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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

桜稜郭にようこそ!

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■桜稜郭の一角


 朝、華乱葦原の桜稜郭の一角にある神社の入口。

「この神社が亜衣と麻衣が生まれたお家なの?」
 川村 萌夏は眼前の建物を見上げながら自分を案内してくれた川原 亜衣に訊ねた。
「そうよ、ここが私と麻衣が生まれた家。どう、気に入った?」
 亜衣は後ろの萌夏に振り返りにこぉと笑顔。
「……そうね……」
 萌夏が視線を亜衣に向け何やら感想を口にしようとするが
「ほら、こっちよ」
 亜衣の急かす声に促され
「あっ、ちょっと待って」
 萌夏は感想を呑み込み慌てて追いかけた。
 二人は仲良く神社の入口をくぐり亜衣の生家の敷地に入り散策を始めた。

 亜衣の生家。

「ここは……」
 亜衣は歩き回りつつ神社内にあるあれこれを解説し
「へぇ、そうなんだ」
 萌夏は感心して見せたり
「じゃぁ、あれは?」
 気になる物を指し示し訊ねては
「あれは……」
 亜衣が笑顔で快く答える。
 神社内の施設解説が一段落した所で
「由緒正しい神社ね」
 萌夏が改めて亜衣の生家たる神社に感嘆すると
「何たって、私達の生家、桐畑家は古くから続く神社で代々宮司を務めてきた家柄だから」
 亜衣が応じるように言葉を継ぎ
「……習わしもあって……」
 自分と妹に関わる事柄を話題にしようとした所で
「……そう言えばもうお昼ね」
 おもむろに頭上を見上げ太陽の位置が高くなっている事に気付き本題を中断。
「うん、楽しいと時間が経つのも早いね♪」
 萌夏は楽しいと言わんばかりの弾けた笑顔。
 その時屋台で飲食物販売を行う店主の客引きが轟き
「続きは食べながらにしない?」
「賛成♪」
 空腹を刺激された亜衣と萌夏は話を後回しにして誘われるように神社を駆け出て屋台へ直行しそれぞれ片手で食せる物を手に入れ再び神社に舞い戻った。

 昼、食べ物調達後、神社。

「美味しいわね」
「そうね」
 亜衣と萌夏は腰を下ろし食べ物を頬張りご満悦。
 空腹にひとまずの決着がついた所で
「……さっきの話だけど……」
 萌夏が食べ物から顔を上げ置いていた話題を引き戻した。
「習わしの話だったわね……一族に双子が生まれると幼少期にそれぞれ別の家に養子に出して成人後に生家に戻すという習わしで……7歳で私は川原家、麻衣は八上家に養子に出されたのよ」
 亜衣もまた頬張るのを中断し自分達姉妹の状況を語り
「桐畑家の人々との交流は続いているけど、麻衣との接触だけは固く禁じられているから同じ桜稜郭に住みながら姉妹同士顔を合わせる事は滅多に無いし、昔と状況が変わった現在も桜稜郭にいる間は、出来るだけ別行動をとる事を二人で申し合わせてるわ」
 どんな世界でも変わらず青く続く頭上の空を見上げた。
「……そう(……実の姉妹なのに生家の習わしのせいで離れ離れに暮らす事になっただけじゃなくてわたしと一緒に活動するようになった現在でも桜稜郭にいる間は別行動を取らないといけないなんて……)」
 萌夏は亜衣の横顔を一瞥し姉妹の身の上に大いに同情を示すが
「……(……第三者の心情としては習わしなんて無視して好きなだけ麻衣と一緒にいればいいのに……折角の血の繋がった姉妹なんだから……まあ、本人同士がよくよく話し合った上でそう決めたのであれば、尊重すべきだろうけど……)」
 口には出さず食べ物を頬張った。
 亜衣は視線を隣に向け
「地球や桜稜郭以外の華乱葦原にいる時はその限りじゃないから大丈夫よ」
 自身の話題でしんみりとした空気を払拭するかのように満面の笑顔で言った。
「それなら、桜稜郭以外の場所にいる時は、状況が許す限り二人一緒にいられる機会を作ってあげるって約束するよ!」
 萌夏は片手に食べ物を持ちもう片方の手で任せてとばかりに胸を叩いた。
「……」
 萌夏の優しさに亜衣は無言のまま微笑みを返した。心底の嬉しさを溢れさせながら。
 この後、二人は空腹を満たし終えてから散策を再開し平和なひとときを過ごしたという。

