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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

夢見る少女のエキサイト・クリスマス

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夢見る少女のエキサイト・クリスマス
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リアクション

【3】I wish you a merry Christmas……


 リンアレルの夢はすっかり安定した。
 未完成だった場所も今やしっかり完成し、そこここで楽しい時間が流れている。



■二人だけの■


 天導寺 朱梓弓 莉花は、とあるクリスマスマーケットにいた。
 吐く息は白いが、降る雪は温かい。
 やはりここは、夢なのだと思い知らされる。
 
 マーケットのすぐ裏には、イクスピナの灯りが見える。
 記憶の中の地図とは全く一致しないが、ここはあの時の――去年二人で訪れた、クリスマスマーケットのようだ。
 単なる何かの偶然なのか、はたまたクリスマスの奇跡なのか……それは誰にも判らない。

「莉花」

 白い息を吐きながら、朱は真顔で足を止める。
 
 朱と莉花は互いに想い合っていたが、一人前のアイドルになるまでは、恋人としては付き合わない約束をしていた。
 
 自分達はもう、一人前になっているのではないか――
 
 朱はそう感じていた。
 だからクリスマスの今日、莉花と会って、きちんと話したいと思っていた。

「朱さん! 見て下さい、あれ!」

 莉花は雑貨が並ぶワゴンに駆け寄った。
 朱のまっすぐな視線から逃げたかったこともあったが、何よりも莉花に刺さったのは、かわいくディスプレイされたルミマル柄のペアのマグカップだった。

「去年のと全然雰囲気が違ってて、あの柄もかわいいですね」

「うん。確かにそうだな」

 去年、ワゴンでペアのマグを買った二人は、今年もまた、ペアのマグを手にレジへ向かう。


 会計をした店員が、朱と莉花を見ると嬉しそうに目を輝かせた。

「お二人って、もしかしてフェスタのアイドルさんじゃありませんか?」

「「えっ!?」」

 店員が顔を知っていたこと、それは二人が、アイドルとして成長したことを十分に示している。
 朱が望んでいたその事実が(夢の中とはいえ)客観的に突き付けられた。
 
 二人はなんとなく歩いているうちに、とうとうイクスピナに着いてしまった。
 それにしても先ほどから誰とも会わない。
 広い広場に二人きりだ。

「……知ってますか?
 ここ、時間になったら噴水が上がって、
 イルミネーションで、素敵に色づいて……今なら特等席で見られますね」
 
 莉花が言った途端、二人の真後ろで噴水が上がった。

「すごいのぜ……」

 噴水は、本当に美しかった。
 しかし朱はどこか上の空だ。
 
(やはり俺から切り出した方がいいかな)

 そんなことを考えながら、噴水に見とれている。

「噴水ばかり見てないで、こっちを見てもらえますか?」

 少し背伸びをした莉花の、声と、白い吐息が近づいて来た。

「莉花?」

 二つの白い吐息は、どちらがどちらのものかもはや区別がつかぬほど近づき、噴水がさらに高く高く上がり……

 …………そのあとは、二人だけの秘密。



■夢の煌めき■


 ノーラ・レツェル迫水 晶は手をつなぎ、フェスタの周辺を散策している。
 すでにあれこれ散策し、ここに辿り着いた。
 そろそろ目覚めるのではないか、お互いそんな風に予感していた。
 
「それにしても、フェスタってこんな場所だったっけ?」

「現実とはまた違った、幻想的な光景だな」

 地形も微妙に違うし、どこもかしこも綺麗なイルミネーションに彩られている。
 向こうには、クリスマスツリーのように飾りつけられたユグドラシルが見える。

「綺麗だねぇ」

 ノーラは、巨大なユグドラシルツリーを見上げる。

「わ、ととっ」

「危ない」

 晶は繋いでいる手をぎゅっと握り、ノーラの身を引き寄せた。

「エスコートって、照れるねぇ。お姫様扱いをされている気分だよぉ」

 恥ずかしそうなノーラの横顔を、晶は優しく見つめている。
 今日の晶は、以前二人で遊園地を歩いたあの時よりも、一歩踏みこんだエスコートをしている。
 プロデューサーとしてでなく、一人の男としてエスコートする、そう心に決めていた。

