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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

桜稜郭にようこそ!

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■散策・色町


 夜、華乱葦原、桜稜郭、色町の入口。

「この町は無法者が多いから気を付けないといけないが……(まあ、かく言う私も似たようなものだが)」
 萩原 雅怜は危険も含む眼前の華やかさをひとしきり見回した後
「さて、悪い大人らしく、夜の色町の散策と洒落込むとしよう」
 常なる笑顔であてのない散策に繰り出した。

 散策開始後。
「夜の色町で買い物と言えば……そいつは“花”か“春”という事になるかもしれんが……」
 雅怜は立ち並ぶ店々や艶やかな女性達を見掛けても
「今回はやめておく事にしよう。それよりも誰かの活躍を見る方が今は楽しみというものだ」
 見るだけ。
「昔の日本では火事と喧嘩は江戸の華と言ったらしいが、桜稜郭でも似たようなものだろうか……」
 雅怜があれこれ思いを巡らし始めた時
「……ん?」
 付近の人だかりから野次が聞こえ誘われるように目を向けると
「早速、期待の“華”が見られそうだ。観客として特等席で眺めるとしよう」
 何やら喧嘩が発生しておりいつもの笑顔を顔に向かった。
 そして雅怜は喧嘩が仲裁者により事なきを得る様を野次馬の一人としてのんびりと楽しんだ。
 終えると雅怜はまたぶらりと散策に戻った。
 戻ってすぐに
「……あれは」
 雅怜の目の端に曲がり角に消える警備に励む知った顔を捉えるや
「……様子を見てみようかな」
 散策とばかりに様子を窺いに行った。
 追った先で事件を目撃し
「……さてどうするかね(私は小悪党の癖に好みは勧善懲悪のストーリーだが……このままでは)」
 やられ誘拐されそうになっている知った顔に手助けをしようとするが
「……人かと思えば煙……少し見学と洒落込むとしようか」
 自分の他に様子を窺う人間ではなく妖怪を発見し
「……ついでに納得のいかない結末になりそうなら強引に変えてしまえばいいか」
 しばしこのまま見学を続ける事に決めた。
 結局見学だけでは終わらず相手の死角からこっそり手助けをしたりと盛り上げた。
 無事に事件が解決すると
「さぁて、見届けた所で戻るとしようかね」
 雅怜はのんびりと散策に戻った。悪い大人の嗜みとばかりにずっと笑顔のままだったという。

 夜、華乱葦原、桜稜郭の入口。

「んじゃ、案内してやるからはぐれんなよ」
 蓮水 亜鶴は隣に言ってから足を踏み入れた。
「桜稜郭で散策っ! 夜桜が楽しめそうね!」
「うん、蓮水さん、案内お願いしますね……散策楽しみだなぁ」
 ジャン・マルク・ドゥジャルダンルイ・アルベール・ドゥジャルダンはウキウキと亜鶴に続いた。
 しかし、案内された場所のおかげで二人のドゥジャルダンのワクワクは脆くも崩れる事に。

