共奏のオルトアース~ファイナルステージ~
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■1-1.料理を止めろ
「さて、僕ひとりでどれだけ足止めできますかね……!」
大吉 陽太郎は、たった一人、料理人へと食材を運ぶ巨獣狩りたちの足止めを引きお受けていた。食材の供給がストップすれば料理人たちも手を止めざるを得ない。そうすることで次へと繋ぐことが大事だという考えである。
とら挟みを駆使してのゲリラ戦。罠で足を止めたものから一人ずつ仕留めていく確実な戦法である。一人で捌き切るのは流石に絶望的な人数であったが、しかし時間稼ぎにはなっているはずだ。
「あとは、他の方々にお任せするしかない、か」
陽太郎が振り返ったその先。遥か遠く、料理人たちの戦場――調理場ではもうひとつの戦いが巻き起こっていた。
「この人達は洗脳されてるだけだから、なるべく傷つけないようにしよ~」
幾つもの光が煌き、針が調理場の料理人たちの影を縫い止める。リリィ・エーベルヴァインの腹の底は、料理を粗末にする玲花の怒りで満ちていたが、それをぐっとこらえて料理人たちの手を止めることに専念していた。
二刀による素早い峰打ち。少々荒っぽくはなるが、スピード勝負となればこちらのほうが速いはずである。
「もうっ、これが終わったら一言ガツンと言ってやらないと!」
まだまだ並み居る料理人たちを振り返り、気合を入れ直すリリィ。それに同意するかのようにアイリス・クラウディアが飛び出した。
「ああ、そうだ! 料理は自らの腕で皆を笑顔にするもの。私が会ってきた者たちは皆楽しそうに競い、極上の料理を作ってきていたぞ! ……それを!」
料理人たちは包丁を手に抵抗してくる。アイリスはぐっと唇を噛み締めると、横一文字に包丁を弾き飛ばした。
「料理人の命とも言える包丁を、このように使うなんて言語道断だ! 少しだけおとなしくしてくれ……!」
リリィ同様、アイリスも料理人たちを傷つける意図はない。素早い動きで彼らを押さえ込みながら、調理の妨害を進めていた。
二人が力づくで料理人を抑え込む一方で、天地 和たちはまた別の方向からのアプローチを試みていた。
「わたしは未来のカリスマ麻雀アイドル、天地 和! キミ達がREIKA様のファンだと言うなら、わたしの麻雀力をその料理に込めてみろー!」
力の限りに高らかに宣言した彼女は、己の持ち歌であるド派手なサウンドと共に姿を現した。足元に投げた立直スピナーにより料理人たちの足を止め、むりやりに自分のパフォーマンスを見せつける。
彼女の大きな動きによる唐突なライブは、確実に料理人たちの目を引いていた。
そして調理が疎かになった料理人たちに対して、
「みなさん、お疲れでしょうし、ティータイムにしませんか? 素敵なお菓子もありますよ」
梓弓 莉花の用意した甘い香りが料理人たちの鼻をくすぐった。働き詰めで玲花への料理を作り続けている彼らは、実際に疲労困憊であった。ライブで弛緩した空気は一層彼らの疲労感を煽り立て、思わず促されるまま座り込んでしまう。
「さあ、召し上がれ。紅茶もありますから、ゆっくりしていってくださいね」
彼女の振る舞う紅茶もデザートも、どこかほっとするような味わいだ。暴れだすものはリリィやアイリスに静かにさせられ、そうでないものも和のライブや莉花のもてなしに力を失った。
もとより届く食材が少なく停滞気味であった調理場は、これを機に完全に機能を失ったのであった。
「さて、僕ひとりでどれだけ足止めできますかね……!」
大吉 陽太郎は、たった一人、料理人へと食材を運ぶ巨獣狩りたちの足止めを引きお受けていた。食材の供給がストップすれば料理人たちも手を止めざるを得ない。そうすることで次へと繋ぐことが大事だという考えである。
とら挟みを駆使してのゲリラ戦。罠で足を止めたものから一人ずつ仕留めていく確実な戦法である。一人で捌き切るのは流石に絶望的な人数であったが、しかし時間稼ぎにはなっているはずだ。
「あとは、他の方々にお任せするしかない、か」
陽太郎が振り返ったその先。遥か遠く、料理人たちの戦場――調理場ではもうひとつの戦いが巻き起こっていた。
「この人達は洗脳されてるだけだから、なるべく傷つけないようにしよ~」
幾つもの光が煌き、針が調理場の料理人たちの影を縫い止める。リリィ・エーベルヴァインの腹の底は、料理を粗末にする玲花の怒りで満ちていたが、それをぐっとこらえて料理人たちの手を止めることに専念していた。
二刀による素早い峰打ち。少々荒っぽくはなるが、スピード勝負となればこちらのほうが速いはずである。
「もうっ、これが終わったら一言ガツンと言ってやらないと!」
まだまだ並み居る料理人たちを振り返り、気合を入れ直すリリィ。それに同意するかのようにアイリス・クラウディアが飛び出した。
「ああ、そうだ! 料理は自らの腕で皆を笑顔にするもの。私が会ってきた者たちは皆楽しそうに競い、極上の料理を作ってきていたぞ! ……それを!」
料理人たちは包丁を手に抵抗してくる。アイリスはぐっと唇を噛み締めると、横一文字に包丁を弾き飛ばした。
「料理人の命とも言える包丁を、このように使うなんて言語道断だ! 少しだけおとなしくしてくれ……!」
リリィ同様、アイリスも料理人たちを傷つける意図はない。素早い動きで彼らを押さえ込みながら、調理の妨害を進めていた。
二人が力づくで料理人を抑え込む一方で、天地 和たちはまた別の方向からのアプローチを試みていた。
「わたしは未来のカリスマ麻雀アイドル、天地 和! キミ達がREIKA様のファンだと言うなら、わたしの麻雀力をその料理に込めてみろー!」
力の限りに高らかに宣言した彼女は、己の持ち歌であるド派手なサウンドと共に姿を現した。足元に投げた立直スピナーにより料理人たちの足を止め、むりやりに自分のパフォーマンスを見せつける。
彼女の大きな動きによる唐突なライブは、確実に料理人たちの目を引いていた。
そして調理が疎かになった料理人たちに対して、
「みなさん、お疲れでしょうし、ティータイムにしませんか? 素敵なお菓子もありますよ」
梓弓 莉花の用意した甘い香りが料理人たちの鼻をくすぐった。働き詰めで玲花への料理を作り続けている彼らは、実際に疲労困憊であった。ライブで弛緩した空気は一層彼らの疲労感を煽り立て、思わず促されるまま座り込んでしまう。
「さあ、召し上がれ。紅茶もありますから、ゆっくりしていってくださいね」
彼女の振る舞う紅茶もデザートも、どこかほっとするような味わいだ。暴れだすものはリリィやアイリスに静かにさせられ、そうでないものも和のライブや莉花のもてなしに力を失った。
もとより届く食材が少なく停滞気味であった調理場は、これを機に完全に機能を失ったのであった。