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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【クロスハーモニクス】機奏と箱庭の大決戦!

リアクション公開中!
【クロスハーモニクス】機奏と箱庭の大決戦!

リアクション

■深層まで届け、わたしたちのハルモニア 3

 ステージに登場した空莉・ヴィルトールが、子猫の姿でステージ上を駆け回り、にゃあ、にゃあ、と観客D.D.へアピールを行う。
「あら、かわいいわ~」
 観客D.D.の慈しみの対象は、猫になった空莉に対しても発揮されていた。そうして十分に観客D.D.に自分の姿を見てもらったところで、変身を解いた空莉が頭上の光輪の力を解放、会場に純白の光の十字架を出現させる。
「これは、私の感謝の証だよ。どんな姿でも、形でも、愛して貰えるって幸せだから♪」
 十字架を使って自分の歌を会場中に届けた空莉の背に、一対の長くしなやかな光の翼が伸びる。
「……でも、私、行かなくちゃ。ありがとう、今まで私を、育ててくれて」
 ふわり、と空に羽ばたき、光の軌跡で宙にハートマークを描いてから、空高く飛び去っていく。後に残された観客D.D.の中には、子の巣立ちを感じてはらはらと涙を流すものも居た。


「もう、萌夏ちゃん、どこに行ってたの? 外は危ないから家に居なさい、萌夏ちゃんにとってもそれが一番いいと思うわ」
 子供を溺愛するあまり、いつまでたっても子離れができない大人を演じる八上 ひかりが、子供役である川村 萌夏に過保護っぷりを披露する。
「ううん、違う。あなたは子供のためと言っているけれど、そうじゃない。そう言っているのは自分のため。
 あなたは大人だけど、大人になりきれていない。私を縛るな、いい加減、大人になれ!」
 しかし、大人びた性格の子供にピシャリ、と言い切られ、はぅあ、とよろめく。するとひかりの向こうの観客D.D.も、同じようにはぅあ、とよろめいた。
『子供はいつか、大人になっていくわ。そして、親とは異なる人生を歩んでいく……。
 それこそが、自然な人間の営みなんじゃないかしら』
 萌夏の握るマイクにユニゾンする長澤 瞳が、よろめきから復活した観客D.D.へ視線を向けながら心に呟く。
「萌夏ちゃん違うの、私は心の底から、萌夏ちゃんのことを思って――」
「思ってくれるのは嬉しいし、思ってくれることを否定したいわけじゃないわ。あなたがちゃんと私のことを思っているならこんなこと言わない。だけどあなたはちゃんと私のことを思ってない。思ってないから私を軽んじた発言をするの」
 なおも抵抗するひかりに、またもや萌夏の鋭いツッコミが突き刺さり、ひかりと観客D.D.が崩れ落ちる。
「ふぇーん、萌夏ちゃんがいじめるぅー」
「子供か! ほら、鼻水出てるちゃんと吹いて」
「ぐすっ……萌夏ちゃんごめんね~」
 最後には泣き出してしまったひかりと観客D.D.を、萌夏とひかり、ユニゾンを解いた瞳が手分けして介抱する事になってしまった。まぁそれでも当初の目的は果たされたのであったが。


 グランドマザーの放つディスコードは、これまでのどの相手よりも強力であった。周りの観客D.D.も生半可なライブでは感動させられないまま終わってしまうほど、結束力が強かった。

「たとえひとりでは負けてしまう力であっても、みんなが集まって共演すれば、共振したハルモニアはきっとグランドマザーや観客D.D.に届く! 私はそれを、ここで教えてもらったわ!」

 そんな相手に対抗するため、ハルが自らのハルモニアを用いて、ライブを行う者たちが共演した時にハルモニアが共振しやすくなるように波長を揃える。
「さあ、行きましょう!」
「ひとりでも可愛いのに、たくさん群れてくるなんて……可愛すぎて倒れてしまいそうよ」
 何やら悶えているグランドマザーと観客D.D.へ、合わさったハルモニアが飛んでいく――。


