、さらにひきつける。演出とはいえ、やはり雪の結晶が光に当たってキラキラと舞う様子は、彼らにはたまらいらしく、あっというまにうさ耳雪だるまがこちらに戻ってきた。


 溺れそうなほど辛くて それでも浸かっていたくなるの
 隣にはいつもいてくれる 俺の大事な人 感謝してる、いつも。


 戻ってきたうさ耳雪だるまは、少しだけ溶け始めている場所があった。ノイは、そこに保冷剤を当ててやる。
 
 由希菜の歌を聞きつけたらしいゆきうさぎが、あちこちから集まってきた。みな草むらに隠れ、歌に耳をかたむけている。
 
 さらに歌は、響き渡る。


 大好きだから 全部俺に見せてよ スパイス入りでいいから 
 甘さだけでは 飽きてしまうよ だから食べさせてよ 


 ノイは『観察眼』を使ってでうさ耳雪だるまを見ていた。うさぎたちの合体の継ぎ目が見てとれる。かなりの数のうさぎが集まっていることが判った。
 

 君というお菓子を どんな味かな? 一口ちょうだい?


 由希菜の歌が終わりを告げると、突然、
 
 ポン、ポン、ポン!

 うさ耳雪だるまが、大きくはじけ飛んだ。

 ぴょん、ぴょん、ぴょんっ★
 
 あたり一帯に、何十匹ものゆきうさぎがあふれ出す。

「きらきら、きれい」 「いい歌、いい歌」 「もっともっと」

 みな楽しそうに飛び跳ねている。

「あんたたち、しゃべれたの?」

 水希が驚きの声をあげた。先ほどの武器は草むらに隠してある。それでもさっきのことがあるので、ゆきうさぎたちがざわついた。
「さっきはおどかしてごめんね」

 水希がフェスミルクを差し出しながら、少しだけおずおずと、ゆきうさぎたちに問いかける。

「……なでなでしていい?」

「もちろんだピョン」

 ゆきうさぎたちが一斉に飛び跳ねた。


***


 由希菜のまわりには、アンコールを求めてきたゆきうさぎでいっぱいだった。

「もっと歌ってもっと歌って」

「俺の歌、どうだった?」

「すばらしいでありますピョン!」

「我ら、歌、だいすき。音楽、大好き」

「おっし! もっともっと、歌っちゃうよ!?」


 ノイはというと、的確に、てきぱきとゆきうさぎの相手をしている。

「とけそうな方はいますか? 保冷剤で冷やしますよ。あ、そこの二匹はかなり危ないからクーラボックスへ一時避難ですね。こっちです。いま問題のないほかのみなさんも、くれぐれも、由希菜さんの歌は木陰で聞いてくださいよ?」

 
 水希、ノイ、由希菜の働きにより、辺りのゆきうさぎはみな、無事を確保することができた。
 
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