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夢見る少女のエキサイト・クリスマス

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夢見る少女のエキサイト・クリスマス
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リアクション


■思ったよりも世界は優しい。サンタがいるから、なお優しい



 リンアレルは、嬉しそうに炎を眺めている。

「最初とは比べ物にならないくらい素敵なパーティールームになってきました。
 きっと、皆さんのおかげです」

「その通りにこ」
 
 ニコラウスが杖を振ると、クリスマスらしい真っ赤なポインセチアの植木鉢があちこちに可愛く配置されていった。


「どんどん素敵になっていくな」

 空染 水花が目を輝かせ、隣りに立つ恋人の藤堂 輝は、その声に微笑み頷く。

「本当に」

 夢月 瑠亜はしみじみと頷き、リンアレルを見つめる。
 
 ――リンアレル……
 ――どんな時だって一人じゃない。思ったよりも、世界は優しいんだよ。
 

 そして三人は、ステージに。
 
 瑠亜が、樹になったという神獣ドリアディナから作られた竪琴【ドリアドリュラー】を奏でる。
 歌うのは『Kalanchoe』。
 幸福を告げる花「カランコエ」をテーマにした歌だ。
 小さな思い出や幸せを詰め込んだ歌詞に、【スペルワーディング】の特別な抑揚をつけながら、聞く者の心の深くに語りかけるよう歌う。

 水花は瑠亜の歌声に合わせ、心を込めて【ポリフォニーアウロス】を奏でる。
 ポリフォニーアロウスは歌声を受けて音を出す杖状の管楽器。
 蔦や花の刺繍が施され、先端には空色の宝石が埋め込まれている。
  
 輝は儀礼用の剣【ヴィブラブレイド】の刀身を手で擦り、瑠亜の歌に合わせて不思議な音を奏でた。


 ♪ 苦しみが 憎しみが心を覆いつくし あなたを闇に堕とす時
 ♪ 思い出して あの日の幸せ あの日の思い出
 ♪ 小さな光は集い 輝く

  
 瑠亜の神獣幼生『エレンフィナ』が現れ【神獣共鳴】。
 歌声の魅力を高めていく。
 

 ♪ 一人じゃない いつだって
 ♪ あなたの心にぬくもりを 守るから
 ♪ 一緒に歩もう いつまでも

 
 エレンフェナと瑠亜の歌声、水花と輝の繊細な演奏、すべてが相まって美しい音色を生み出した。

「えいえいえいっ!」

 ニコラウスが杖を振り、ポインセチアの花の合間に色とりどりのカランコエの花を並べていく。
 さらに杖を振ると、花々が宙に浮かび、歌に合わせて踊り出した。 
 
 水花が【オルトゴースト】。
 透き通った小さいゴースト達を呼び出した。
 花とゴースト達が、楽しそうに宙に浮かぶ中――
 

 ♪ 一人じゃない いつだって


 ――そう、リンアレル。君は一人じゃない
 
 『Kalanchoe』のそのフレーズを、輝が【ハピネスチャント】でバックコーラス。
 輝の声や想いは客席に届き、
 
「♪ 一人じゃない いつだって」
 
 その場の全員が、このフレーズを歌う。

「ゴーストちゃん達も、客席の皆さまも、一緒に歌って踊りましょう?」

 勢いに乗って瑠亜が元気にコールする。
 花々とゴースト、そして集まったリンアレルやその周りの人々が、パーティールームで踊り出した。

「さぁ、俺と踊ろう水花」

 輝が水花を見つめ、まっすぐに手を差し出す。
 用意しておいたステージ用のセリフだったので、
 
「騎士様の仰せのままに」
 
 水花も決めておいたセリフを口にする。
 客席から大きな歓声と拍手が起き、輝が彼女の手を取り指先にキスを落とす。

 愛し合うふたりは、主役を引き立てる【ペタル・アンサンブル】を駆使して踊る。
 
 輝は、水花が引き立つよう願いつつ、
 水花は、輝が引き立つよう願いつつ、
 
 お互いがお互いを思い、見つめ合って踊る。

(ほら、みんなが輝を見てる。
 格好良いでしょ、自慢の彼氏様だ)

