■プロローグ

　横浜港―――

　天気は快晴、風も凪いで船出には絶好の日だ。
　豪華客船「青葉II」の出航を前に、旅行会社経営の橋広光羽（はしびろ　こう）は、集まってくれたフェスタのアイドルたちに挨拶をした。

「皆さん、初めまして。橋広光羽と申します。
今回は僕の企画にご協力下さって、本当にありがとうございます！
この船旅に参加されている老人倶楽部の方々も、皆さんにお会いするのをものすごく楽しみにしておられます」

　光羽はテキパキとスケジュールを説明する。

「今日の午後、ここ横浜港を出港します。
夜8時から船内シアターでのショーがプログラムされていますので、ショーに出演予定の方は、楽屋にお集まりください。
専属司会の方から、手順について説明があると思います。
明日の午前中は、カフェラウンジ内のアイスクリームスタンドで、調理関係の講座を行っていただきます。10時スタートです。
その後、午後1時からは三つの場所に分かれて、麻雀・音楽・美容の講座を開いて頂きます。
午後3時からはデザートパーティーです。こちらでお客様と交流を予定されている方は、パーティールームにおいでください。
こちらでの飲食は控えめにお願いします」

　続いて諸注意の説明を済ませると、光羽は感謝に満ちた眼差しでアイドルたちを見渡した。

「ギャラをお支払いすることができず大変心苦しいのですが、ファンの方の熱い気持ちを持って帰っていただくことが、
今後のご活躍につながると僕は確信しています。
お仕事以外の時間は、自由に豪華客船の旅を楽しんでください。
どうぞお気をつけて！　ボンヴォヤージュ！」


　出航の汽笛と共に、豪華客船の旅が始まった。