「私達はどうすればいいんだ……」

　村人に扮した劇団員がつぶやくと、辺り一帯が薄い煙に包まれる。

「そんなの、こっちが聞きたいくらいだっ……！」

　怒りを含んだ声で別の村人が叫ぶように言い放つ。その感情を表すかのように火柱が不定期に立ち上がる。村全体が混乱している――そのときだった。

「あれは何だ？」

　上空を見ると黒い影が【フライングブルーム】に乗って飛んでいる。その影は空中をアクロバティックな動きで飛び回り、ゆっくりと村人たちの前に降り立った。降り立ったのは、魔女っぽいローブや先の尖った帽子を身に着けた、ウサギの着ぐるみ。ウサミ　先輩である。

「村人たちよ。落ち着きたまえ。私は兎の魔女、君たちを助けるためにやってきた」

　そう告げると、タクトをふるい【レインボーマイスター】で虹を出現させた。村人たちが虹に目を奪われている中、ウサミは【タクト・ブルーメン】で人形たちに演奏させる。次に【巧みな技術】で手から一輪の花を出し、歌えるように魔法をかける。そして【フェアリーハーモニー】で周囲にある石や草花を歌い踊らせた。

「さあ、楽しいマジックショーの始まりだよ。皆、元気を出そう！　笑顔を忘れてはいけないよ」

　会場全体に草花たちの歌が響き、観客席からは手拍子が聞こえてくる。観客を巻き込みながら第1幕は楽しい雰囲気に包まれた。