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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

実録:華乱葦原奇譚

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実録:華乱葦原奇譚

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◆小指をほしがる娘

 サイバネティック 天河は、赤マフラーに【振袖六駆】で暗闇に立ち尽くしている。「小指をほしがる娘」が多数目撃されている桜はの下の闇は、ひどく不気味だった。
「こちら、おとりの、天河です。ま……まだなにも、起きません」
 一人で暗がりに立っているように見えるが、暗視カメラやサーモグラフィカメラ、さらにはガンマイクまでもが、しっかりと天河を狙っている。

 ざわざわと風が吹き桜が揺れた、そのときだった。

「もし……」
「なにか来た」「写ってます!」「音、拾ってます」
 スタッフたちが色めきだった。
「い……いるのかい? お菊ちゃん……だよね?」
「あの人の小指はどこ? あの人はどこ? あの人の小指と、あの人はどこ?」

 桜の下から現れたのは、噂通りのかわいい娘だった。しかし、くりくりした大きな目はうつろで悲しげで、どこを見ているかよく判らない。
「うっは、超かわいい。もう化け猫でも猫又でもオッケー!」
 天河が近づこうとすると、娘が身構えた。
「あなたたち陰陽師なの? そんな変わった道具を使って、今度はどんな術であたしを閉じ込めるつもり?」
「落ち着いて、お菊ちゃん」
「おきくちゃん? って誰?」
「自分の名前、覚えてないかい?」
「そんなこと、どうでもいい。私が、誰かなんて……うぅううぅ
 娘の動きは俊敏だった。
「小指、ちょうだい」
「うわぁ!」
 逃げ切れなかった天河が、とっさに自分のパンツの中に両手を隠す。 
 どさり。そのまま折り重なって倒れこみ、
「切り落としてやる」
 天河の上にまたがり小指をつかもうとした娘が、小首をかしげた。 
「あなた妖怪? 小指が三本ある」
 いたたまれない空気が現場に流れたが、天河はそんなものには負けない。すっくと立ちあがり、赤マフラーをはためかせ、桜の枝にひらり飛び乗った。

「さあライブだ!」
 【夜桜六絃琴】でアコースティックなバラード演奏が始まった。
  君を残して先立つ僕を許しておくれ~♪
「らいぶ? 歌のこと?」
 天河を見上げていた娘の目に、生気が宿ってくる。 
「ご主人様もよく、歌を歌ってくれた。下手っぴだけど、楽しかった。あたし……ご主人様の歌が……ご主人様のことが……」
 天河が【筆供緒譜】で【桜の首飾り】を投げた。
「すきだった」
 首飾りをキャッチした娘の目からうつろさは消えていた。
「あなたのおかげで、私が誰か、思い出せた」
 娘とは対照的に、天河が不安げに笑った。
「まさか、俺様の歌がご主人様と同じで『下手っぴ』だったから、思い出せたっていうのか?」
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