 『桜稜郭知識』を有する亜鶴によってジャンとルイが案内されたのは
「今日は思いっきり桜稜郭を楽しむって意気込んできたのに……」
「桜稜郭の散策に来たはずなのになぁ……」
 他の区画とは違い色香の漂う美女が行き交う大人の街であった。当然二人が望んだ場所ではないためがっかりを露わにする。
 当の亜鶴は
「ヘヘ、久しぶりに遊ぶか」
 二人と違い遊ぶ気満々だ。
 その様子に堪らず
「ちょっと、ここは何処なのよぉ!」
 ジャンが全力の不満をぶつけた。
「どこって色町さ」
 亜鶴は肩を竦めながらさらり。
「……色町……」
 ルイは戸惑いの顔で大人の街に視線を向けた。
「お前らももっと遊びを知っとかんといかんぞ?」
 亜鶴はカラカラと笑って言うが
「いかんぞ、じゃないわよ。アタシが見たかったのは桜とか工芸品とかよ」
 ジャンはなおも不満強く言い返した。
 その時
「色町にようこそ!」
「お兄さん達、見ない顔ねぇ。良かったら私のお店に案内するわよ」
「こんな男前は初めて見るわぁ」
 三人の訪問客に気付いた夜の蝶達が甘ったるい声を出しながらこぞって取り囲んだ。
「いやぁ、ねえさん方も美人揃いで……」
 亜鶴は夜の蝶達をあれこれと褒め
「嫌だわぁ」
「お兄さん、口が上手ねぇ」
 女性達を大層喜ばせた。
 それとは正反対に
「もう、何なのよ!(何で凄いセクシーなお姉さん達にもみくちゃにされなくちゃならないのよ)」
「ちょっ、あ、あの……(……いい香りが……)」
 ジャンとルイは囲む女性達相手に大変そうであった。
 天の配剤か
「ん?」
 付近から野次混じりの騒々しい音が聞こえ亜鶴は視線を向け
「あぁ、喧嘩してらぁ」
 人混みの様子から状況を察するなり
「色町に喧嘩は付きもんだ、面白そうだぜ」
 嬉々として人混みをかき分け騒ぎの中心へ行き
「おいおい、こんな場所で喧嘩するのはちと野暮だぜ?」
 騒ぎの張本人達の間に割って入りこちらに注目を向けさせ
「一体、何が原因だ?」
 騒ぎの原因を問いただした。
「酒を飲みたくて……そしたら丁度良い所に器があって酒を注いだら何か河童でよ」
「侍がオラの皿に酒を注ぎやがってよ……相撲で決着をつけようと思ったら、こいつ卑怯な手を使ってよ……五人に増えてよ」
 侍と河童は明らかな千鳥足でとんちんかんな事を言い上げた。
「こりゃ、酔っ払い相手に何を聞いても無駄って奴だな」
 亜鶴は軽く肩を竦めてから
「ちゃっちゃと喧嘩止めて酔いを醒まさせてやろうぜ?」
 ジャンとルイに目配せし小声で喧嘩の仲裁を持ちかけた。
 聞いたジャンとルイは
「ちょっと蓮水さん勝手に割って入って勝手に話進めないでよ! もう!!」
「喧嘩の仲裁? また面倒ごとに巻き込んでくれましたね」
 自分達を取り囲む夜の蝶達を丁寧にかき分け現場に駆けつけ
「さっさと終わらせちゃいましょっ!」
「だね、早く終わらせよう!」
 大仰な仲裁に取り掛かった。
 一番手として
「♪♪(即興の舞で喧嘩をしている奴等に隙を作らせるか)」
 先に乗り込んだ亜鶴が桜樹の鳴子も使い『旅巫の舞い』を披露し
「ん、何だ」
「おいおい、オラ達の間に入ったと思ったら舞か」
 侍と河童を戸惑わせ酔っ払ってる事もあってか苛立ちも見せるが
「♪♪」
 亜鶴が『蛍火舞い』に切り替えた所で
「♪♪(蓮水さんの舞に合わせて幻想的な雰囲気を作り出してと)」
 ルイが加わり『奔放な風』で風を纏い操り
「♪♪」
 『浮摺足』で地面から浮き上がり
「♪♪」
 『ハイジャンプ』も混ぜつつほのかな光が漂う中舞う。
「……」
 突然目の前で繰り広げられる幻想的な舞に侍と河童は一瞬言葉を失い隙を見せた瞬間
「♪♪(後は任せる)」
 亜鶴はチャンス到来だと二人に視線を送るやいなや
「!!」
 舞の間に『忍び足』で密かに別の場所に移動したジャンが『忍法猫だまし』によるけたたましい音を立て
「!!」
 侍と河童の視線を自分の方に向けさせたと同時に
「そぉれ!!」
 『投擲術』で忍び装束のガマ蛙サンゾーを目眩ましに侍に投げつけてから跳躍し
「これでフィニッシュよ!」
 『影縫い』で動きを封じ
「これで喧嘩の興奮も覚めるでしょっ!」
 『雨芸』で雨を降らせ
「ちょっ、な、何するんだ」
 侍をびしょ濡れにした。すっかり酔いは覚めた模様。
「何って、こっちはもう怒ってるんだから!」
 ここに来てから散々続きのジャンは怒りをちらり。
 その横では
「……頭の皿でも焼いちゃおっかな」
 ルイが河童に『鬼火』をちらつかせながらぼそっと言った。
「燃やすだけは勘弁してくれぇ……皿は、皿は河童にとって命なんだぁぁ」
 河童は一気に酔いを覚まし自分の皿を両手で覆い涙ながらの訴え。
「……どうしようかなぁ。ボク、今怒ってるからね、フフ……」
 ルイもまた怒りを口元に浮かべ
「後生だから」
 河童をより一層怯えさせた。
 こうして酔っ払いのくだらない喧嘩が一段落した所で
「すげぇ、見事に喧嘩をおさめたぞ」
「舞まで見られるなんてな」
 待ってましたとばかりに野次馬達が拍手やら歓声やらを飛ばした。
 その中には
「……面白いものが見られたかな」
 野次馬に混じり喧嘩の始終を見学していた萩原 雅怜の姿もあった。
 野次馬の声で
「いつの間にか人だかりが!?」
「少し目立ってしまったみたいだね」
 ジャンとルイは自身が置かれている状況を知り
「ほらほら、逃げるわよ」
 ジャンはルイと亜鶴の背中を押して逃亡を促した。
「おいおい、目立ってなんぼだろ? 逃げんでも良いのに……」
 人だかりを気にしていない亜鶴は軽くツッコミを入れつつ
「いえ、これは早いところ人混みに紛れて退散しないとですよ」
 ルイの急かす言葉と共にこの場を退散した。