「それにしても、誰もいないねぇ」
 
 ノーラが辺りを見回した。
 先ほどから、誰にも遭遇しない。
 現実にこんな素敵な場所があったら、さぞ大勢の人間でごった返しているっことだろうに。

「さすが、夢の中だな」

 晶は苦笑いして、盛大なイルミネーションを眺めて呟く。

「だが、この煌きはきっと、心に刻まれる」

「うんうん。だって綺麗だもんねぇ」

 ノーラがのんびりと笑う。
 
 ――そう。ここは夢の中だ。だから……
 
 覚悟を決めた晶は、繋いだ手に力を込め、真顔でノーラを見つめた。
 
「ノーラくん」

「ん?」

 ノーラは無邪気に首をかしげてくる。
 お互い、目覚めの予感はどんどん強くなっていく。
 
 ――最後まで聞こえるかわからないが、君にこの言葉を。
 
「私は君のことが――」

 今まさに目覚める、そんな瞬間。
 晶は、心からの気持ちをノーラに告白した。

 …
 ……
 ………
 
 目覚めたノーラは、ベッドで首をかしげることとなる。

「晶くんから何か言われた気がしたんだけど……ぼくのことが……?
 続きは何だったのかなぁ」

 細かいことは思い出せずとも。
 心に刻まれた煌めきは、ノーラの胸の奥できらきら光る。

「ふふふっ」

 ノーラは、何とも説明し難い、幸せな気持ちに包まれている。



■ハルフジ~ツリーの下の誓い■



 木戸 一晴氷堂 藤は、裏山の、ユグラシドルの真下にいた。
 ユグラシドルは、飾られ、光り、巨大なクリスマスツリーと化している。

「すごい、ツリーおっきい……!」
 
 藤が身を反らすようにして、巨大なユグラシドルツリーを見上げる。

「凄いけど……見上げてると首疲れるなこりゃ」

「確かに疲れるけど、下から見るのも綺麗だね」

 藤は楽しそうだが、
 
「あー……そんでまあ」

 一晴はどこかそわそわしている。

「ハル?」

「ええっと……」

「??」

 一晴が、そっと藤に身を寄せた。
 隣り合った二人の、肩と肩が触れる。

「藤――」

 そのまま腕と腕がくっつく。
 不思議な温かい雪が降っているが、夜の裏山は、それなりに寒かった。
 だから、くっつけばくっつくほど、暖かかった。

「今年も一緒に居てくれてありがとう。その……結構助かる……」

 藤は彼の体温を感じながら、猫のようにすり寄った。

「……ん、私も。今年も一年、隣りにいれて楽しかった」

 肩を寄り添わせて立つ二人は、さらに体重を預け合う。

「出来れば、これからも、此処を卒業してからも一緒に居てくれると、嬉しい」

 藤はちょっと首をかしげる。
 一晴があまりにも当たり前のことを言っているので、不思議だったのだ。

「一緒にいるよ。これから先も、ずーっと。来年も一緒にツリーみよーね」
 
 ――貴方になら、永遠を誓ったって構わない。
 
 その言葉はまだ胸に秘めたまま、
 このままもっと踏み込んでしまおうかと考えあぐねながら、

「ハル」

 藤は、一晴の肩におでこをくっつける。



■初代奇怪事研究倶楽部はソリの上■

 
 はるか上空を、光るトナカイに牽かれた【不思議なソリ】が飛んでいる。
 乗っているのは、橘 樹宇津塚 夢佳
 ソリには、イクスピナで調達したお菓子が積み込まれている。
 しかしこれは、良い子に配るものではなく、二人で楽しむためのものだ。

(聖夜にろくにプレゼントも配らず二人の時間に没頭する……
 さしずめ、悪いブラックサンタって感じだな)

 トナカイのたずなを握っている樹は自分をそう評し、はははと笑う。
 
 樹の横の夢佳は、夢佳らしいアレンジをきかせた、ブラックサンタの姿だった。
 サンタさんを待っている良い子が見たら、怖がって泣いてしまうかも知れない。
 しかしここは遥か上空。
 しかもリンアレルの夢の中。
 誰にも迷惑はかけていない。
 
「ブラックサンタは、悪い子を攫うっていう伝説もあるよね。
 つまり僕は夢佳さんを攫う……?
 でも夢佳さんもブラックサンタの格好だから、夢佳さんも僕を攫う……?」