 楽し気に踊る水花を、輝は突然抱きかかえ、

「わわっ……!」

 踊りながら軽々とリフトした。

「ひひひ、輝?」

 水花が心底驚いた様子が客席に伝わり、微笑ましい拍手が起きた。

「は……早く終わろ?」

 しかし輝は、水花を一向に離さない。
 
「ぷ、ふふふ」

 二人のそばで歌っている瑠亜からは、優しい笑みがこぼれる。

「うう、恥ずかし……瑠亜も笑ってないの!」


 そしてクライマックス。

「水花、いくぞ」

 ――俺の、たった一人の愛する人

「ま……まだ何かするのか?」

 輝は、愛し気に水花をお姫様だっこ。

「!!!!!」

 水花は息をするのをしばし忘れる。
 
 こうして、美しい音色と楽しく幸せな時間をリンアレル達と存分に共有し、瑠亜と水花と輝はステージを後にした。



 続いてステージに現れた美しい男女の二人組を見て、リンアレルの目がひときわ輝いた。
 男子はあの日と大きく異なり違い赤と白のサンタ衣装――【サンタ服】ではあったが、間違いなかった。
 春瀬 那智と“星の歌姫”ジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァだ。

(ジュネ、準備はいいか?)

(はい、騎士様)

 二人は目と目と合わせ、弾けるようなメロディの、アップテンポな『Ready X’mas!』を演奏する。


 ♪ 年に一度のHoly Night
 ♪ 恋のオーナメント ツリーに飾って ワクワク ドキドキ はもう止まらない
 
 ♪ 君に夢中なSeacret Knight
 ♪ 愛のイルミネーション 心に灯して モウソウ トキメキ はもう抑えられない


 那智が歌い、ジュヌヴィエーヴは【アフロディーテフルート】の音色でその歌を彩る。
 光を集めオーロラのような反射光を周囲に作り出し、心地よく温かな風を客席に吹かせていく。

「「♪ せーのっ!」」

 歌詞の掛け声と共に、ジュヌヴィエーヴは【アポロンズフィールド】で足元に光のステージを出現させる。
 ステージの周りにはスモークがかかり、ぼんやりと情景が投射された。
 それは、あの夏の、王宮のパーティーでの思い出のワンシーン。
 リンアレルが見守った、あのライブ……
 
 リンアレルはスモークに写された情景を懐かしそうに見つめる。


 ♪ さあ Ready steady, Are you OK?
 ♪ この気持ち どうやって伝えよう
 
 ♪ プレゼントに込めて リボンであなたに繋げて 少しは気づいてくれるかな?


 間奏に入り、那智がステージを降りリンアレルの元へ。

「世界一のイルミネーションは、やっぱり特等席で見ねーとな」

「イルミネーション?」

「……ほら、お手をどうぞ?」

 那智はリンアレルを【ロイヤルエスコート】してステージへ連れ出した。

「それじゃ行くぜ。――Do you like Music?」

 那智はその場にいる全員に向けて【ブライトレスポンス】。
 観客もフェスタ生も一体となって思い思いの「YES!」を返せば、その一体感がイルミネーションのような光となって辺りを包む。
 サンタ服だった那智は【クライマックスモード】でライブ服へ変身。
 ジュヌヴィエーヴは【シャイニーオーディエンス】にて、観客一人ひとりの手に指輪やバングル型の光の輪を輝かせる。
 パーティールームがカラフルな光で満ちていく――。
 
「……綺麗で、楽しいです」

「メリークリスマスですわ、リンアレル様」

「俺達からの音楽のプレゼント、受け取ってくれ」

 ジュヌヴィエーヴが神獣『ムジカ』を呼び【神獣翔歌】。
 成長し大きくなったムジカは辺りを周回し、歌いながら空を踊る。

 今度はリンアレルもまじり三人で掛け声を。

「「「♪ そーれっ!」」」


 ♪ ほら Ready honey, Do you love me?  
 ♪ うぬぼれだって構わない クリスマスはこれから、でしょ


 こうして歌が終わり、リンアレルがうっとりとつぶやいた。
 
「興奮しました……」

 ポン! ポンポン!
 
 人々の手についていた【シャイニーオーディエンス】のカラフルな光の輪が弾け、光る星飾りとなって、パーティールームの壁のあちこちにくっついた。


 席に戻って来たリンアレルに、ニコラウスが笑いかける。
 
「楽しんでるにこ?」

「ええ、とても……」

「それはよかったにこ」
 
 ニコラウスは微笑んだ後、すっくと立ちあがった。

「お仕事にこ♪ 行ってくるにこ」

 
 ステージでは、クロティア・ライハナレッジ・ディアのゲームライブが始まった。

 クロティアは手慣れた様子で【異世界用ゲーム機】からクリスマスソングを流す。
 さらにもう1台、別のゲーム機【プレミアムスティッチ】を操作して、内臓されているゲームを、いつの間にかステージに設置されているスクリーンに映し出す。
 
