共奏のオルトアース~ファイナルステージ~
リアクション公開中!
リアクション
■いろんな『萌え』があっていいじゃない!
「はぁ~、やっぱREIKAだよな~、あのツンっぷりがたまらねぇ」
「いやいや、お嬢様なところがいいんだって」
「違うだろ、勇者チックなところがこう、燃えるっつーか」
ステージの中央で魅力を振りまいている玲花を、ファンはこのように分析していた。普通なら「属性盛り過ぎwww」と笑われるところだが、今の玲花は『ツンデレ補正』や『お嬢様補正』『勇者補正』といった強力なアイドル補正でそれらの声を抑えつけ、抗えなくしていた。
「凄いものだね。傍から見れば矛盾だらけなのに、一人の個性として成立しているように見える。
このキャラを主人公にした漫画を描けたなら、どうなるだろう……」
「褒めてる場合じゃないのよ! このままだとみんな壊れちゃうのよ」
冷静に分析を行っていた左脳を戦戯 嘘がぶんぶん、と揺さぶって対策を考えさせる。
「……ライブで玲花の持っている補正を打ち破るしかないね。そうして無個性になってしまえば、消えていくだろう」
「わかったわ。……でもステージには玲花のファンがいる。邪魔をしてくるかもしれないわ」
レイニィ・イザヨイが示す先、玲花を熱狂的に応援するファンたちはこのままだと、他のアイドルを地雷認定して排除にかかるだろう。彼らの応援が玲花の力になっている側面もあり、まずは彼らの洗脳を解く必要があった。
(……大丈夫、こんな時だって、ライブをすることはできる!
僕のライブで、みんなをもとに戻してあげよう!)
ざわつくファンを前に、天宮 昴が恐れつつもステージに上がり、歌い出す。彼らは玲花以外を地雷認定しているとはいえ、ステージに上がって引きずり下ろしたりはしなかった。それが彼らに残された一欠片の矜持でもあった。
「……なんだ、このなにか、忘れていたような気持ち……ううっ」
歌を耳にした一部のファンが頭を抱え、そしてハッとした顔をする。
「おい、何をしてるんだ! お前が好きだった子はあいつじゃないぞ!」
そして隣の、玲花を盲信している者を揺さぶって正気を取り戻させようとする。全体から見ればまだまだ小規模だが、確実に洗脳を解かれる範囲が広がりつつあった。
「ハッハー! ステージの主役はオレ! そこんとこオーケー?」
自分を最高に輝かせる振る舞いをもってステージに上がったジュン・ガルハーツへ、ファンは玲花に向けていた視線を一時的にジュンに向ける。一度ジュンを見てしまえば、もう彼からは逃げられなかった。
「もっともっとオレに注目しろよー!」
さらに注目の範囲を広げるため、自らを大量のSDキャラクターに分裂させ、四方八方に散らばって殴りかかる勢いでパフォーマンスを行う。パチン、と頬を叩かれた男性ファンは目が覚めたような顔をし、一方女性ファンはというと、その愛くるしい姿に虜になり、彼を追いかけている間に正気を取り戻していったのであった。
(僕の大好きな人も、この後ここでライブをするつもりだ。みんなのライブを、邪魔させるわけにはいかないぞ)
橘 樹が宙に色とりどりのハートを描き、多くのファンが集結している場所に向かって飛ばす。ハートに気付いたファンがそちらに注意を引かれ、ステージから離れることで「……あれ? どうして俺は、彼女の応援をしていたんだろう?」と冷静にさせる狙いであった。
(君達は、まぁ僕が言うのもなんだけど、フェスタの皆のライブを見るべきだ)
そして再び、今度は宙に矢印を描き、矢印がフェスタ生のライブを行っているステージを向くようにして飛ばす。
「おっ、いい曲だな」
