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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

アイドル田舎探訪~今晩泊めてください!~

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アイドル田舎探訪~今晩泊めてください!~

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~夜の釣り場~

 夕方前にはそこにいた全員が撤収し、続いて第二班がやって来た。
 接客に慣れた茂三は、流暢な言葉で生徒たちに説明していく。

「夜釣りは危険がつきものです。くれぐれも事故には注意してください」

 まだ、かろうじて光あるうちに案内された池は、本当に綺麗な場所だった。
 夜はこれから。
 星が出たらどんなに美しい光景になるだろう。
 朝も朝で、明るく穏やかでとっても素敵な場所だったんだろうと思わずにいられない。
 麦倉 淳はぼんやりと思った。

「火を熾した形跡もあることから、ここで釣った魚を焼いたり花火なんかも出来るな」

 淳は辺りを見回した。
 定点カメラがいくつか設置されている。

「そう言えば春人は残念ながら仕事で帰ってしまったようだし、オレが収録したものは後で見せればいいか」

 淳はカバンの中を探って忘れ物が無いかをチェックし始めた。

「魚を焼く道具や追加の花火、動物や釣れた魚などを調べるためのタブレットに……よし、足りないものは、ないな」

 それにしても、と淳は空を見上げた。
 まだ黒にはなっていない藍色の空の中に見える星。
 もっと暗くなれば満点の星空へと変化していくに違いない。

「流れ星、見れないかな。蛍とかも見れたら最高なんだけど……」

 夜風が頬に当たって気持ち良い。
 淳は池から少し離れた草むらに腰をおろして、ごろんと横になった。
 そんな様子を栗村 かたりは黙って見ていた。

「寝たかな?」

 淳の目の前でひらひらと手を振ってみる。
 反応が無い。

「淳おにーさん、寝ちゃった」
 
 ふふっと笑って、かたりは淳がさっき見ていた空を同じように見上げた。

「星空きらきら……流れ星も見たいの。わたしの流れ星のお願い事は『かわいいクッキーをいっぱい売れるお店を、出せますように』だもんね」

 しばらく空を見つめていたが、一向に星が流れる気配が無い。

「んー、もうちょっと時間がかかるのかな? それじゃあ、もし、蛍が見られたら、とっても素敵な思い出になりそー♪」

 かたりはきょろきょろと辺りを見回して蛍の光を探した。
 ……見つからない。
 川の流れる音だけが静かに耳に聞こえてくる。
 
(夜の川に遊びに来て遊ばない手はないよね。とってもきれいな場所だから、お魚だけじゃなくて他にもいろんな動物がいると思うの。だから、迷子にならない程度に、お散歩してみようっと。かわいい動物に会えると、うれしいな~♪)

「淳おにーさん、行ってきます」

 淳に向って可愛く敬礼すると、かたりはゆっくりと歩き出した。



「僕の出身地も結構な田舎で、若者の流出とか廃村の危機とか、他人事とは思えないんだよね……この番組で氷ノ川村を上手くアピールできれば、後々その経験を生かして実家の村おこしにも貢献できるかもしれない」

 橘 樹は隣にいるフィア・シルフォーネにそう話しかけた。

「校長の言う通り、田舎には田舎の良さがある。自然の中でゆったりと過ごす時間の素晴らしさを皆に伝えたいな」

「樹は今回シンパシーを感じているんだな。アタシもその気持ちはわかるさ、セブンスフォールにもこういった穏やかな田舎は多かったから」

「うん、田舎の大切さは貴重だと思うよ。もっともっと良さを知ってもらいたいな」

「一生懸命だな。格好良いぞ」

 しばらく田舎談話に華を咲かせていると、心地よい夜風が二人の間をすり抜けて行った。

「オツだねぇ」

 フィアが答えると、樹も笑って言った。

「本当に。今回はのんびり過ごすことの一環だから、この空気を、自然を存分に味わって帰ろう」

「ああ」

 池のほとりまでやってくると、木々が開けて大きな空が見えた。
 
「すごい……」

 思わずフィアがこぼした。
 そんなフィアを横目で見ながら樹が言った。

「満点の星だ。もしかしたら流れ星なんかも見られるかもしれないよ?」

「流れ星に願い事かぁ……」

 願うなら、皆が立派なアイドルになれるように祈る。
 表立っては言えないけど、心で思うくらいは良いだろう。
 フィアはこっそり思った。
 
「僕ももし流れ星を見つけたら何か願い事をしたいな。ちょっと俗っぽすぎる気もするけど『あの芸器が手に入りますように!』とか?」

「それ良いな」

 可笑しそうに笑うフィアに樹も笑い返した。

「さてと、釣りでも始めようか」

 穏やかな田舎の風情を味わいながらのんびり釣りを開始した。
 その時、山の奥へ入って行こうとするかたりを二人は見つけた。

「繁みとか林のほうに行かないようにねー」

 樹が急いで声をかけ、慌ててフィアも続けた。

「暗いからあんまり繁みや林の方に行くんじゃないよー! 迷子になったら大変だよー」

 叫ぶ二人の声に気付いたのか、遠くからかたりが手を振ってきた。

「樹先輩! フィアちゃーん!! かわいい子が見つかったら、写真撮りたいのー♪」

 それだけ言うと、かたりはずんずん森の中へと入っていった。
 大丈夫かなと見送ることしか出来ない二人だった。


 みんなの一番後ろからついてきた渋谷 柚姫羽倉 なつみも、池までやってきてその荘厳さに驚いていた。

「満点の星空! 都会だとあまり星は見られないから、ちょっとノスタルジーかな?」

 柚姫は瞳を輝かせながらなつみに言った。

「これほど綺麗な星空が見れるのも田舎ならではのものですね」

 なつみが感動しながら答える。

「こんなに星がきれいな夜だと流れ星も見られるかもしれないね」

「流れ星、見つかるといいですね。流れ星……」

 なつみは空を見上げつつ、首にしていた[ドリームペンダント]をそっと手で握りしめて秘めた願いを込めた。

「あっ、今……!」

 柚姫の目の端を一瞬で掠めて消えていった光。
 また流れてくれるとは限らない。
 流れ星に願い事を言ったら願いが叶う……というのを本気で信じてるわけじゃないけど……

