朝、華乱葦原、桜稜郭の入口。

「桜稜郭はとても活気があって、良い町ですね♪」
　空花　凛菜は溢れる町の熱気に思わず言葉を洩らすと
「当然だよ！　あたしの大好きな街だもん！」
　横から１０歳の少女が誇らしげに現れ
「ふふふ、そうですか」
　凛菜は振り向き微笑んでから
「よろしかったら、案内していただけませんか」
　交流も兼ねて目を輝かせながら観光客の体で案内をお願いした。
「いいよっ！」
　親切な少女は快諾してから
「あたしは花菱　桜子（はなびし・さくらこ）」
　名乗った。
　凛菜も笑顔で名乗った後
「じゃぁ、匠町に行こう！」
　桜子の元気一杯の案内が始まった。

　匠町。

　訪れて早々
「ここは桜を使ったり桜の形をした甘味がいっぱいなんだよ！」
　桜子は小さな屋台に凛菜を案内した。
「とても可愛らしい物ばかりですね」
　並ぶ桜ばかりの甘味に凛菜は思わず表情を緩めた。
「うん！　この店主さんお勧めの甘味、前に食べてすごく美味しかったよ！」
　桜子は調子を弾ませつつ店主お勧めの桜稜郭独特の桜モチーフの甘味を示した。
「ではそれにしましょうか。何事もチャレンジですし」
　お嬢様な雰囲気とは裏腹に積極性を持つ凛菜は桜子が勧めた甘味に挑む事を決めた。

　購入してすぐに頬張り
「……美味しいです」
　凛菜は満面の笑顔。
「よかった！　よーし、次の店にいこー」
　大層喜んだ桜子は凛菜を硝子細工の店へ。

　硝子細工の店。

「……素晴らしい物ばかりですね」
　職人の技に凛菜は目を輝かせ素直に感心し
「でしょう！」
　桜子が喜ぶ中、心惹かれた装身具を手に取りひとしきり眺めてから
「あまり高価な物でもありませんし……」
　値段がお手頃なのを確認するや購入した。
　この後も凛菜は桜子の案内で匠町を散策し時間は既に昼を回った。

「わぁ、もうお昼だよ！　お家に帰らなきゃだから最後に桜が綺麗に見られる場所教えたげる」
　桜子は太陽が真上に移動している事に気付くなり凛菜の手を引っ張って最後の案内を始めた。
「お願いします」
　凛菜は引っ張られながら曲がりくねり狭い道を進んだ末に広がる絶景へ。

　桜が綺麗に見られる場所。

「どう？」
　桜子は誇らしげに胸を張った。
「……とても桜が綺麗です」
　眼前の桜から目を離さず凛菜は感想を素直に言葉にした。
　ひとしきり桜を楽しんでから
「……本日はとても素敵な体験ができました、ありがとうございます」
　凛菜は纏う気品に違わず丁寧に桜子に称賛と感謝を示した。
「ううん、あたしも楽しかったよー」
　桜子は凛菜の言葉を照れを見せつつ受け取った。