 眠っている胸の奥
 懐かしい面影を
 忘れない真実が キラキラ光る

 情熱は夢の中
 目が覚めてセピア色
 鮮やかに駆け抜ける 無垢の魂 oh……

 世界を旅する 誰でも開く扉
 失意も挫折も終わらせない

 叶わぬ愛 ときめきハートブレイク 解っていても
 想い届かぬ叫び
 時の狭間 音色は響く あなたの答え
 確かめられなくとも 無限の未来


 桐山 撫子の紡ぐ歌が、ディスコードに吹き飛ばされることなく拮抗する。
(撫子は、『音楽は極論、大気の振動に過ぎない』と言っていたわね。……ただこうして青い光と赤い光とが激しく散らし合っているのを見ると……それだけじゃない気もしてくるわね。私も法則は無視できないと思っている側だけど……)
 撫子とハルを護れる位置に立ちながら、ウィンダム・プロミスリングが目の前の光景に思うことを呟く。


「――さあ、プロデュースを始めようか」
 照らされたステージに、ギターを構えた迫水 晶が立つ。
(人類の母を名乗るD.D.――母として子供の事を考えているのは素晴らしいが、子供とて母や父を支えるものだ。
 ――だからこそ支配ではない……プロデュースで彼女たちに知ってもらおう。互いに支え、歩む「未来」を)
 その想いを胸に、過去から未来へ、共に歩むことをテーマにした曲を披露し、ハルモニアと想いの熱を伝える。

 願い続けて 願い支えて
 未来への道しるべ 描き続けて

 (Future……)

 さあ 輝く未来へ……


 曲の終わりに、観客D.D.へ手を差し出す。
「私たちが、プロデュースしよう。さあ、未来へ」


(人が全て子供にしか見えない貴方を、僕は人ではなく、一つの命として否定する)
 落ち着いた優しい音色にハルモニアを乗せ、烏墨 玄鵐が過去と未来を繋ぐ歌を歌う。

 水は命奏ぐ粒へ変わり 大地に導(しるべ)示す

 氷の粒が、歌が持つ儚さを彩る。そこから熱を込め、興奮を呼び起こすように歌い、演奏する。

 痛みから逃げないで
 星の夢辿ってその先へ 飛び立つ

 孤独の苦しみも 立ち上がる力にして
 瓦礫の荒野の中 高らかな黎明を
 過去に変わるまで 巡り続けて
 曙と黄昏越えて 詩(うた)おう



「ユズキ。少し、いいですか?」
「ん? どうしたの、唯」

 ステージに立とうとする渋谷 柚姫へ、後ろから羽鳥 唯が声をかける。
「私は、ユズキに会えて、研究所から連れ出してもらえてよかったと思っています。あのまま眠っていれば、何の苦しみもないかもしれない。ですが、大好きな時代劇にも会えなかったはずです」
「……はは、なんだか照れるなぁ。……うん、私も唯に会えて、良かったって思ってるよ」
 互いに少しの間、笑い合って、そして改めて向き合う。
「ずっと安全なゆりかごの中、それもいいかもしれませんが……私は嫌です。さぁ、D.D.に印籠を渡してあげましょう! ひれ伏させるのです!」
「印籠! 引導、じゃないかな?」
「…………い、いいんです! ほら、行きますよ!」
 柚姫のツッコミに顔が赤くなったのをごまかすように、唯がギターへユニゾンする。
「……ふふっ」
 青く光を放つギターを見つめ、微笑んだ柚姫がステージへ上がる。
(そうだなぁ……異世界なんて冒険する日が来るとは思ってなかったけど。
 夢だった巨大ロボットにも乗れた、一緒にライブする人、『秘密』を共有した人……いろんな人とも会えた。
 来た時よりもずっと、僕も成長してるんだ!)
 そうして得てきた情熱をすべてこの歌に込める――その想いを胸に、柚姫が声を張り上げる。
「折角のライブだし、楽しんでいこうよ! 掛け声、お願いね!」

