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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

セブンスフォール クライマックス×キラフェス2027!!

リアクション公開中!
  • セブンスフォール クライマックス×キラフェス2027!!

リアクション

【2-4】

 次のライブは、他のアイドルたちとはかなり演目の傾向が違っていた。
 ヘレン・ラビットが【蜘蛛糸の綾取り紐】に提灯を下げ、まるで木に浮かんだ明かりのように操る。
 妖しい紐の動きは、観ているアイドルたちを楽しませてくれた。

「ボクの歌がどこまで力になるか分からないけど、少しでもプラスになればうれしいなー♪」

 ヘレンはくるくると踊りながら楽しげに歌を口ずさむ。
 【奔放な風】に身を任せた後、【浮遊転身】で着物をはためかせ、ドリアディナの上から脱ぎ捨てる。
 その着物を【神獣覚醒】した神獣の背に乗って現れた空花 凛菜がキャッチした。
 ヘレンと共に歌いながら、【クリアボイス】の澄んだ歌声を響かせる。
 勇敢で前向きな曲は、観ているアイドルたちを思わず奮起させるメロディーだった。

(この歌が、ほんの少しでいい、リンアレルさんの力になれたら嬉しい……!)

 凛菜がリンアレルの方を見ると、満面の笑みでこちらに笑顔を向けてくれていた。
 自分が役に立てている、それだけで凛菜は十分だった。
 そして、幹の裏側から登場した枢木 くくるが、呪文でジェムを起動し【エアロポルタティフ】を出現させる

「おいで……一緒に楽しもう……?」

 【オープニングナンバー】を奏でる【エアロポルタティフ】は、くくるの演奏技術の高さを思わせる音色だ。
 ヘレンと凛菜を引き立たせるだけでなく、くくるはソロのアーティストとしての才覚を存分に発揮し、気がつけばアイドルたちは皆、体中でリズムを刻んでしまっていた。
 アイドルたちのライブの相乗効果が生む、プラスのエネルギーを感じたくくるは、これまでにない高揚感に身を任せた。

「みんなを狂わす哀しい歌……音楽は楽しいのに……。もっと、この楽しさを伝え届けたい……」

 くくるが言うと、ヘレンと凛菜も同じ気持ちだったのだろう、

「うん……私達も今、すごく楽しいし、気持ちいい!」

 誰にも疲労感を感じさせることなく、3人のパフォーマンスは続いたのだった。
 これで終わりと思いきや、透明な【エアロポルタティフ】を演奏する氷堂 藤の音色と共に、日下部 穂波が声劇を歌い始めた。
 和から洋への演出効果に、アイドルたちはほうっと溜め息をつく。
 2人が演じるのは、悪しき龍の心を癒す少女の話。

「見よ!勇ましい少女の勇士を。彼女こそ、慈愛の権化であり、正しきを為すものなり」

 藤の演奏に合わせて、穂波は歌詞をセリフのように歌う。

「まるでオペラみたい……セブンスフォールでまさかこんなライブが観れるなんて……想像もしなかった」

 いろはがきゅっと口を結んで、食い入るように穂波を見つめる。
 内容としては少女を害そうとする龍を癒し、元の神聖なる龍を取り戻すというストーリー仕立てになっていた。
 エンターテインメントに携わる者であれば全幕を振り付けありのオーケストラで是非観てみたいと思ってしまうはずだ。
 おもむろに藤がリンアレルの側へと歩み寄り、穂波が謳う物語に合わせて【エアロポルタティフ】を【アンプロンプチュ】で弾いた。
 寄り添うような声色で歌う藤と穂波の二重奏に、ノーラ・レツェルの【ハミングソング】が加わり、トリオとなる。
 ノーラが【レインボーマイスター】で枝の上を歩くたびに虹を作り出し、声劇の世界観とマッチした雰囲気を作り出していた。
 ティーネファル・ファリガミァンのそばで虹を発生させたいと思ったノーラだったが、

(僕たちを神獣の攻撃から守ってくれる人がいてくれるおかげで、こうやって声劇が演れるんだ。歌に集中、集中……!)

 自分には、自分にできることをしよう――それが、ウタのパワーをより大きくする。
 お互いに不可侵領域があることを信じて、あえて彼には近づかなかった。
 ティーネファルは、アイドルやリンアレルたちに干渉を始めた神獣の攻撃を【スケイルシールド】でなんとか受け止める。

「ったくよぉ、終わるまでおとなしくしてられねェのかって話なんだよっ!」

 そして、彼はリンアレルのすぐ手前で【ハートオブナイト】を発動させた。

「てめえ……リンアレルには指一本触れさせねェからな」

「……あなたは、真の騎士道精神をお持ちですね」

 か細い声ではあったが、歌の合間にリンアレルが言った。

「あぁ? んなもんねェけど……戦う力のねェ奴らをほっておく精神もねェんだわ。出来る範囲のことしかやんないが、やれるだけはやってやるよ」

「はい……ありがとうございます」

 リンアレルの屈託のない笑顔に、ティーネファルはぽりぽりと頭をかいた。

「ふふふ。それじゃあ……神なる獣すらも、ボクらの虜にさせようか!」

 穂波たちの演奏に更なる熱意がこめられる。
 ノーラのドレスに釣られて、数羽の鳥たちが集まってきていた。
 さながら、ライブハウス「ドリアディナ」の小さな観客といったところか。

「君たちも一緒に、リンアレルの応援してくれるかな?」

 その声に反応するように、鳥たちはピイピイと鳴くのだった。

「……あなたたちに、会えてよかった。皆さんがいなければ……私は今、ここにはいなかったでしょう。どんなにお礼を述べても言い尽くせませんが……これが、今の私にできるすべてです……!!」

 ソング・オブ・シング。
 アイドルたちのライブが持つ大いなる無限の力が、リンアレルへと届いた瞬間だった。
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