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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

神々の悪戯! ハロウィンナイト悪夢編

リアクション公開中!
神々の悪戯! ハロウィンナイト悪夢編
  • 神々の悪戯! ハロウィンナイト悪夢編

リアクション

■Dark forest

  会場は裏山なので、ライトアップされたエリアと、ライトのない薄暗い森が隣り合わせになっている。
  ここはそんな一画。
  賑やかで明るいライトアップの奥には、薄暗い森が広がっている。
  ある程度は準備委員会の作った規制線が張られている。
  しかし完全ではなく、案外誰でもその奥へ進むことはできる。


「ぬ~り~か~べ~」

 ライトアップのエリアから外れそうになった者を、大きなぬりかべが遮っている。
 ぬりかべ、といっても九州のあの有名な妖怪ではなく、

「こちら側は通行できません、かべ~」

 ゆるキャラ着ぐるみの【ヌリカベぐるみ】を着こんだ大吉 陽太郎だった。

「う……動きにくい……」
 割と大きめの壁なので動きにくいが、良いバリケードにはなっている。
 さらに『会場案内図』まで貼ってあるという親切設計だ。

「『墓場パーティー!』の会場は……あっちだわ」
「ぬりかべさん、トイレどこ?」
「そこの大きなカボチャの裏、かべ~」
「ぬりかべさん! 私、子どもとはぐれてしまいました!」
「会場入口に、迷子センターがあるかべ~」

 ぬりかべの陽太郎な、かなか大忙しだった。
 しかしやるべきことはこれだけではない。

 かなりの通行人が陽太郎ぬりかべの周りに集まったところで……

「ぬりかべ!(今だ!)」

「トリック・オア・トリート♪」

 ぬりかべの裏側から、ゾンビマスクのナイスバディなバニーガールが飛び出した。
 草柳 夏帆だった。

 きゃーーっ!!

 辺りが悲鳴に包まれる。
 しかし夏帆のゾンビマスクはそこまでは怖くはない。
 すぐに悪戯だと判り、場は和んだ。
 しかも夏帆のゾンビバニーガールは、マスク以外は申し分のないセクシーナイスなバニーガールで……

「はーい、お化けに対する賄賂用お菓子、配るわよー」

 皆、嬉しそうにお菓子を受け取り始める。
 中には一緒に写真を撮ってとお願いする者まで出てきた。

 そんな和やかな雰囲気になっても、陽太郎は警戒を怠らない。
 なんとなく気になって、規制線の向こうの暗がりを見る。
 ライトアップのない森には、吸い込まれそうな闇が広がっている。
 何かが潜んでいそうな気配がビシビシ伝わってくる。
 さらに、お菓子ゴーレムのものだろうか、時おり、ずん、という地響きも感じる。

「ぬ~り~か~べ~、こちら側は通行できません、かべ~」

 陽太郎ぬりかべは、通せんぼにいそしむ。


□■□


 ぬりかべの地図を見せてもらった女子グループは、目当ての『墓地パーティー!』へ向かっている。

 ~♪♪

「今、聞こえた?」
「ぬりかべじゃないの?」

 道の片側はライトアップのない森。
 しかしぬりかべはもうおらず、木々の向こうには広大な真っ暗い闇が口を開けている。


……
君の言葉の聞き逃し
もう取り返せないの?


