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共奏のオルトアース~ファイナルステージ~

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■4-2.響き合うウタとウタ

「……!? ウタの力が弱まってる、今なら行けるよ、ルティア!」

 力の象徴たる部位の多くを切り落とされたことで玲花は力を減じていた。星獣たちを案じていたイシュタム・カウィルルティア・オルコットは、この機会を見逃すことなく意識を統一する。

「はい……! ともに歌い、星獣さんたちに……みんなに、歌う楽しさを、思い出させてあげましょう……!」

「そう! 荒らされて秩序が乱れた悲しい星空……私達の輝きで正す!」

 二人の言葉に、二人の足元に居た幼生神獣が高く声を上げた。それを皮切りとしてルティアと彼女のパートナー、フルートバードの調べがハコダテに響く。

 一際目立てるように、イシュタムが星獣たちの目の前へ飛び出していく。踊るように、楽しむように。そしてそれに合わせて、ルティアの想いのこもったウタが重なった。

 戦いを好まぬものたちは数多く居る。玲花のウタに支配され、むりやりに暴れさせられている星獣たちを解き放とうと、二人の演奏は加速する。暴れる必要などないと、ただ楽しめばいいのだと。そしてそのウタは軽やかな響きと、そして空を舞うかのような踊りによっていきいきと描き出されていた。

「いいウタですね、あみかちゃん」

「はい。わたしたちも、想いを伝えられたらいいですね」

「できるよ、きっと」

 それを見つめていた二人。藍屋 あみか竜胆 華恋は自分たちの星獣たちをひとしきり撫でると深呼吸してその場に臨む。状況は危機的なものだが、しかし、それでも二人であれば怖くはない。彼女たちはそれを知っているからこそ、それを星獣に伝えることもできるのだ。

 華恋の紡ぐピッコロの旋律に合わせてあみかのウタが響く。穏やかで優しげなハルモニアは、暴走し、あるいは恐怖する星獣たちの身体を包み込んだ。

「おいで、怖くないから」

 ピッコロを演奏する手を止めた華恋は、戦い傷つく星獣たちに手を差し伸べた。震える彼らを抱きしめ、撫でる中、彼女の想いを伝えるようにあみかが替わって竪琴の柔らかな音を紡ぐ。

 それは決して一人ではできないことだ。誰かと一緒だからこそできることだ。二人は笑みを交わし合い、あみかは竪琴で、華恋はハミングで演奏を盛り上げる。あなたは一人ではないのだと、怯える必要も暴れる必要はないのだと、そう伝えるために。

 四人のウタは確かに星獣へと届いた。その穏やかな波は少しずつハコダテの星獣たちを穏やかな気持ちへと変えていったのだ。

「……よし、今が好機。俺たちも行くぞ!」

 星獣たちが穏やかになりつつある今、大規模なパフォーマンスを行なうなら絶好の機会である。それを理解していた龍崎 宗麟――ヒーローネーム、リントヴルムは颯爽とスターフォールへと降り立った。

「星獣と人間の絆は忘れたとは言わせないぜ? 俺達と一緒に玲花のノイズ跳ね除けるぞ!」

 あくまでも堂々とした立ち振舞。勇気と威厳に満ちたその呼びかけは、これまでの彼女たちとは別ベクトルの落ち着きを呼び込むことだろう。

「ああ。お陰様で我輩のミナトも好調そうだ。さて、とっておきの舞台を演じようではないか」

 それに合わせるようにして色造 空が手を振るい、パートナーであるオカリナネズミの音色と共に辺りに草原が広がっていく。

「ドライ・リヒトによるリサイタルの開幕だ!」

 まるでステージを支配する指揮者のごとく指を振るい、描いた楽譜からピアノの音が跳ねる。即興で生み出された楽譜は、周囲に響く音と複雑に絡まり合って一層深みをもたらしていった。

 場は温まったとばかり、二人の視線が最後の“ドライ・リヒト”に向けられた。

「人と星獣さん、絆のアンサンブルを……!」

 パートナーの首元におそろいリボンを結び、甘味 恋歌がその姿を現した。その瞬間、ぽつりぽつりとスターフォールへ光が灯る。恋歌の分身がいくつも現れて、ゆっくりと歌いだしたのだ。

 彼女と、彼女のパートナーの紡ぐその旋律はステージとなるこのハコダテへ伝わり、まるで共振のごとく、既に心を落ち着けた星獣たちに響き合う。そうして広がり始めた人と星獣のアンサンブルは、より多くの星獣たちの洗脳を解いていくのだった――。
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