始まり


　普段は物言わぬ『何か』が、ある日突然という話は不思議と多いもので……。

　殊更、そんな話が多いのは『人形』であったりもする。


　人の手によって、人の形を与えられ、人としては生きられぬものたち。

　それでも作り手達は思い、願うのだろう。

　父の姿を、母の姿を、祖父母の姿を、兄、姉の姿を、弟、妹の姿を。
　大切な友の姿を、恋しく愛しい人の姿を、何よりも守りたい子や孫の姿を。

　その造りが精巧になればなるほど、人形たちも思うのかもしれない。

　込められたその思いに応えようと……。



　奇しくも今回はそういう形ではなかったけれども……。

「人形が……人形が動いたぞーー！！」　

「きゃあ！　こっちに来るわ！！」

　楽しげな祭りの賑わいが悲鳴へと形を変えていく。

　逃げ惑う人々、襲いかかる人形、そして駆けつけたフェスタの生徒たち。

　これ以上騒ぎを広めまいと進む先は果たして……―――。