 聞こえてきたのは男の歌声だった。
 女子達は好奇心に負け、声のする方……暗い森に近づいた。


 まだ君からの決定的な言葉を
 聞けてないから分からない


 暗がりの入り口に、肩が見えるほど胸を開けた、花魁(おいらん)姿の女形の男が歌っている。
 耳やしっぽをつけており、妖艶な兎のようだ。

「人間……だよね?」

 歌の主は【兎花魁衣装】を着た龍造寺 八玖斗
 女子達を見ることもなく、気づく風でもなく、歌に没頭している。
 そして歌は佳境に入る。


 怖くても震えても
 勇気出して聞くよ
 君の言葉で教えてよ


 八玖斗が女子達を見た。


「何で私を……捨てたのですか?」


 視線が合った女子達が、ひいと息を呑む。
 その瞬間八玖斗は【桜炎旗】を振って燃え盛る炎に紛れ、【ミニットインビジブル】で姿を消す。

「消えた!?」
「そんな!」

 とんとん

「!!!」

 背後からいきなり肩を叩かれ、恐る恐る振り返れば……

「きゃあっ!!!」

 そこにはいきなり【ポップサプライズ】を放った八玖斗の姿。
 全身から美味しい薔薇【エディブルローズ】を撒いている。

「何で私を……捨てたのですか?」

 その問いに答えられる者などおらず、声は暗闇に吸い込まれていく。


□■□


 ここも、暗い森の見えるとある一画。

「失礼、お客様。飲み物などは如何かな?」
「は、はわわわわっ」
「執事サマ、私も!」

 日下部 穂波の周りにはたくさんの乙女が集まっている。
 今夜の穂波は『亡霊執事』。
 クールな【執事服】に身を包み、【役者の仮面】をつけ【ボリュームエフェクト】で声は低くめに。
 辺りには【オルトゴースト】が飛び交ってて雰囲気満点だ。

「さあ、こちらのお客様もどうぞ」
「きゃーっ! ステキー!」

 【オルトゴースト】もびっくりするほどの歓声が起こった時だった。

 しくしくしく……

 暗い森の中から、子どもの泣き声が聞こえてきた。

「ちょっと失礼。誰もついて来ちゃだめだよ」

 穂波は恐れることなく暗い森へ足を踏み込んだ。

 ……
 …………

「うぅ、えぇん」
 暗い森に入るとすぐに、小さな男の子が泣いているのが見えた。
 仮装だろうか、黒い猫耳に黒い尻尾をつけている。

「どうしたの? けが、してないかい?
「ママと、はぐれちゃったんだ」

 キラリ☆

(えっ? 今、目が光った?)

「それは困ったね、あっ、そうだ」

 穂波は男の子に近づくと、利き手を広げてパーを作って見せた。

「何も持ってないよね?」
「う……うん」

 そして穂波は、ぎゅっと拳を握った後、

「ほら……見ててご覧」
 ぱっとその手を開いた。

「わあっ!」

 開いた手には、ころんころんとかわいいキャンディ。
 【プチマジック】だった。

「あげるよ。だからもう泣かないで」
「ありがとう! じゃあね!」

 男の子はキャンディを握って、元気よく走り出した。

「あっだめ! そっちへ行ったらますます迷子に……!」


□■□


 カイト・クラフレットリーニャ・クラフレットは、ライトアップのない暗いエリアを【オルトウィング】で飛行していた。
 万が一迷子などいたら大変だ……そんな気持ちからだった。 

「んんっ?」
「どうしたの? カイト」
「穂波さんが……手をふってます」

 確かに穂波がいた。
 こちらに気づいているようで、しきりに暗い森の奥を指さして口をぱくぱくしている。

「ま、い、ご?」
「うん! ま、い、ご、って言ってるの!」
「こんな楽しい日に、そんな悲しいことはいや、ですよ?」
「うん! こんな楽しい日に、悲しいのは駄目なの!」

 ……
 …………

「……ママはどこかなぁ」
 暗い丘でうずくまっていた先ほどの男の子の猫耳が、ぴくりと動いた。
 

 ……くすくすっ
 ふふふっ


 背後で笑い声が聞こえ、男の子は恐る恐る振り返る。

「「Happy Halloween!」」

 そこには白い天使と黒い天使がいた。
 黒い天使は男の子。
 楽しそうに虚空に絵を描き、見る見るうちに丘の上を魔界をイメージした森にしつらえていく。
 【超・背景描写】だ。
 
 白い天使は女の子。
 こちらも楽しそうに、草の上を歩きながら半透明のオバケ【オルトゴースト】を呼び出している。

 2人の天使……カイトとリーニャは優しく男の子に視線を向けた。
「迷子さん、ですか?」
 男の子は服の袖でぐしぐしと涙を拭いて、うなずいた。
「これあげるから、泣かないでなの」
 リーニャが【八ツ橋】を差し出す。