 眼下に広がる夢の世界は壮大で幻想的。
 しかも今夜はクリスマス。
 夢佳と二人、空の上。
 樹はこの特別な状況に呑まれ、饒舌になっている。

「心ならいっつも奪われてるけどね、えへへ」

 樹がやっとしゃべり終わったのを感じ、夢佳は微笑んだ。

「そもそも今夜、たずなを握っているのは樹さまでございます。
 よってわたくしは樹さまを攫ったりできません」

「ふ、ふはははは。よぉし、攫っちゃうぞ、夢佳さん」

 樹が悪びれた声を出し、ワイルドにトナカイを旋回させる。

「それは面白い。さらいさらわれますのもまた一興でございます」

 ブラックサンタの夢佳が、くくくと笑う。
 
 ソリの真下に、クリスマス飾りと光に彩られた、巨大なユグラシドルツリーが見えてきた。

「樹さま、そこからご覧になれますか? 圧巻でございますよ」

 夢佳は身を乗り出してほおとため息をついた。
 それからおもむろに、樹の方へ身体を傾けた。

「わたくしが、たずなをお持ちしましょう。
 樹さまも景色を楽しんで下さいませ」

 樹からたずなを取ると、ブラックサンタの夢佳がゆらりと笑う。

「さて樹さま。どこへ攫って、差し上げましょうか?」

 そして今夜、ソリはどこまでも。



■しあわせのマイケーキ■


 とある広々したキッチンで、小羽根 ふゆは瞳を輝かせている。
 広い窓からは、オーサカの街並みが見えている。
 
 これまで御饌司として何度もステージに立ち腕をふるってきたふゆだったが、一度もスイーツを作っていなかった。
 心残りを晴らすべく、ふゆはリンアレルのこの夢にやって来た。
 
「オーサカ城ケーキも気になるけど、
 やっぱりマイケーキを作って食べたいなって思う訳なんだよ」

 ふゆは楽し気にキッチンを動き回る。

「夢の中なら大きさも種類も作り放題、食べてもゼロカロリー、だよね?」

 これまで培って来た御饌司としての技もふんだんに使い、観客も、対戦相手もいないキッチンで、ふゆは思いのまま、好きなようにケーキを作った。

「だったら、まっしろホイップのも、
 イチゴたっぷりのも、チョコレートのも、フルーツのも!」

 最後の仕上げは、粉砂糖に、ココアパウダー。
 キラキラのアラザンをぱらぱらと。
 
 こうして、多種大量のケーキが完成した。
 ふゆは大きなスプーンを手に、ご満悦で、

「いただきますっ」

 食べきれぬほどたくさんのケーキを、カロリーも体重も気にせず、たらふく食べ始める。

「んー! 美味しい! でもこれ全部、ゼロカロリー」

 それからふゆは、ほんの少し心配そうに、誰にともなく呟いた。
 
「……本当に、ここって夢の中、なんだよね?」

 キッチンの窓の外では、温かく白い、粉砂糖のような雪が降っている。
 間違いなく、夢の中だった。



■あくまきさんぽ■



 ふゆのいるキッチンの窓の外には、繁華街が広がっている。
 その一画に、真剣な表情の緑青 木賊が見える。

 木賊が目指しているのは、大阪の実家だった。
 しかしここは、オーサカで、さらにリンアレルの夢の中。
 勝手が違って苦戦中だったが、目当ての場所が見つかったようだ。
  
「あくまき、あの店っす! 
 あんな場所にあるなんて、実際の大阪とだいぶ違うっすね」

 トランペットイヌの星獣『あくまき』はいつもの居場所――木賊が着用しているジャケット【あくまきくるみ】のポケットの中。

「寝てないっすか? あくまき?」

 あくまきはもそもそ動き、起きてるアピールをしてきた。

「あそこは、大変美味なことで有名な店っすよ? 
 おお、なんと! あっちも見るっす。
 あの展望台。あそこから見る景色はまことに綺麗で、ぜひあくまきにも見せたかったっす」
 
 木賊は興奮が止まらない。
 しかしというかやはりというか、あっという間にあくまきの寝息が聞こえてきた。
 
「あ、あくまき起きてるっす? もう、寝ちゃった……?」

 あくまきには、美味しい店より綺麗な景色より、ゆっくり眠れるこの場所――木賊の温もりを感じられるあくまきくるみの中が良いのだろう……木賊はしみじみと思い知る。
 木賊は店にも展望台にも寄るのをやめて、とりあえず歩き出す。
 
「あくまき? 次は実家の道場に向かうっす。一緒に、行くっすよ?」

 ポケットの中に手を入れ、温かく愛おしいあくまきをそっと撫で、木賊は歩き出した。
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