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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【クロスハーモニクス】機奏と箱庭の大決戦!

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【クロスハーモニクス】機奏と箱庭の大決戦!

リアクション

■深層まで届け、わたしたちのハルモニア 1


「さあ、いらっしゃい。私の前では皆等しく、可愛い子供なのですから」

 『偉大なる母』グランドマザーのライブが始まると、彼女から発されるディスコードが中央にあるアルカディアドライバーに取り込まれ、上空の2本のゲージのうち、赤色のゲージが上昇を始める。
「……伊達に、偉大なる母を名乗っては無いわね……!」
 そして、ちょうど反対側に位置するハルが、少し辛そうな表情を見せた。アルカディアドライバーの起動にはハルの持つコアメモリーが必要であるため、グランドマザーは再度、ハルを洗脳してアルカディアドライバーを起動させようと試みているのだった。
「ディスコードゲージの蓄積を止めるには、グランドマザーとのライブ対決で勝利する必要がある。それと同時に、アルカディアドライバーを守っている観客のD.D.をライブで感動させ、ディスコードの障壁を弱めなければならないね」
「つまり、ライブってわけだ! よーし、やってやるぜ!」
 ドクタークルークの分析を桐島 泰河がそのように解釈し、意気込みを見せる。
「子供は成長し、未来に向かって歩いていくの。その背中を見守るのが母親の役目よ。
 言っても分からないでしょうから――見せてあげる。人の成長と、人が創り出す未来を」
「あぁ、これが反抗期というものですね! 大丈夫、私はあなた達の“偉大なる母”……私の中で、お休みなさい」
 グランドマザーの放つディスコードがハルたちを取り込もうとするが、青い光――ハルモニアがそれを拒否する。
「――さあ、ショータイムよ!!」


(グランドマザー、D.D.たちのトップとなる存在……確かに、すごい実力の持ち主だと思う。
 でも、ぼ、私の夢を叶えるためにも、負けられない!)
 相沢 涼の視線がグランドマザーを捉え、次いで一緒にライブをする剣堂 愛菜へ向けられる。
「涼の夢は、ここで終わったりしないよ。行こう、グランドマザーにあたしたちのライブを聞いてもらおう!」
 互いに頷き合い、涼はロイ・アルバート、愛菜はメルリア・アガトルムとユニゾンを行う。二人の持つ芸器がハルモニアの光を放ち始め、頭上のハルモニアゲージも上昇を始めた。

 さあ行こう夢を目指して 世界は私を待ってる!
 自由守るため今できる精一杯響かせよう
 遥かな未来を切り開くために


 金管楽器の音色を響かせ、涼とロイが歌を重ねる。グランドマザーが母親の愛を歌うのを、その愛を肯定しつつも溺れるのではなく糧にして、より高みを目指して行く思いに変えて伝える。
「あぁ、いつの間にこんなに、大きくなって……」
 そう呟いたグランドマザーには、二人の思いが届いているようだった。さらに思いを届けるため、ユニゾンしたメルリアのフレームと共にアクロバティックなダンスを披露しながら、大技の用意を行う。それは涼も同様であり、二人の周囲にハルモニアが凝縮されて集まっていく。

 (ハーモニードリーム)
 私の前に広がる世界は暗雲が広がるけど
 恐れずに進めばいつかより良い未来に行けるよ


 曲がサビに突入した時、まず涼がその蓄えたハルモニアを放出し、自身と愛菜、メルリアがユニゾンするドールに空を浮遊する力を与える。

 (レッツ、ゴー!)
 さあ行くよ夢を目指して 世界は私を待ってる!
 遥かな夢を抱いて奇跡を起こそう


 次いで愛菜のハルモニアが解き放たれ、観客D.D.もまた浮き上がりながら、二人が飛翔する空中に青空の幻影を見る。観客D.D.の気持ちが涼と愛菜のライブに向くことで、いまこの場においてはハルモニアがディスコードを上回る勢いを生み出していた。

 リベレーターズ!!

 フィナーレは弾けた光の粒がステージに散る中、空に大きく『Blue Sky』の文字が描かれる。観客D.D.はハルモニアの共振によって自然と手拍子を打ち、グランドマザーもこの対決では自身の敗北を認めたのか、歌うことを止め微笑みを湛えていた。
 結果、ディスコードゲージの上昇が一時的に抑えられ、その間ハルモニアゲージが上昇していた。


 スポットライトがなくても
 音響施設がなくても
 私が歌い踊るなら そこは既にステージ


 ディスコード障壁を張ってアルカディアドライバーを守る観客D.D.に、アニー・ミルミーン藍屋 あみか愛宕 燐、3人の歌声が重なり響き合う。放たれたハルモニアが観客D.D.に感動を呼び起こし、子供が親の手を離れ自由に飛び立つ姿を想像して涙を流す。

 The DIVA Who Sang ”FREEDOM”
 この歌で伝えるのは フリーダム!


