夏祭り、納涼のど自慢大会!
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リアクション
「着きましたね」
2人の目の前には「金魚すくい」と看板に書かれた文字。そう、彼女たちは金魚すくいをするためにこの夏祭りにやってきたのだ。
「今年こそ、デメキンをすくいますわ!」
嵐はデメキンが欲しいと思っている。そのわけは実家の金魚が赤い金魚ばかりだからだ。となると、違う種類の金魚が欲しくなるのは当然のことである。
毎年夏祭りの時期になるとデメキンを狙う。しかし、これまで1度もすくえていない。
「そういえば、楓。もしわたくしがデメキンを取ることができたとして、寮に持ち帰ってお世話することって可能でしょうか?」
「嵐姉さん、それは問題ないそうです」
「それならよかったわ。これで遠慮なくすくえますわね」
嵐は早速屋台のおじさんにお金を払い、金魚すくいに必要な容器とポイをもらう。
「さぁ、気合い入れていきますわよ!」
小さいビニールプールの中を優雅に泳ぐ金魚たちを、嵐は真剣な表情で見つめる。小赤がたくさん泳ぐ中、デメキンがその隙間をかいくぐるように泳ぐ。嵐はそのデメキンに目をつけ、すくいあげるタイミングを待つ。
(今ですわ!)
デメキンが小赤の群れから離れた瞬間、嵐は素早くポイを入れてすくおうとする。しかし、デメキンはポイの存在に気付き、泳ぐスピードを速めてかわした。
(逃げられましたわ……)
少しショックを受けるが、まだポイは破れていない。それをいいことに再びチャレンジする。でもその前に、嵐は隣でずっと見ている楓に声をかけた。
「楓も見てないで手伝ってくださいませ」
「わかりました」
楓は嵐の隣にしゃがみ、屋台の人からポイとプラスチックでできた底が深い皿を受け取る。
(さてと……どれを狙いましょうか)
嵐の視界が入らない場所に目をやり、デメキンの観察をする。すると、1匹だけ優雅に泳ぐ黒いデメキンがいた。しかし、他の金魚より泳ぎが遅い。
(もしかして弱っているということではないですよね?)
試しに、そのデメキンの近くにポイの先を投入してみる。水に入れた直後、デメキンはパッと横に逸れた。
(気のせいだったようです)
元気なことがわかったので、再度デメキンの出方をうかがう。観察していると、泳ぎの気品さから嵐に似ているような気がした。デメキンはゆったりと楓がいる壁際の方へと尾びれを動かす。
(取るタイミングが近づいてきましたね)
毎年、嵐と一緒にデメキンを取るのを手伝ってきた楓。場数を踏んだおかげで、ある程度コツがわかってきた。楓はポイを一旦水につけて引き上げる。これは破けないようにするための対策だ。
(壁際に来ました。あとは……)
金魚の動きを予測し、斜めにポイを入れるだけである。ポイと容器を動くであろう位置に持っていき、斜めに構える。するとまるでポイと容器に吸い寄せられるように、その場にデメキンが移動し始めた。
楓は斜めにポイを入れ、デメキンをすくう。逃げないようにポイの縁をうまく使って容器に入れる。デメキンは水が入った容器に収まり、泳ぎ出す。取れたことを報告しようと、嵐のほうを向くと、彼女は真剣な表情で水槽を見ていた。そのとき、めじろの歌が耳に入る。
『いつかを待って胸張るツボミのように、夢を咲かせたい そう、いつの日か、バケモノマスターに…… なりたいの、ならなきゃね、必ずなってやるーっ!』
楓はその歌とメロディがまるで嵐を応援しているように聞こえた。
嵐は何度も挑んだが、デメキンを取ることができなかった。彼女が肩を落とす中、楓はそっと嵐にデメキンが入った金魚袋を渡す。
「これは……」
「嵐姉さんにプレゼントです」
嵐は驚きを隠せないまま、その袋を受け取る。そして笑顔で楓にお礼を言った。
「ありがとうございます、楓。大事にしますわ。あぁ、この子のために水槽などの準備をしなければいけませんね。……楓。手伝ってくれますか?」
「もちろんです。嵐姉さん」
2人は元来た道を戻り、新しい家族のために準備を始めるのだった。
2人の目の前には「金魚すくい」と看板に書かれた文字。そう、彼女たちは金魚すくいをするためにこの夏祭りにやってきたのだ。
「今年こそ、デメキンをすくいますわ!」
嵐はデメキンが欲しいと思っている。そのわけは実家の金魚が赤い金魚ばかりだからだ。となると、違う種類の金魚が欲しくなるのは当然のことである。
毎年夏祭りの時期になるとデメキンを狙う。しかし、これまで1度もすくえていない。
「そういえば、楓。もしわたくしがデメキンを取ることができたとして、寮に持ち帰ってお世話することって可能でしょうか?」
「嵐姉さん、それは問題ないそうです」
「それならよかったわ。これで遠慮なくすくえますわね」
嵐は早速屋台のおじさんにお金を払い、金魚すくいに必要な容器とポイをもらう。
「さぁ、気合い入れていきますわよ!」
小さいビニールプールの中を優雅に泳ぐ金魚たちを、嵐は真剣な表情で見つめる。小赤がたくさん泳ぐ中、デメキンがその隙間をかいくぐるように泳ぐ。嵐はそのデメキンに目をつけ、すくいあげるタイミングを待つ。
(今ですわ!)
