共奏のオルトアース~ファイナルステージ~
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■4-1.道を拓いて星を墜とし
暗闇を湛える旧函館五稜郭――スターフォール。そこを中心にして、悲しみの連鎖は広がり続けていた。暴走する星獣、襲われる人々、止めようとするパートナーたち。
「だから、聞こえます。地球様の声が。苦しいと、悲しいと泣く声が」
天鹿児 神子はスターフォール外縁部で、パートナーたる星獣、ユーラシアの背を撫でた。
「わたくしのできることをやりましょう。実力は足らずとも、それでもわたくしは彼らの友なのですから!」
彼女の実力は他のアイドルたちに比べれば低いものだ。だが、それでも。はくまに次いで立ったのは彼女だった。
「ユーラシア、火炎放射を!」
せめてスターフォールへ行くものたちへの支援となれば。そう思って彼女は短剣を振るった。
数は多い。一人では対処しきれはしない――そう思ったその時、円筒形の光が立ち上る。ミーティアステージ、その中央では梧 双葉が半透明の翼をはためかせていた。
「RAKU! 行こう、私たちもあの子みたいに、道を開くんだ!」
双葉のパートナー、RAKUもそれに応えるように大きく遠吠えを上げる。夜明けを告げるトランペットが高らかに響き、その中をピッコロの音色が走り抜ける。
暴走した星獣たちもその様子を見てかこのステージに集まりつつある。神子が道を開き、双葉が残る星獣たちを引きつける。
そしてその活路を、闇を切り裂くようにして一陣の風が駆け抜けた。
「……よし、後はこのウサミ 先輩にまかせておけ! “彼女”を救うため、先陣を切るぞ!」
兎王と名付けられた馬の姿の星獣は、高らかに蹄の音を鳴らして疾駆する。
『きましたわね、わたくしよりも美しくないアイドルたちが!』
スターフォールの中央、まるで天使の如き威容の玲花が笑う。距離は遠い、しかしそれでも視線がかち合ったかのようにウサミ先輩も笑みを返した。遠間からのブリザードブレス、兎王から吐き出された凍風が暗闇の中を白く染め上げる。
『その程度の涼風で!』
巨大な爪による一閃は瞬く間に凍風を吹き飛ばす。幾度となく吹き付ける風は玲花には届かず、ただ視界を曇らせるだけだ。だが、
「ならこいつの暴風を味わいやがれ!」
ウサミ先輩の稼いだその時間、その間に懐へ潜り込んだ狩屋 海翔が、風を纏いながら手に持つ大剣を振るった。ゲイルワイバーンと一体化した彼はその風の力を利用しながら渾身の一撃を叩き込んだ。
『ッ……小癪な!』
彼女が爪で受け止めようとした途端、大剣はまるで蛇の如くねじれ崩れ爪から逃れ、裾を舞う触手に巻き付き切り裂いた。
姿勢を制御するためにも用いていたのか、触手を切り裂かれた彼女は金切り声を上げながら体勢を崩す。そして当然、それを逃す手は無い。
「共に行きましょう、シュトローム!」
上がった声は空花 凛菜のものだ。海翔同様、ゲイルワイバーンと一体化したことで風をまとった彼女は、乾坤一擲とばかりに突撃した。狙うはその胸、当たればひとたまりもない捨て身の一撃だ。
『そんなことをさせると思ってるんですの!?』
「それでも、私は貴女に抗います!」
星の結晶が一本の角を形作る。風の刃をまとったそれを、すんでのところで玲花は受け止めた。
「まだまだぁーっ!」
背にとりつけたジェットパックが火を吹き、体勢の崩れた玲花を更に押し込んだ。角はひび割れ、しかし爪を打ち砕いた。
『わたくしの美しい身体が――ッ』
今の彼女の力の象徴。美しき人ならざる姿。それは一つ、一つと砕かれていく。顔を押さえ屈辱に身を震わせる彼女の背に、
「ああ。そうだ。そして一度、全部失ってみたらどうだ?」
動揺につけ込むようにして、声が投げかけられた。声の主が手に持っていたのは星の光を吸い込むかのような闇を束ねた剣。このスターフォールに溶け込むようにそれはぐるりと振るわれ、
「本当に大事なものが何か、思い出せるはずだからね」