 「Wake up! Grow up!」


 鮫谷 此白が演じるは、籠に捕われた鳥。再び空へ戻ることを願いつつも、籠の中の暮らしに慣れ、そこから出ることへの恐れを抱いている様を全身で表現する。

 いついつ出やる
 籠目に囚われ あなたの刻は止まったまま


 そこへ仲間の、自分を励まそうとする歌が聞こえてくる。そう、この翼は自由な空で生きるためにあること。此処が、己が本当に居るべき場所ではないことを改めて知る。

 さぁ あなたの持つ羽で お発ちなさい あなたを待つ空へ

 いよいよ鳥は籠から出ることを決意し、合わせて此白も翼型のユニットを広げ、ブレスの力で空へと浮き上がる。笑みを浮かべながら空を舞い、未来を自分で、自由に選ぶことの素晴らしさを表現する。

 ゆっくりでいいよ 気の向くままに飛んで行こうか

 最後はブレスの余韻を残して飛び立ち、後には輝く白い羽根が残される。
 観客D.D.は子の旅立ちに感動し、涙を流しディスコードをそれ以上生み出さなくなっていた。


「ねぇ、ママ。お願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?」
 これまでライブによって、抵抗した挙句に感動させられていた観客D.D.だが、小羽根 ふゆのこの申し出はそれまでにないアプローチであり、しかも『母』として『子供』を甘やかしたい特性を持つD.D.にとって、これは断れるはずもなかった。

 ――そして、D.D.はふゆに、膝枕を受けていた。
「あの~、これはいったい、どういうことなんでしょう?」
「私も甘やかしたいタイプだから、かな。……ねぇ、子供はいつか、ママになるものよね? ママはその手本になるものだと思うの。私もいつか、ママみたいな立派なママになれるかな?」
 そしてこの言葉である。ここまで言われては、『母』として『子供』に手本を示さないわけにはいかない。

「ねえ、あれを手本にすれば、グランドマザーにはダメだったけどD.D.になら、効くんじゃないかな?」
 ふゆとD.D.の一人のやり取りを目の当たりにした加宮 深冬が、ノエル・アドラスティア沙羅科 瑠璃羽に示す。当初はノエルが『グランドマザーにライブ対決で『ワタシたちの母性』を叩き付ける!』と意気込んでいたのだが、それはあえなく撃退されてしまった。
「……そうね。観客のD.D.もグランドマザーの一部。カノジョの『人類の母としての矜持』を揺るがし、『人類に甘えたい』と思わせられれば、グランドマザーに対しても同じ思いを抱かせられるはずよね。
 深冬、瑠璃羽、リベンジよ! 次こそ『母』を『子』の立場へ誘導してやりましょう!」
「心得ました。では私は先程同様、子守歌を歌うことで支援いたしましょう」
「よーし、今度こそ! D.D.たち、今度はあなたたちが、人類に甘える番だよ」
 一度は敗れたものの、見本を見つけられたことで要領を得た三人は、次々と観客D.D.をバブみの域へと誘い込んでいった。


「グランドマザー。俺はハルの父であり、お前の夫でもある。お前が母の気持ちを持つのなら、俺はそれ以上、夫と父の気持ちを持っている」
「……そ、そういうことみたいよ! 思いの大きさは私たちの方が上ね!」
 そして、グランドマザーに対しても、ライブで打ち負かすのではなく別の方法で無力化を図るものとして、死 雲人がハルを連れてやって来た。そう、彼の最終目的はただ一つ――グランドマザーを彼のハーレムに加えることである。
「妻と娘を愛する気持ちを……俺はこの曲に込める!」
「これは……母と子だけではない、そう、家族愛……!」
 自分よりもスケールの大きい『愛』に直面したグランドマザーの動きが止まる――。


(愛故に……父が如き神様と、母が如きプログラムは凶行に走った。
 故に示そう……子は、人は、親元を飛び立ち明日を、未来を紡げるということを)
 ネヴァーランドでの神様の振る舞いを思い返しながら、堀田 小十郎が誓いを詠む。

