秋の祭典! アイランミーティング!
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■フェス乳業プレゼンツ! 君だけのフェスアイスを作ろう! 4
薄氷 鬼月から黒く歪んだアイスを受け取って、不知火 和夢は訊いた。
「きき、これなーに?」
「……えっと……フェスアイス宵ノ微醺味?」
「なんで作った本人が疑問形なんだよ」
和夢は黒く歪んだアイスを持ったまま項垂れた。弁明するように、鬼月が言う。
「いや、ラムレーズンみたいなお酒風味のアイスってあるじゃん。だから、こう、それっぽく……」
「それっぽくってなんだよ! やっぱ、ききに料理まかせたのは失敗だったな!」
「俺、料理できないって言ったじゃん……。作らせたのはなごむだろ」
「料理以前の問題だよね!? なんで宵ノ微醺混ぜちゃったの!? ちょっとどういう風に作ったらこんなアイスができ……もがっ!」
和夢の抗議を遮って、鬼月は宵ノ微醺味アイスを無理やり押し込んだ。
瘴気が身体のなかに流れ込んでくるのを感じて、死すら覚悟した和夢であったが。
「……あれ? すーっとした清涼感があって、意外と良いお味……」
和夢は宵ノ微醺味を表現してみる。アイスフィールドで涼しい空気を演出すると、かっと目を見開きつつ、忍法猫騙しで背後に爆発を作り出す。
「こ、この、後から爆発的にくるこれは……酒精の苦み? ほろ酔い気分っていうか……。うん、なんか、悔しいけど凄く美味しいです!」
料理が得意な和夢からすれば、認めたくない事実であったが、鬼月のオリジナルアイスは思いのほか美味であった。
「俺だってやれば出来るんだよ」
パートナーの反応を見届けて、鬼月は心なしかドヤ顔を浮かべていた。
「私は、瘴気で泥酔させてやる」
千夏 水希が宵ノ微醺の瘴気を吸った『黄泉アイス』と、禍心獣身で作った『黄泉餅』、さらにその中心で瘴気に染まる『黄泉餡子』を組み合わせた黄泉餅入り瘴気味を開発していた。
「アイス・餅・餡子で濃度の違う瘴気がポイントだ。まさに瘴気の三重奏だな」
製品説明をする水希だったが、自分で食べる気はさらさらなかった。進行役としてスタジオ入りしていた早見迅に近づくと、黄泉餅入り瘴気味を突きつける。
「おい迅。おまえ、黄泉つきパン食いたいって言ってただろう(※注 フェスにゅー32号参照)」
「あ、作ってきてくれたの?」
「パンじゃないけどな」
「アイスも面白そうだね。それじゃ、一口もらおっかな」
迅が黄泉餅入り瘴気味アイスを頬張った。餅アイスの不思議な食感と、こみあげてくる瘴気が、彼の神経を狂わせていく。
「悔しい……! でも……感じちゃう! 微醺(ビクン)微醺(ビクン)!」
「なに言ってんだ」
黄泉餅入り瘴気味は、迅のキャラが崩壊しかかるほど危険なアイスだった。
鉄板トークで調理法を説明しながら、宇津塚 倖々葉がオリジナルアイスの開発を進めていた。
「フェスアイスはへんな味がおおくておかしー!」
楽しげにトークを繰り広げながら、バニラアイスと緑色の食糧天然色素を混ぜ合わせていく倖々葉。うっすらと緑がかったミルクのようなものを四等分し、マスカット、メロン、キウイ、青リンゴの味を付けていく。
「フルーツソースはぜんぶ天然果汁だよー」
人工添加物は不使用であることを強調しつつ、それぞれの味ごとに、四葉形の型に入れて凍らせれば、倖々葉特製オリジナルアイスの完成だ。
「ところで、これは何味?」
進行役の村雲いろはの質問に、倖々葉はにっこりと答える。
「ハピラキラリン味でーす!」
「それは……何?」
「食べてみればわかるよー」
「そう……。なら、一口いただくわ」
いろはが鮮やかな緑色のアイスをスプーンで掬い、口に運んだ。
「これは――確かに、ハピラキラリン味ね」
いろはの食レポはなんの説明にもなっていなかったが、倖々葉の楽しげなダンスが、とにかく幸せな味であることを物語っていた。
「たべればはぴはぴ☆みんなハピラキラリンになぁーれっ☆☆」
「さぁ、フェスアイスの食レポやってくでぇ! かもん!」
溌剌とした調子でかりゆし くるるが番組スタッフを呼んだ。駆け寄ってくるスタッフの手には、くるるが作ったアイスポップ【Good Girl味】が握られている。
「おぉぉぉぉ……!」
自作の出来栄えに感動したのか、球体型のアイスをじっと眺めるくるる。ちょうど通りかかったいろはをガシッと捕まえて、彼女はじゃんけん勝負を挑んだ。もちろん、負けたほうが実食するルールである。
「泣いても笑っても一回勝負やでぇ」
「わかった」
「「じゃんけんぽんっ!」」
くるるの手は、チョキ。いろはの手は、グー。
いろはは握ったままの拳を高々と突き上げた。
「ガッツポーズ……!? 喜び過ぎやない!?」
自作のアイスがそこまで拒絶されたことを複雑に思いながら、くるるはGood Girl味をそっと口に入れた。自分でも何を入れたのかよく覚えていないので、どんな味がするのか未知数だったが――。
「あっ。美味しい」
思わずくるるは素になっていた。
うさルミマル着ぐるみを纏った小鈴木 あえかが、迅と打ち合わせをしていた。あえかの目的は、『いろはの笑顔で美味しさをアピールすること』であった。