デメキンが小赤の群れから離れた瞬間、嵐は素早くポイを入れてすくおうとする。しかし、デメキンはポイの存在に気付き、泳ぐスピードを速めてかわした。
(逃げられましたわ……)
少しショックを受けるが、まだポイは破れていない。それをいいことに再びチャレンジする。でもその前に、嵐は隣でずっと見ている楓に声をかけた。
「楓も見てないで手伝ってくださいませ」
「わかりました」
楓は嵐の隣にしゃがみ、屋台の人からポイとプラスチックでできた底が深い皿を受け取る。
(さてと……どれを狙いましょうか)
嵐の視界が入らない場所に目をやり、デメキンの観察をする。すると、1匹だけ優雅に泳ぐ黒いデメキンがいた。しかし、他の金魚より泳ぎが遅い。
(もしかして弱っているということではないですよね?)
試しに、そのデメキンの近くにポイの先を投入してみる。水に入れた直後、デメキンはパッと横に逸れた。
(気のせいだったようです)
元気なことがわかったので、再度デメキンの出方をうかがう。観察していると、泳ぎの気品さから嵐に似ているような気がした。デメキンはゆったりと楓がいる壁際の方へと尾びれを動かす。
(取るタイミングが近づいてきましたね)
毎年、嵐と一緒にデメキンを取るのを手伝ってきた楓。場数を踏んだおかげで、ある程度コツがわかってきた。楓はポイを一旦水につけて引き上げる。これは破けないようにするための対策だ。
(壁際に来ました。あとは……)
金魚の動きを予測し、斜めにポイを入れるだけである。ポイと容器を動くであろう位置に持っていき、斜めに構える。するとまるでポイと容器に吸い寄せられるように、その場にデメキンが移動し始めた。
楓は斜めにポイを入れ、デメキンをすくう。逃げないようにポイの縁をうまく使って容器に入れる。デメキンは水が入った容器に収まり、泳ぎ出す。取れたことを報告しようと、嵐のほうを向くと、彼女は真剣な表情で水槽を見ていた。そのとき、めじろの歌が耳に入る。
『いつかを待って胸張るツボミのように、夢を咲かせたい そう、いつの日か、バケモノマスターに…… なりたいの、ならなきゃね、必ずなってやるーっ!』
楓はその歌とメロディがまるで嵐を応援しているように聞こえた。
嵐は何度も挑んだが、デメキンを取ることができなかった。彼女が肩を落とす中、楓はそっと嵐にデメキンが入った金魚袋を渡す。
「これは……」
「嵐姉さんにプレゼントです」
嵐は驚きを隠せないまま、その袋を受け取る。そして笑顔で楓にお礼を言った。
「ありがとうございます、楓。大事にしますわ。あぁ、この子のために水槽などの準備をしなければいけませんね。……楓。手伝ってくれますか?」
「もちろんです。嵐姉さん」
2人は元来た道を戻り、新しい家族のために準備を始めるのだった。