 祈りはここに、誓いは剣に……遍く光(アイ)は全ての人に

「悪いな……俺の情熱は、ゆりかごには納まらねぇんだわ。
 覚悟の炎、魅せてやるぜ……D.D.!」
 数多のアイドルに抑えつけられてなお、ディスコードを発し続けるグランドマザーを見据え、睡蓮寺 陽介睡蓮寺 小夜へ向き直る。
「両親から学んだ大事な事……魅せてやれ、小夜!」
「うん……お願いします、兄さん……!」
 小夜のギターに陽介がユニゾンし、ハルモニアの青い光を放ち始める。

(母から貰った歌を……
 父から貰った情熱を……
  わたしが抱いた夢を……
     皆で紡ぐ青春を……!)

「みんなの笑顔が、見たいから……!」

 小夜の吹き出すハルモニアが、小十郎とハル、泰河を空へ舞い上がらせる。
「我が想い、剣に乗せて届けよう。泰河もやれるな?」
「あぁ、もちろんだぜ!」
 小十郎と泰河がグランドマザーの両側から、演武の如き振る舞いで演奏を行い、生み出したハルモニアで迫る。中央は小夜とハルが『出会うことが出来た学友達との日々を大切にしたい』という共通の想いを込め、歌う。

 もっと もっと 歌いたい
 皆と紡ぐ 青春賛歌を
 
 もっと 一緒に 奏でたい
 わたし達だけの アンサンブルを



「こ、これが、人の……我が子の可能性……!
 ……あああああぁぁぁ!!」

 人が魅せる、神をも超えた人だけの力。それを目の当たりにしたグランドマザーがついに膝を屈し、力尽きると共にディスコードの放出も完全に収まった。
「「「もう、バブみゼロですわ~」」」
 観客D.D.も今のライブで完全に力を失ったようで、アルカディアドライバーを護っていたディスコードの障壁が消滅していた。
「よし! これで後は、アルカディアドライバーを起動させるだけね」
「でも、どうやるんだ? ……あっ! ハルモニアゲージが!」
 泰河が指差した先、ハルモニアゲージがほんの少し、限界に足りていなかった。ディスコードゲージは減少を続けているので問題は無いだろうが、このままではアルカディアドライバーの起動という目的を果たせないだろう。

「おい、ホントにこっちで合ってるのかよ?」
「間違いない、スピカもそう言っている」

 と、その時、外から複数の足音が徐々に近付いてくる。やがて先頭を切って現れたのはイザークアンバー・ベースであった。
「すげー広さだなこりゃ……おっ、ハルじゃん! おーい!」
 パワードスーツの腕をぶんぶん、と振るアンバーの元へ、ハルが駆け寄る。
「アンバー! 無事だったのね、よかったわ」
「へっ、オレがアイツらに負けるとでも思ったか? ……なぁ、それよりママはどうなっちまったんだ?」
「向こうにいるわ。ここの人たち同様、力を使い果たしちゃったみたい。しばらくは起きてこないと思うわ」
 ハルが示した先をアンバーも見れば、へたり込んでいるグランドマザーが視界に入る。
「……そうか」
 形容しがたい表情をアンバーが見せる。
「ねえ、お願い! このままだとアルカディアドライバーが起動できないみたいなの」
 ハルがアンバーとイザークへ、事の経緯を説明する。
「……なるほど、理解した。リベレーターももうじきやって来るはずだ、彼らに協力してもらうとしよう」
 直後さっそく、リベレーターたちがステージに集まってきた。彼らにも先程同様の説明がなされ、彼らは快く協力を約束する。
「ヒャッハー!! 誰にも邪魔はさせねぇぞ!!」
 リベレーターの音楽がハルモニアを生み、それらはアルカディアドライバーへと取り込まれていく。
「あと少し、あと少し……! 来た!」
 ハルや泰河、皆の目の前で、ついにハルモニアゲージがMAXへ到達した。
 ハルモニアの光を振り撒きながら、アルカディアドライバーが起動を始める――。
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