ファイト島開発記1 上陸
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リアクション
オープニング
「日本列島某所に浮かぶファイト島。そこは、現在は誰も住んでいない文字通りの無人島である。今、そこにアイドルの一団が上陸した。彼ら、彼女らの目的は、何もない状態から、この島を人が住めるように開発することである。はたして、そんなことが可能なのだろうか。いや、アイドルであれば、可能なのだ。なぜなら、彼らは、いつでも夢と希望に溢れているのだから……」
『ファイト島開拓記 第1回 上陸!』
上陸
「よーし、無事オープニングタイトル入ったな。全員、クルーザーからボートに移ったら、上陸の絵をとるぞー。力出して漕げ! ここで海流にさらわれた奴は、脱落とみなす!」
「えー、ボート、漕がないといけないの!?」
さっそく、チーフディレクターからの容赦のない命令に、黄緑色のジャージに着替えた世良 延寿が驚いたように聞き返しました。いきなり手漕ぎだなんて、信じられません。
「そうだ。さあ、とっとと上陸だ! 早く行かないと、フレームアウトになるぞ!」
「きゃー、きゃー!」
フレームアウトという言葉に、アイドル全員が慌ててボートに乗り移りました。参加していました、でも、画面に映ってはいませんでは、出演したことになりません。映ってなんぼの商売です。
「はははは、進めー! 進めー!」
ボートの舳先に片足かけて立って、金色のジャージを着たゼウス・オリュンポスが、前方に見えるファイト島の砂浜を指さして叫びました。
「よっしゃ、任せとけ!」
緑のジャージを着た槍沢 兵一郎が、オールを漕ぐ手に力を込めます。
「危ないですよ、ゼウス様……」
身をかがめながら、銀色のジャージを着たアルテミス・カリストが、ゼウス・オリュンポスの足首を掴んで、ボートから落ちないようにしています。かなり必死です。
「みんなー、あんなのに負けるなあー!」
世良延寿が、他のボートのアイドルたちにハッパをかけます。でも、自分は漕ぎません。ちゃっかりしています。
先頭をぶっちぎる槍沢兵一郎のボートが、最初に砂浜に乗りあげました。ボートが止まった反動で、ゼウス・オリュンポスの身体が前に投げ出されますが、アルテミス・カリストが足を押さえていたおかげで、すっ飛んではいかずにビッターンと砂浜に顔面から叩きつけられました。
美味しい絵です。いただきました。
『初上陸……!?』と、テロップが入ります。
他のアイドルたちも、どんどん上陸していきます。
「大丈夫ですか?」
倒れている金色ジャージの青年に『ゼウス・オリュンポス』と字幕が入り、それを助け起こそうと駆け寄った銀色のジャージの少女の姿に『アルテミス・カリスト』と字幕が被ります。
「ゼウス様、大丈夫ですか、大丈夫ですか!」
後ろで一つに纏めているゼウス・オリュンポスの髪を両手で掴むと、アルテミス・カリストが金髪を振り乱しながら何度もそれを引っぱりました。
「ぶっ、ぶふぁっ!?」
何度も砂浜に顔面を叩きつけられ、ゼウス・オリュンポスが砂を食んで何か言おうとしますが言葉になりません。
「ブルー参上!」
「イエロー参上!」
青いジャージを着た『鳴水立 輝海』と黄色のジャージを着た『エステル・エルウィング』が、元気よくカメラのフレームに駆け込んできました。しっかりと、図面を横取ります。
「上陸ぅーっ!」
ボートから飛び降りた『一色 緑』が、若草色のジャージの両手を広げて着地ポーズをとります。その手には、ピンクの軍手が填められていました。
「いいですね、海。海岸、砂浜!」
足に砂の感触を確かめながら、白いジャージを着た『ノエル・アドラスティア』が砂浜をてくてくと歩きだします。
「ここがファイト島かあ」
周囲をキョロキョロと見回しているのは、オレンジのジャージを着た『桐山 撫子』です。その背中に、何やら小冊子を読んでいたみかん色ジャージの『空花 凛菜』がぶつかります。前方不注意です。
「ご、ごめんなさーい」
なんだかよく似た色同士のアイドルが、慌てて謝り合います。
「さあてと、どーするかな」
のんびりと最後の方から上陸した臙脂色のジャージの『火澄 悠』が、他のアイドルやスタッフたちを確認していきます。
「ふむふむ、カメラはあそこだね。ちょっと、ひかり、走りださないのっ!」
「わーい!」
地に足がつくなり、カメラを無視して走りだした灰色ジャージの『八上 ひかり』を、クリーム色のジャージを着た『川村 萌夏』が呼び止めようとしました。
「わーい、ひっろーい」
黄緑色のジャージ姿の『世良延寿』も、やっと広い所に解放されたと、砂浜を走り回っていました。
「なんだか、色々ありそうですね」
たくさん物が拾えそうだと、ピンクのジャージを着た『八重崎 サクラ』も、目の上に手を翳して海岸を見回します。
「み、みんな、もうちょっと落ち着こうよ……」
こんなにバラバラで大丈夫なのかと、茶色のジャージを着た『三木 里緒菜』が声をかけようとしていますが、ほとんどみんな聞いちゃいません。
「やれやれ、ひ弱そうなのばっかりで、大丈夫なのかね」
ボートを砂浜に引き上げながら、緑色のジャージを着た『槍沢兵一郎』がつぶやきます。
「みんな、今のうちにはしゃぐがいいよぉ。この島の謎は、ボクたちがするんだからねぇ」
「するんだもーん」
何やら怪しげなポーズをとって言う、紺色ジャージの『満斗 夜』の言葉を、茜色のジャージを着た『十和戌 光』が繰り返します。
「その通り!」
そんな二人の言葉に、空色ジャージ姿の『色造 空』がうなずきました。
「いや、真実に近づくのは、俺でござる!」
負けじと、墨色のジャージを着た『平 平平』が、砂浜を走り抜けました。
「ふむふむ、砂の質はいいようね」
指先で砂を確かめながら、薄墨色のジャージを着た『弥久 風花』が、何やらうなずきます。そのとき、目の前を通りすぎた平平平によって、思いっきり顔に砂を撥ね上げられてしまいました。
「こらあ!」
「じ、事故でござるよ!」
両手の拳を振り上げる弥久風花に、平平平が慌てて逃げ去っていきました。
「うおおお、速いおまんな。負けへんでー」
いつの間にか横に並んだ朱色ジャージの『五条 克也』が、負けじと並走していきます。
「うーん。お水あるかなあ」
ちょっと潮風でベタベタになった髪の毛の先を指先でにじりながら、水色ジャージの『空莉・ヴィルトール』が言いました。
「ふっ。人知らぬ無人島、絶好のシチュエーションだねぇ」
軽くメガネを指先で持ちあげながら、赤紫色のジャージを着た『萩原 雅怜』が、何やら企んでいるかのようにつぶやきました。
アイドルたちが思い思いに上陸をはたす裏で、スタッフたちの助っ人としての作業も進んでいました。
艀(はしけ)がありませんから、撮影機材や画面に映らない生活用品などが別のボートから人力で運び込まれます。
「それは、そこ。あれは、あっち」
ADとして同行している古川 玲河が、アイドルたちにあわせた藍色のジャージでテキパキと設営の指示を与えていきます。
「ふむ、ここでいいのだな」
力仕事はませておけと、真紅のジャージを着たキング・デイヴィソンが、機材を海岸近くのしっかりとした地面の場所に並べていきました。
撮影ベースは、画面外の端っこに手早く完成です。