(気休めでもいいからやってみようかな)

 柚姫はそっと願った。

(元の身体に戻れますように……)

「柚姫さん、こっちの方がもっとよく見え……きゃっ! びっくりしましたぁ、淳さんじゃないですか」

 なつみは、いつの間にか淳が眠ってしまっている場所へとやって来ていた。

 風邪ひかないようにそっと大きめのタオルを掛けてあげると、気配に気づいたのか淳が目を覚ました。

「淳さん、お疲れさまです」

「うわぁ、いつの間にか寝てしまっていた。……ん? これ、なっちゃんが?」

「はい」

「ありがとう、これから花火でもするのかな?」

「そうですね」

「しかし、すげえなぁ。こんなにたくさんの星、見たことないや。やっぱ暗くなると一段と星の光が見えるな」

 草むらに身体を再び倒し、星の多さに感動する淳。
 夜風が運ぶ川や草のちょっと湿った香り、川のせせらぎ、虫の鳴き声……
 それらをのんびり耳にしながら……淳は再び眠りに落ちていった。

「麦倉くん、また寝ちゃったの?」

 柚姫がなつみに声をかけた。

「そうみたいです」

 タオルをしっかりかけてあげて、柚姫となつみは睡眠の邪魔にならないよう場所移動を開始した。
 花火をしたいが、近くで騒いでは淳を起こしてしまう。
 少し離れた川岸にで、なつみに線香花火を手渡しながら柚姫が何気なく話し始めた。

「僕の実家がここみたいな川のある山の中だったから、毎年夏になるとやってたんだよね」

(……あ! 元の身体の時の話したらまずい! 誤魔化さなきゃ!)

「って、知り合いの大学生のお兄さんから聞いたんだ! 私、東京出身だからちょっと憧れてて!」

「そうなんですか、実は私の祖父の実家は田舎なんですよ。今回もこういった幻想的な田舎の風景が放映されて美しさが伝わればと思っています」

 上手く誤魔化せているいることにほっとして、柚姫は花火に集中した。
 なつみの線香花火がおごそかな光を発する。

「この蛍のような淡い光はほのぼのとします……」

 しっとり見つめていると、いつの間にかその光とは別の淡い光が、吸い寄せられるようにぽつぽつと集まってきた。

「蛍だ……蛍が寄ってきた!」

 柚姫が驚いたような声を出した。

「うわぁ、集まってきてる。蛍の光と花火の光で、すっごく綺麗だね」

「本当ですね……」

 しばらく二人が蛍と花火に魅入っていると、後ろから明るい声が聞こえた。

「柚姫先輩に、なつみちゃん! 蛍いっぱい飛んでるね!」

 かたりが満面の笑みで二人に話しかけてくる。
 
「動物を探しに行ったんだけど真っ暗で見えなくて、何もいなくて、戻ってきたら花火してる先輩たちを見つけたのー」

「そっか」

「蛍も花火もきれぇ……」

 眼を細めて、かたりはその光景に魅了される。

「あ! 淳おにーさんにも見せてあげたい!」

 かたりがそう言うと、柚姫がいたずらっぽい笑みを浮かべた。
 
「じゃあ起こすついでにねずみ花火しよっか。寝ている麦倉くんの耳元に飛んでいくかもしれないけど、そこはテレビ的にはおいしいところ、ということで」

 設置されている定点カメラを見ながらくすくす笑う。

「だ、大丈夫でしょうか? でも……、ちょっと面白そうですね」

 なつみも誘いに乗ってしまった。
 きっと寝ぼけながらも慌てふためく淳の様を想像すると、おかしくてたまらない。
 わくわくしながら淳の取る行動に期待する三人だった。


「全く釣れないね……」

 樹はため息交じりに呟いた。
 魚も眠っているのかもしれない。
 もしくは昼間、生徒の誰かが釣りまくって、もうめぼしい魚はここにはいないのかもしれない。
 のんびり釣りを楽しもうと思ったけど、全く釣れないのは意味が違う。

「しょうがない、釣りは諦めてあそこで花火している連中と合流するか」

 さっきから、きゃっきゃと楽しそうにしている声がここまで聞こえてきている。

「そうだね」

 二人きりの時間はここで終わり。
 少し残念な気もするが、道具を片付けて歩き出した。
 フィアは近くにあった定点カメラに気付くと。
 
「氷ノ川村の川は、夜も美しく、そして楽しいのさ」

 カメラ目線で番組キャッチフレーズ的に呼びかけた。

 最後にウインクしながら「春人、次は皆で一緒に遊ぼうぜ!」とメッセージを残した。
 
「優しいね」

 樹の言葉にフィアは少し照れ臭そうにして、小走りに駆けていった。
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