「かわいいじゃんあの子」
「そうだよ、これだよこれ!」
ライブに注目したファンは、忘れていたときめきを思い出したようであった。
「ぶるぶる……おぉい、なんだか寒くないか?」
玲花に熱狂的な声援を送っていたファンの一人が、ぶるり、と身体を震わせた。それは彼の錯覚などではなく、黒染めの鳥の羽を背負い、ステージに登場したカイト・クラフレットによるものであった。
(皆さんの推しを、愛を、すり替える……そんなのとっても、悲しいです)
やがてステージには冬の花として有名なノースポールが舞い、背景に加えられた吹雪が玲花への熱を劇的に冷やしていく。そうしてファンがニュートラルになったところで、闇のオーラを迸らせ、奏梅 詩杏がステージに登場する。
「僕は闇を操る魔導師、君たちに巣食う闇を払ってあげるのですよ!」
ギターを手にポップな演奏を披露し、音を聞かせることによってファンの持っている『好き』という気持ちを正常なものへと戻していく。
「おぉ……なんか目が覚めた気がする!」
「今まで俺たちは、強いられていたんだ、あいつに!」
そうして正気を取り戻したファンたちが、詩杏とカイトのライブを応援し始める。
「そーれ、僕からのプレゼント!」
ステージから観客席へ、詩杏がお菓子のプレゼントを行う。そうしてライブが終わる頃には、大勢のファンが彼らを拍手や歓声で迎える形となった。
「才能なき者は、輝くチャンスすらない世界だってのは分かっテル。……でも」
暴れるファンの前でステージに上がったレイ・トレードが、一度大きく深呼吸する。
「今は、為すべきことを為す。それだけダ!」
思うところはあれど、今はナゴヤの人々の洗脳を解き、大好きだった日常を取り戻すこと。
絶望? 失望? 苦悩? 挫折?
プラスマイナス喜び怒り全部混合! 響け咆哮!
天国でもね? 地獄でもね? 大事なことは全力タマシイ!
一度っきりの今だから命を燃やして楽しもう!
今日までの自身の集大成の曲を披露すれば、正気を取り戻したファンが騒がしくも暖かな声援を送ってくれた。
「タイガーマイトが相手だ! これ以上ライブを邪魔するなら、止めさせてもらう!」
高々と跳躍しステージに降り立った虎野 直闘に、洗脳されたファンから応援グッズが投げ込まれる。
「はっ!」
それらを拳で、足で打ち、弾き返していく。投げるものがなくなったファンは、ならばとファンを担ぎ上げ、投げ込もうとする。
「暴れた上にダイブなど、させるものか!」
拳に光を集め、ファンの集団へ打ち出せば、筋となった光が集団をバラバラに弾き飛ばした。
「鎮まれ! 本当のファンとはなにか、いま一度思い出すんだ!」
「ふーんだ! てんかりんだか添加物だか知らないけど、あ~んな雑魚の言うコト簡単に聞いちゃうキミら暴走ファンどもに、左脳さんに近付く資格なんてこれっぽっちもないのだ!」
「うーん、確かに過激なファンはちょっとお断りかな……」
町田 花儀の煽りに、左脳がうんうん、と同意の呟きを漏らす。
「REIKA様を雑魚呼ばわりとはなんだテメェ!」
「やっちまえ! ……ぬわぁ!」
激昂したファンが一歩を踏み出したところで、盛大に足を滑らせてすっ転ぶ。いつの間にか足元が磨かれていたことに気付かず、大勢のファンが転んで出鼻を挫かれる形になった。
『♪……♪……』
そこに、華やかな和風デザインの琵琶を携えたドリス・ホワイトベルがファンの間からスッ、と現れ、演奏を始める。興奮しかけていた場が一瞬静まり返ったタイミングでの登場は効果的で、ファンはその音色に少なからず、期待を抱く。
(皆、こっちを見て? ……注意を集めれば、あたしでも……!)