「ありがとう……僕、ママとはぐれちゃったんだ」
「かわいそうなの」
「この辺来たの久しぶりだから、迷子になっちゃった。
 見たことのないおっかないヤツもうろうろしてて怖いし……」
「ゴーレムのことかな? 大丈夫なの! みんながやっつけてくれるから」

 リーニャは男の子の右手を取り、【欲ばりなユートピア・フォーリア】を発動した。

「幸せな、夢の世界に連れてってあげるの!」
「大丈夫……怖くないですよ……」

 カイトは男の子の左手を取る。

 そして3人は、夢とも現実とも区別のつかない世界へ。

 迷子の男の子は、自分の背中に翼が生えるのを感じた。
 気づけばカイトやリーニャと一緒に空へ飛んでいる。
 さらに上空からは、たくさんのお菓子と、ハロウィンらしいかぼちゃの風船が降ってきて……

「「「楽しいね!」」」

 ……
 ………

「あれは、カイトさんとリーニャさん……」

 【ジングルシャイニー】で足元を照らしつつ、暗いエリアを散策していた鮫谷 此白が声を弾ませた。

 丘の上にはカイトとリーニャ、そして猫のような耳と尻尾をした男の子。
 ライブでもしていたのか、背景はちょっとおっかないハロウィンの景色だ。
 3人は楽しそうに草の上でごろごろじゃれあっている。

「やだなぁ。確かにお仲間に会えてほっとしてますが、私は怖がったりしてませんよ?
 ずっとサトーさんと一緒でしたからね、ふふ……」

 此白は手にしていた箱に話しかける。
 中には大切な宝物、謎の白い毛玉の「サトーさん」が入っている。

「やっほー! こっちなのー!」
 リーニャ達が此白に気づき、手を振ってきた。

 すると男の子が立ち上がり、先ほど穂波からもらったキャンディを1つずつ、リーニャとカイトに渡した。

「楽しかった。ありがとう」
「ちゃんと、僕らが送りますよ?」

 カイトが言うと男の子は首を横に振り、暗い森をぐるりと見渡した。

「2人には、もっとここで、楽しいライブをしてほしいな。みんな集まって来てるから」
「「みんな?」」

 確かに、見えはしないものの、森の暗がりには様々な気配が潜んでいる感じがする。

「僕の仲間なんだけどね、みんな暗いとこで暮らしてるんだ。
 邪悪な存在とかじゃなくて、恥ずかしがり屋で怖がりなだけなんだ。
 今日は見たこともないヘンなのがうろうろしてて、とても明るい場所には出て行けない……
 だからもっとライブを見せてあげてよ、カイト、リーニャ!」

 ……
 …………

 そんなこんなで、此白が男の子の付き添い役となった。

「やみくもに走ってもしょうがないんですよ。
 まずは考えるのです。
 さて、君が母上様とはぐれたのはどの辺りでしょうか?」

「えっと……前は墓地なんてなかったはずなのに墓地が出来てて……
 うん、その墓地のあたりではぐれたんだ」

「ああ……準備委員会が作った『墓地パーティ!』会場ですね。
 それなら、その先のはずです」

 すると男の子が突然歩みを止め、くんくんと鼻を動かした。

「あれっ? ママのにおいがする」
「わ、判るんですか?」

 なんとなく気になった此白は、【観察眼】を使って男の子を見た。
 特に耳と尻尾と、時おり光る瞳を……

「間違いない! ママだ!」
「ま、待って下さい、まだ観察がっ」

 此白は男の子を追って走った。
 すぐに、暗い木々の向こうに明るいオレンジのライトが漏れ光っているのが見えてきた。
 ライトアップのエリアに戻って来たのだ。

「ハッピーハロウィン! ありがとう」

 男の子が此白を振り返り、手にしていたキャンディを1つ、放り投げてきた。

「1つでごめん! 残りはママにあげたいから」

 男の子は、すごい勢いで光の中に飛び込んで行った。
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