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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

真夜中に出没する扉

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真夜中に出没する扉

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 アルネヴ・シャホールは、丘の上で立ち尽くしていた。
 
 通ってきたはずの扉は、すでに跡形もなく消え去っている。
 
 ぴちゅぴちゅとぴちゅと小鳥がさえずっている。
 
 見上げた空は青く、どこまでも美しい。
 
「なんて気持ちのいい場所なんだろう」

 目を閉じ風の音に耳を澄ます。
 
 背後から草を踏む足音が近づいてきて、

「ここには争いも 貧富の差も無い。皆が幸福に暮らしていけるの」

 とても心地の良い声がした。
 
 振り返ると、純白のワンピースを着た長髪の女の子がおり、シャホールに手を差し伸べていた。



 シャホールは古民家の縁側で、純白のワンピースの女の子に膝枕してもらっていた。温かい日差しと、彼女の膝の感触が心地いい。 
 ここに来てからどのくらい時間が経ったのか判らなかった。実は5分程度なのか、それとも一年なのか、もう、まったく、判らなかった。しかしそんなことはどうでもよかった。
 
 膝に頭をのせたまま彼女を見る。逆光で顔はあまりよく見えない。
 
 最初からずっと、彼女の目元は鮮明に見えないままだった。煙がかかっていたりまぶしかったり薄暗かったり……。明らかに不自然だったが、そんなこともどうでもよかった。

 彼女が「おはよう」と微笑んできて、自分も「おはよう」と返す、それだけで幸福感に満たされた。

 扉のことも学校のこともこのまま忘れてしまおうか……だって、ずっとここに居たい……そんな気持ちが芽生えていた。
 
「此処が……キミが、ボクの理想郷なんだ」

 シャホールは体を起こし、彼女を抱きしめる。

「ずっとここに居たいけど、それはできないって、あなたは判っているのね」

「そんなことない」

 抱きしめる手に力をこめるが、彼女は静かに笑って首をふった。

「扉のこと、忘れていないのでしょう?」

 見つめた彼女の顔は、やはり逆光で目元がよく見えない。
 
「いつか本物のキミを見つけてみせる。幻なんかじゃない、ちゃんと、顔が全部見えるキミだ。扉の外で、本当の幸福な世界を築いてみせる」

 シャホールは彼女の長い髪をなで、そっと口づけた。


 それは別れのキスではなく、未来への誓いのキス……
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