 今日のクロティアは、夢のいたずらか特に意識していないのに仮想体『プライ』の姿をしている。
 プライは、ゲーム好きのクロティアが、これまで数々のゲーム内で使用してきたエディットキャラ。
 いわば、ゲーム世界に生きるもう一人の自分だ。
 今スクリーンに映し出したダンスゲームにも、プレイが使われている。
 
 クロティアはコントローラーを操作して、スクリーン内のプライを踊らせる。
 それに合わせて自分も踊ってみせた。
 二次元と三次元のプライの共演だ。
 
 ナレッジは【グリッターバルーン】。
 光の球を放ち、弾けさせて光の粒をステージに散らし、キラキラとした演出を試みる。
 そのキラキラがひときわキラキラと光り輝き……
 
「来たにこ」

 ニコラウスがステージに現れた。

「サンタさん! 来てくれたんですね?」

「ナレッジ? これはどうゆう……?」

「マスター。実はナレッジはサンタさんに、」

「詳しい話なんて要らないにこ。
 サンタは良い子の願いだけじゃなく、良いディーヴァの願いも叶える、
 それだけにこ~~♪」

 ニコラウスが大きく杖を降る。
 するとスクリーンの中の二次元プライが、扉でも抜けるように気軽にステージに飛び出して来た。

「サンタさん、ありがとうございます!」

 どよめきや拍手が起きる中、仮想体のプライ(クロティア)と、スクリーンから抜け出たリアルプライが並んで見つめ合う。

「本当に、プライなの?」

「ほら! ちんたらしてないでちゃんと踊りなさい!」

 リアルプライは強い口調で言い放ち、ダンスを始めた。
 音ゲー、格ゲー、ダンスゲーム……様々な要素を兼ね備えた、圧倒的なキレキレダンスだ。
 ギャルゲーの要素もあるのか、非常に艶っぽくもある。
 初めて聞く、プライ本人の声と口調、そして動き……。
 それはあまりにも想像通りで、クロティアとナレッジは目を合わせて笑った。
 たとえこれが夢の中の出来事だとしても、あまりにもリアルで本物っぽく、納得のいくものだった。

「「ふふふ」」

「二人してなに笑ってんの。さあ、ボクにあわせてキリキリ踊る!」

「あとは任せて、ナレちゃんも踊るにこ」

 ニコラウスが杖を振り、床や空間にゲームエフェクトのような光の音譜やハートを飛ばす。
 
「サンタさんへのお願いは、新しいスティッチソフトのほうが有意義なような気がするけど」

 踊りながらクロティアがぼそっとつぶやく。
 そんな声は聞こえていないナレッジが無邪気に目を輝かせた。

「マスター、楽しいですね」

「ええ、そうね」

 マイペースなリアクションをするクロティアの背中を、プライがドンと叩いた。

「もっと大きくはっきりと言いなさいってば!」

「たっ、楽しいわ!!」

 客席からも拍手が起き……

「クリスマスって、素敵です」

 願いが叶ったナレッジの笑顔を見て、リンアレルの心はポカポカと温かくなっている。
 


 空花 凛菜がゲームライブの三人とハイタッチしてすれ違い、ステージに登場する。
 いつの間にかステージには、ステージ映えのする可愛いキッチンが設置されている。

 ピーピーピー♪
 
 オーブンが焼き上がりを知らせる。
 出来上がったのは、凛菜がリンアレルのために用意してきた『幸せのクリスマスケーキ』だ。
 ケーキの焼ける香りと共に【メロウ・ショコラ】の甘いチョコの香りが漂う。
 さらに【スイートサプライズ】
 ケーキの仕上げ用のクリームやチョコレート、様々な形をした飾り用の砂糖菓子を並べ、甘い香りと雰囲気でその場を盛り上げる。
 凛菜はこれらの材料を使い、ケーキを完成させると、それを切り分け皆に配った。

「いただきます♪」

 誰からともなく、声を揃えてそう言って。
 リンアレルやクロシェル、そしてニコラウスに凛菜もケーキをぱくりと口に入れる。
 
 一口食べると、壁に天井に、いくつものシャンデリアや燭台が現れた。

 ここで凛菜が【デリシャススマイル】

「美味しさと暖かさを伝えたくて、焼き立てのほかほか生地に、冷たいクリームやチョコを飾ってあります」
 
 皆が笑顔で二口目を食べると、パーティールームの壁に、夜闇を映した真っ暗い大きな窓がいくつも現れた。
 
 そして美味しく食べ終わる頃。
 
 暗い窓の外で、ひらひらと雪が舞い始めた。
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