 退散した後。
「ふぅ」
「とんだ事になったわね」
 ルイとジャンは人だかりから解放され一息入れ落ち着くやいなや
「蓮水さん美味しいもの奢ってください」
 唐突にルイが言い出し
「はぁ? 何で俺が奢るんだよ……!?」
 亜鶴は面倒くさがりを前面に押し出してか嫌そうな顔。
「ボク達お腹がすきましたので」
 ルイは軽く腹部に触れながらなおも主張。
「えぇ、空いたわねぇ」
 ジャンも加勢とばかりに言葉を挟み
「あぁあ、クソ、分かったよ奢ればいいんだろぉ……?」
 二対一と不利になった事もあってなのか亜鶴が折れた。
 途端
「蓮水さんの奢りね。ヤッター!」
 ジャンは大いにはしゃぎ
「……ったく(痛い出費になるぜ)」
 反対に亜鶴は気苦労な溜息であった。

 夜、華乱葦原、桜稜郭の色町。

「ふーん、ここって治安が悪いの」
 住民から色町の治安の悪さを聞いた弥久 風花
「だったら、困ってる人も多い訳よね、ちょっと見て回ってくるわ! 裏路地とかをね!」
 持ち前の強い正義感を発揮させ駆け出した。
 風花の身を案じる住民の声に
「ちょっと行って見るだけだから心配しないでね、こう見えてもそこそこ腕に覚えがあるんだから!」
 振り返り握る桜樹の棒を見せつけてから裏路地へ。
 その後ろを顔知る者に見付けられ密かに尾行されていた。

 裏路地。

 人気のない路地に入ってすぐに子供の悲鳴に導かれ
「そこまでよ!」
 風花は5歳の人間の少女の誘拐現場に駆けつけた。
 同時に
「用心棒さん、生け捕りで頼みます」
「尻子玉は多ければ多いほどいいからな」
 誘拐犯の合図で立ち塞がる彼らの用心棒相手に風花は構える桜樹の棒で大立ち回りを演じた。
 しかし
「くっ……子供を……助けないと……」
 目的は叶わず逆に倒され意識は遠のいた。
 誘拐犯達は二人を拘束し根城に消えた。二人の目撃者を密かに伴いながら。

 誘拐犯の根城、監禁部屋。

 少女の泣き声で目覚めた風花は
「……大丈夫だから。お姉ちゃんがすぐに助けるから(とはいえ、縄が解けない……お母さんから縄抜けの方法は教わってるのに……)」
 少女を励ましつつ縄抜けに挑むも解けない。しかも反撃を考慮されてか四肢を無理な姿勢で拘束され移動を封じられている。
「早く、この縄から脱出して助けないと……!」
 風花は必死にもがき縄を軋ませるが
「だ、駄目……あちこちに縄が食い込んで……」
 余計に縄が体に食い込むばかり。
「……早くしなきゃ……私が皆を助けるんだ」
 風花は諦めずに必死に縄と格闘し
「もう少しで結び目が一箇所……」
 ようやくという所で
「!!」
 見張りに見つかり腹部を蹴られた上に追加とばかりに重い鎖などで壁に繋がれ目隠しと猿轡をされ
「……(もう、駄目かも……誰か、助けて……)」
 助けを祈る以外の事を封じられた。
 しばらくして
「……!!(……この音……)」
 部屋の向こうから剣戟の音が聞こえ風花が警戒を強めると同時に
「……色んな姿になる煙の妖怪に……捕まるもんか……こいつらを売って……」
 恐怖に支配された誘拐犯が現れた瞬間
「!!」
 死角から一撃が飛んで来て見事に命中し誘拐犯が地に伏した。
 その攻撃を仕掛けのは
「……これで結末は勧善懲悪かな……」
 萩原 雅怜であった。一撃は『手慣れたパンチ』によるもの。
「さて……」
 手助けを終えた雅怜はそっと散策に戻った。

 雅怜が人知れず去った後。
「もう大丈夫だ。私は妖怪煙々羅の煙月(えんづき)。助けに来た」
 外見年齢20歳の青年が現れ風花と少女の拘束を解き無事に事件は収束した。
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