 張り巡らされたレーザー光に触れ、音を奏でながらのアニーのソロパートへと移り、自由を望むハルモニアと引き留めようとするディスコードがぶつかり合う。あちこちで一進一退の攻防が繰り広げられ、結果としてはほぼ半々、といったところだった。

 きみの歌は それでいいの?
 きみの愛は それでいいの?


(母として、一人一人の顔を……生きてるひとも亡くなったひとも、顔を見たことありますか? 存続のために個々の心を奪った“人類”は、どこに向かうのですか?)
 D.D.を責めるのではなく、あくまで落ち着いた佇まいで、あみかが観客D.D.に自らの存在を問うように歌う。こちらも状況としてはほぼ互角であり、まだ観客D.D.が完全に感動したわけではなかった。

 母の懐の元で 暖かい眠りにつく
 その日々は今 終わりにしましょう


 そして燐が、別れの悲しみではなく温かみ、前向きな雰囲気で歌った時、均衡が崩れた。
「あぁダメ、こんなに可愛い子を置いてはおけないわぁ」
 感涙にむせぶD.D.の視界には、「行かせて、お願い」と上目遣いで懇願する子供の姿が見えていた。ハルモニアがディスコードを押し込みつつあったところで、曲は最後、再び三人のパートへと進む。

 私達の歌は心の鎖断つ歌
 皆で伝えるのさ フリーダム!

 フリーダム!
 フリーダム!
 …………


 ライブが終わり、既にディスコードを発することができなくなってへたり込んでいる観客D.D.たちへ、燐が歩み寄って声をかける。
「私は、貴方のやってることが全て間違いとは思わない。だって、この世界を助けたいという私たちと同じ気持ちがあったんですもの。だから……」
 顔を上げた観客D.D.たちへ、ぺこり、と燐が頭を下げて言う。
「この世界を救おうとしてくれて、……ありがとう」
「……いつの間に、いい顔をするようになったのね。……こちらこそ、ありがとう」
 観客D.D.が安らかな笑みを浮かべた――。


「最初は、この世界を割と心地よく思っていた。望まぬ生まれが無くなるならそれも、と。
 ……でも、今は違う。この身があって、そして皆もいる今こそ、最も守りたいものだと分かったから」
 グランドマザーの向かいに立ち、微笑みながらそう口にした天草 燧が、合歓季 風華の持つ人形型のマイクへユニゾンする。人形の目が開き、燧の特徴を模したそれが浮き上がり、風華をサポートするように周囲を飛び回り始める。
「……そのつもりは無いのかもしれない。だが、人間を愚弄するのもいい加減にしてもらおうか。
 俺たちはそこまで弱くはない。今からそれを、証明する」
 同じく、グランドマザーへそう口にしたウィリアム・ヘルツハフト虹村 歌音のギターへユニゾンし、ハルモニアの光を放ち始める。それぞれの思い、そして力の篭った芸器を手に、歌音と風華がタイミングを合わせ、『巣立ち』をテーマにした曲を演奏する。

 Fly to the Future さあここから飛び立とう
 The Sky’s to the new world 果てしなく続く空へ
 今こそ巣立ちの時
 最初の一歩 勇気出して踏み出そう



(歌は人を楽しませるもの。そして想いを解き放つもの!
 どんなに強い意思があったって、聞く人の心を消し去るディスコードになんて、絶対負けないんだから!)
 まず歌音は、向かい側でライブを続けるグランドマザーのメロディを活かし、観客D.D.に『母の下の安心感』を聞かせる。共感を得たように観客D.D.が頷くのを見て、風華が会場に静けさをもたらし、どこか懐かしさを感じさせる風を吹かせる。自らの想いを無くしたまま、今は亡き者たちを思い起こさせる演出に動揺が走ったところで、曲調が『母のゆりかごからの自立』そして『自由を求める心』を歌うものへと変化していく。

 We can do with freedom
 心のまま 思うまま
 We can go anywhere
 どこにだって行けるから


 風華が音の出るキューブを横一列に並べ、その横を添い歩きしながら触れることで飛び立つ星々を描き出す。ひとつ星が空へ飛び立つたびに空間が振れ、それは感動を呼び起こす揺れとなって観客D.D.に、グランドマザーに向かう。
「どこへ行くというのです? あなた達が戻ってくるのはここなのですよ」
 グランドマザーの放つディスコードも、その飛び立つ星を引き留めるには至らない。周囲に散らばり飛び回る星が多くなるにつれ、ディスコードの勢いが弱められハルモニアが空間を満たしていく。

 届けたい想い抱いて 世界へ羽ばたこう
 Leave the Nest!


 ライブによって一時的に自らのディスコードを抑えられ、ただ立ち尽くすグランドマザーへ、風華が言葉を送る。
「この地で死した者を思ったことありますか? 一少女として、お人形遊びからやり直しませんか?」
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