玲花の背に生えた三対を切り落とす。千夏 水希。それが彼女を地に落としたものの名前だった。
暗闇を湛える旧函館五稜郭――スターフォール。そこを中心にして、悲しみの連鎖は広がり続けていた。暴走する星獣、襲われる人々、止めようとするパートナーたち。
「だから、聞こえます。地球様の声が。苦しいと、悲しいと泣く声が」
天鹿児 神子はスターフォール外縁部で、パートナーたる星獣、ユーラシアの背を撫でた。
「わたくしのできることをやりましょう。実力は足らずとも、それでもわたくしは彼らの友なのですから!」
彼女の実力は他のアイドルたちに比べれば低いものだ。だが、それでも。はくまに次いで立ったのは彼女だった。
「ユーラシア、火炎放射を!」
せめてスターフォールへ行くものたちへの支援となれば。そう思って彼女は短剣を振るった。
数は多い。一人では対処しきれはしない――そう思ったその時、円筒形の光が立ち上る。ミーティアステージ、その中央では梧 双葉が半透明の翼をはためかせていた。
「RAKU! 行こう、私たちもあの子みたいに、道を開くんだ!」
双葉のパートナー、RAKUもそれに応えるように大きく遠吠えを上げる。夜明けを告げるトランペットが高らかに響き、その中をピッコロの音色が走り抜ける。
暴走した星獣たちもその様子を見てかこのステージに集まりつつある。神子が道を開き、双葉が残る星獣たちを引きつける。
そしてその活路を、闇を切り裂くようにして一陣の風が駆け抜けた。
「……よし、後はこのウサミ 先輩にまかせておけ! “彼女”を救うため、先陣を切るぞ!」
兎王と名付けられた馬の姿の星獣は、高らかに蹄の音を鳴らして疾駆する。
『きましたわね、わたくしよりも美しくないアイドルたちが!』
スターフォールの中央、まるで天使の如き威容の玲花が笑う。距離は遠い、しかしそれでも視線がかち合ったかのようにウサミ先輩も笑みを返した。遠間からのブリザードブレス、兎王から吐き出された凍風が暗闇の中を白く染め上げる。
『その程度の涼風で!』
巨大な爪による一閃は瞬く間に凍風を吹き飛ばす。幾度となく吹き付ける風は玲花には届かず、ただ視界を曇らせるだけだ。だが、
「ならこいつの暴風を味わいやがれ!」
ウサミ先輩の稼いだその時間、その間に懐へ潜り込んだ狩屋 海翔が、風を纏いながら手に持つ大剣を振るった。ゲイルワイバーンと一体化した彼はその風の力を利用しながら渾身の一撃を叩き込んだ。
『ッ……小癪な!』
彼女が爪で受け止めようとした途端、大剣はまるで蛇の如くねじれ崩れ爪から逃れ、裾を舞う触手に巻き付き切り裂いた。
姿勢を制御するためにも用いていたのか、触手を切り裂かれた彼女は金切り声を上げながら体勢を崩す。そして当然、それを逃す手は無い。
「共に行きましょう、シュトローム!」
上がった声は空花 凛菜のものだ。海翔同様、ゲイルワイバーンと一体化したことで風をまとった彼女は、乾坤一擲とばかりに突撃した。狙うはその胸、当たればひとたまりもない捨て身の一撃だ。
『そんなことをさせると思ってるんですの!?』
「それでも、私は貴女に抗います!」
星の結晶が一本の角を形作る。風の刃をまとったそれを、すんでのところで玲花は受け止めた。
「まだまだぁーっ!」
背にとりつけたジェットパックが火を吹き、体勢の崩れた玲花を更に押し込んだ。角はひび割れ、しかし爪を打ち砕いた。
『わたくしの美しい身体が――ッ』
今の彼女の力の象徴。美しき人ならざる姿。それは一つ、一つと砕かれていく。顔を押さえ屈辱に身を震わせる彼女の背に、
「ああ。そうだ。そして一度、全部失ってみたらどうだ?」
動揺につけ込むようにして、声が投げかけられた。声の主が手に持っていたのは星の光を吸い込むかのような闇を束ねた剣。このスターフォールに溶け込むようにそれはぐるりと振るわれ、
「本当に大事なものが何か、思い出せるはずだからね」
玲花の背に生えた三対を切り落とす。千夏 水希。それが彼女を地に落としたものの名前だった。