 昼、華乱葦原、桜稜郭の通り。

「ひかりちゃん、もう少しでわたしが育った実家……八上家に着くよ」
 習わしにより自身が世話になった養い家へと案内する八上 麻衣が振り返り笑顔で言うと
「……もう少しね」
 八上 ひかりは感慨深げな横顔で頷いた。
 その時甘い匂いと店主の大袈裟な宣伝が響き渡り
「ちょっと、何か食べよっか」
 真剣な空気を切り裂かれたひかりは思わず笑みを洩らしてから提案。
「賛成」
 麻衣も生き生きと大賛成。
 という事で二人は甘味を販売する屋台に立ち寄りそれぞれ食べ物を調達してから案内に戻った。

 甘味を調達した後。
「んー、美味しい」
「だねー」
 ひかりと麻衣は甘味を頬張りいい顔になりながらも足はしっかりと目的地に向かっている。
 ふと
「……」
 麻衣は甘味を口に持って行く手を止めるや
「子供の頃、両親から八上家の先祖の中には、遥か昔、華乱葦原とは違う世界に渡ったきり、そのまま戻らなかった者がいるという話を聞かされて育ったけど……」
 八上の養父母が幼い自分相手に語った物語を口にした。当時を思い出しつつ。
「あたしも子供の頃祖父母から、八上家のご先祖様は、ずっと昔、桜稜郭という遠い遠い所からこの地……日本にやってきたのよという話を聞かされて育って、最近……」
 ひかりもまた甘味を食べる手を止め
「いつか、世界の何処かにあるハズの桜稜郭に自分のルーツを確かめに行きたいという願望を強く持つようになって……フェイトスターアカデミーに入学して桜稜郭が華乱葦原という異世界に実在する事を知ってから萌夏と一緒に足しげく訪れて、ついに……」
 自分を今この瞬間に導いた過去を思い出す。
 似た過去を回顧した麻衣とひかりは
「自分と同じ“八上”という姓を持つ少女と出会って事実だって気付いた」
「自分と同じ“八上”という姓を持つ少女と出会って本当だって知った」
 互いの顔を見合わせ笑んだ。
 そうしてひとしきりしみじみした後は
「もうすぐよ」
 麻衣は甘味の最後の一切れを口に放り込みひかりの願いを叶えるための案内に全神経を注ぎ
「うん、最後まで案内お願い」
 ひかりも最後の一口を頬張り真剣に案内される側を務めた。
 夕方が訪れた頃、麻衣の足が桜稜郭の外れで
「到着よ」
 ついに止まった。
「……ここが……麻衣の実家……」
 続いて足を止めたひかりは茜色に染まる家を見上げた。
 瞬間
「……」
 ひかりの胸の奥からたとえようも無いほどの懐かしさがこみ上げ
「……間違いない……あたし、ずっと前からこの場所を知ってる……!」
 初めて目にする風景にも関わらずここが自分のルーツである事を確信。
 その様子を見た麻衣は
「……ひかりちゃん」
 悟った。ここがひかりの探し求めていた場所だと。
「……麻衣」
 麻衣に向けるひかりの目からは嬉しさから来る涙が溢れ
「お帰りなさい! ここが、ずっと昔、ひかりちゃんの先祖とわたしの先祖が一緒に暮らしていたお家だよ」
 麻衣の満面の笑顔による迎えに堪らず
「うん、ただいま!!!」
 麻衣に抱きつき泣きじゃくった。
「……ひかりちゃん」
 ひかりを優しく抱き締める麻衣の笑顔には涙が混じりすっかり貰い泣きしていた。
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