ドリスがステージに上がった直後、別の方角から兎多園 詩籠、九鬼 玲音、如月 なごみが同じようにステージに上がり、歌とダンスでライブを盛り上げる。
「驚いた? 私たちのライブ、見てくれてるかな?」
なごみの呼びかけに、ファンから歓声が上がった。一人ひとり異なった個性を持ったアイドルたちが集まり、芸を披露する様は『いろんな萌えがあっていいんだ』ということを強烈に印象づけた。
「そうだ! 萌えはひとつだけじゃない!」
ファンの目に光が宿り、フェスタ生のライブを応援し始める。……玲花の存在感は未だ圧倒的であったが、少なくともファンにライブを邪魔されるような事態は、避けられたのであった。
「はぁ~、やっぱREIKAだよな~、あのツンっぷりがたまらねぇ」
「いやいや、お嬢様なところがいいんだって」
「違うだろ、勇者チックなところがこう、燃えるっつーか」
ステージの中央で魅力を振りまいている玲花を、ファンはこのように分析していた。普通なら「属性盛り過ぎwww」と笑われるところだが、今の玲花は『ツンデレ補正』や『お嬢様補正』『勇者補正』といった強力なアイドル補正でそれらの声を抑えつけ、抗えなくしていた。
「凄いものだね。傍から見れば矛盾だらけなのに、一人の個性として成立しているように見える。
このキャラを主人公にした漫画を描けたなら、どうなるだろう……」
「褒めてる場合じゃないのよ! このままだとみんな壊れちゃうのよ」
冷静に分析を行っていた左脳を戦戯 嘘がぶんぶん、と揺さぶって対策を考えさせる。
「……ライブで玲花の持っている補正を打ち破るしかないね。そうして無個性になってしまえば、消えていくだろう」
「わかったわ。……でもステージには玲花のファンがいる。邪魔をしてくるかもしれないわ」
レイニィ・イザヨイが示す先、玲花を熱狂的に応援するファンたちはこのままだと、他のアイドルを地雷認定して排除にかかるだろう。彼らの応援が玲花の力になっている側面もあり、まずは彼らの洗脳を解く必要があった。
(……大丈夫、こんな時だって、ライブをすることはできる!
僕のライブで、みんなをもとに戻してあげよう!)
ざわつくファンを前に、天宮 昴が恐れつつもステージに上がり、歌い出す。彼らは玲花以外を地雷認定しているとはいえ、ステージに上がって引きずり下ろしたりはしなかった。それが彼らに残された一欠片の矜持でもあった。
「……なんだ、このなにか、忘れていたような気持ち……ううっ」
歌を耳にした一部のファンが頭を抱え、そしてハッとした顔をする。
「おい、何をしてるんだ! お前が好きだった子はあいつじゃないぞ!」
そして隣の、玲花を盲信している者を揺さぶって正気を取り戻させようとする。全体から見ればまだまだ小規模だが、確実に洗脳を解かれる範囲が広がりつつあった。
「ハッハー! ステージの主役はオレ! そこんとこオーケー?」
自分を最高に輝かせる振る舞いをもってステージに上がったジュン・ガルハーツへ、ファンは玲花に向けていた視線を一時的にジュンに向ける。一度ジュンを見てしまえば、もう彼からは逃げられなかった。
「もっともっとオレに注目しろよー!」
さらに注目の範囲を広げるため、自らを大量のSDキャラクターに分裂させ、四方八方に散らばって殴りかかる勢いでパフォーマンスを行う。パチン、と頬を叩かれた男性ファンは目が覚めたような顔をし、一方女性ファンはというと、その愛くるしい姿に虜になり、彼を追いかけている間に正気を取り戻していったのであった。
(僕の大好きな人も、この後ここでライブをするつもりだ。みんなのライブを、邪魔させるわけにはいかないぞ)
橘 樹が宙に色とりどりのハートを描き、多くのファンが集結している場所に向かって飛ばす。ハートに気付いたファンがそちらに注意を引かれ、ステージから離れることで「……あれ? どうして俺は、彼女の応援をしていたんだろう?」と冷静にさせる狙いであった。
(君達は、まぁ僕が言うのもなんだけど、フェスタの皆のライブを見るべきだ)
そして再び、今度は宙に矢印を描き、矢印がフェスタ生のライブを行っているステージを向くようにして飛ばす。
「おっ、いい曲だな」
「かわいいじゃんあの子」
「そうだよ、これだよこれ!」
ライブに注目したファンは、忘れていたときめきを思い出したようであった。
「ぶるぶる……おぉい、なんだか寒くないか?」
玲花に熱狂的な声援を送っていたファンの一人が、ぶるり、と身体を震わせた。それは彼の錯覚などではなく、黒染めの鳥の羽を背負い、ステージに登場したカイト・クラフレットによるものであった。
(皆さんの推しを、愛を、すり替える……そんなのとっても、悲しいです)
やがてステージには冬の花として有名なノースポールが舞い、背景に加えられた吹雪が玲花への熱を劇的に冷やしていく。そうしてファンがニュートラルになったところで、闇のオーラを迸らせ、奏梅 詩杏がステージに登場する。
「僕は闇を操る魔導師、君たちに巣食う闇を払ってあげるのですよ!」
ギターを手にポップな演奏を披露し、音を聞かせることによってファンの持っている『好き』という気持ちを正常なものへと戻していく。
「おぉ……なんか目が覚めた気がする!」
「今まで俺たちは、強いられていたんだ、あいつに!」
そうして正気を取り戻したファンたちが、詩杏とカイトのライブを応援し始める。
「そーれ、僕からのプレゼント!」
ステージから観客席へ、詩杏がお菓子のプレゼントを行う。そうしてライブが終わる頃には、大勢のファンが彼らを拍手や歓声で迎える形となった。
「才能なき者は、輝くチャンスすらない世界だってのは分かっテル。……でも」
暴れるファンの前でステージに上がったレイ・トレードが、一度大きく深呼吸する。
「今は、為すべきことを為す。それだけダ!」
思うところはあれど、今はナゴヤの人々の洗脳を解き、大好きだった日常を取り戻すこと。
絶望? 失望? 苦悩? 挫折?
プラスマイナス喜び怒り全部混合! 響け咆哮!
天国でもね? 地獄でもね? 大事なことは全力タマシイ!
一度っきりの今だから命を燃やして楽しもう!
今日までの自身の集大成の曲を披露すれば、正気を取り戻したファンが騒がしくも暖かな声援を送ってくれた。
「タイガーマイトが相手だ! これ以上ライブを邪魔するなら、止めさせてもらう!」
高々と跳躍しステージに降り立った虎野 直闘に、洗脳されたファンから応援グッズが投げ込まれる。
「はっ!」
それらを拳で、足で打ち、弾き返していく。投げるものがなくなったファンは、ならばとファンを担ぎ上げ、投げ込もうとする。
「暴れた上にダイブなど、させるものか!」
拳に光を集め、ファンの集団へ打ち出せば、筋となった光が集団をバラバラに弾き飛ばした。
「鎮まれ! 本当のファンとはなにか、いま一度思い出すんだ!」
「ふーんだ! てんかりんだか添加物だか知らないけど、あ~んな雑魚の言うコト簡単に聞いちゃうキミら暴走ファンどもに、左脳さんに近付く資格なんてこれっぽっちもないのだ!」
「うーん、確かに過激なファンはちょっとお断りかな……」
町田 花儀の煽りに、左脳がうんうん、と同意の呟きを漏らす。
「REIKA様を雑魚呼ばわりとはなんだテメェ!」
「やっちまえ! ……ぬわぁ!」
激昂したファンが一歩を踏み出したところで、盛大に足を滑らせてすっ転ぶ。いつの間にか足元が磨かれていたことに気付かず、大勢のファンが転んで出鼻を挫かれる形になった。
『♪……♪……』
そこに、華やかな和風デザインの琵琶を携えたドリス・ホワイトベルがファンの間からスッ、と現れ、演奏を始める。興奮しかけていた場が一瞬静まり返ったタイミングでの登場は効果的で、ファンはその音色に少なからず、期待を抱く。
(皆、こっちを見て? ……注意を集めれば、あたしでも……!)
ドリスがステージに上がった直後、別の方角から兎多園 詩籠、九鬼 玲音、如月 なごみが同じようにステージに上がり、歌とダンスでライブを盛り上げる。
「驚いた? 私たちのライブ、見てくれてるかな?」
なごみの呼びかけに、ファンから歓声が上がった。一人ひとり異なった個性を持ったアイドルたちが集まり、芸を披露する様は『いろんな萌えがあっていいんだ』ということを強烈に印象づけた。
「そうだ! 萌えはひとつだけじゃない!」
ファンの目に光が宿り、フェスタ生のライブを応援し始める。……玲花の存在感は未だ圧倒的であったが、少なくともファンにライブを邪魔されるような事態は、避けられたのであった。