「おっけー。ちょっとやってみるよ」
作戦を聞いた迅が、いろはを誘って、アイスでできた小さなお城の食レポをはじめた。
レポをそつなくこなし、スタッフから偽のOKが出たところで、あえかがパーティートラップを発動する。
アイス城の扉がゆっくりと開く。中から出てきたのは、パペットダンサーをお人形用のドレスで着飾った、小さなお姫様であった。
「どうぞ、お姫様」
迅が手を差し出して、小人姫を掌に乗せると、そのままいろはの目前までエスコートした。
小人姫が持っているスプーンには、アイスがちょこんと乗せられている。このアイスこそ、あえかの本命小人姫のとっておき味だった。
「あら……かわいい」
異世界への憧れが凝縮されたギミックに、冷静ないろはも驚いたようだ。彼女は少しだけ目を見開いて、ひと匙のアイスを口に運ぶ。
言葉はいらなかった。いろはの顔に浮かんだ微笑みが、小人姫のとっておき味の美味しさを物語っていた。
空花 凛菜はボウルに新鮮なフェスミルクと卵を入れると、“適量”の砂糖とバニラエッセンスを加えて、丁寧にかき混ぜていた。
ふんわりとしたクリームの中に、カルメ焼きとメイプルシロップを混ぜ合わせ、出来上がったのがカルメ焼withメイプルシロップ味だ。
「これは、普通においしそうだね」
凛菜のアイスを見つけた迅が、ひょいっとつまみ食いした。
その途端、迅はその場で悶絶した。
「どうしたの?」
と、いろはが訊けば、
「……すっごく甘い」
迅が震える声で答えた。
超甘党な凛菜からすれば、砂糖の“適量”が規格外だったのである。
あまりの甘さに悶える迅をよそに、凛菜は上品な仕草でカルメ焼withメイプルシロップ味を口に含むと、優雅な微笑をたたえ、カメラに向けて平然と言い放った。
「ほどよい甘さで、とても美味しいです」
薄氷 鬼月から黒く歪んだアイスを受け取って、不知火 和夢は訊いた。
「きき、これなーに?」
「……えっと……フェスアイス宵ノ微醺味?」
「なんで作った本人が疑問形なんだよ」
和夢は黒く歪んだアイスを持ったまま項垂れた。弁明するように、鬼月が言う。
「いや、ラムレーズンみたいなお酒風味のアイスってあるじゃん。だから、こう、それっぽく……」
「それっぽくってなんだよ! やっぱ、ききに料理まかせたのは失敗だったな!」
「俺、料理できないって言ったじゃん……。作らせたのはなごむだろ」
「料理以前の問題だよね!? なんで宵ノ微醺混ぜちゃったの!? ちょっとどういう風に作ったらこんなアイスができ……もがっ!」
和夢の抗議を遮って、鬼月は宵ノ微醺味アイスを無理やり押し込んだ。
瘴気が身体のなかに流れ込んでくるのを感じて、死すら覚悟した和夢であったが。
「……あれ? すーっとした清涼感があって、意外と良いお味……」
和夢は宵ノ微醺味を表現してみる。アイスフィールドで涼しい空気を演出すると、かっと目を見開きつつ、忍法猫騙しで背後に爆発を作り出す。
「こ、この、後から爆発的にくるこれは……酒精の苦み? ほろ酔い気分っていうか……。うん、なんか、悔しいけど凄く美味しいです!」
料理が得意な和夢からすれば、認めたくない事実であったが、鬼月のオリジナルアイスは思いのほか美味であった。
「俺だってやれば出来るんだよ」
パートナーの反応を見届けて、鬼月は心なしかドヤ顔を浮かべていた。
「私は、瘴気で泥酔させてやる」
千夏 水希が宵ノ微醺の瘴気を吸った『黄泉アイス』と、禍心獣身で作った『黄泉餅』、さらにその中心で瘴気に染まる『黄泉餡子』を組み合わせた黄泉餅入り瘴気味を開発していた。
「アイス・餅・餡子で濃度の違う瘴気がポイントだ。まさに瘴気の三重奏だな」
製品説明をする水希だったが、自分で食べる気はさらさらなかった。進行役としてスタジオ入りしていた早見迅に近づくと、黄泉餅入り瘴気味を突きつける。
「おい迅。おまえ、黄泉つきパン食いたいって言ってただろう(※注 フェスにゅー32号参照)」
「あ、作ってきてくれたの?」
「パンじゃないけどな」
「アイスも面白そうだね。それじゃ、一口もらおっかな」
迅が黄泉餅入り瘴気味アイスを頬張った。餅アイスの不思議な食感と、こみあげてくる瘴気が、彼の神経を狂わせていく。
「悔しい……! でも……感じちゃう! 微醺(ビクン)微醺(ビクン)!」
「なに言ってんだ」
黄泉餅入り瘴気味は、迅のキャラが崩壊しかかるほど危険なアイスだった。
鉄板トークで調理法を説明しながら、宇津塚 倖々葉がオリジナルアイスの開発を進めていた。
「フェスアイスはへんな味がおおくておかしー!」
楽しげにトークを繰り広げながら、バニラアイスと緑色の食糧天然色素を混ぜ合わせていく倖々葉。うっすらと緑がかったミルクのようなものを四等分し、マスカット、メロン、キウイ、青リンゴの味を付けていく。
「フルーツソースはぜんぶ天然果汁だよー」
人工添加物は不使用であることを強調しつつ、それぞれの味ごとに、四葉形の型に入れて凍らせれば、倖々葉特製オリジナルアイスの完成だ。
「ところで、これは何味?」
進行役の村雲いろはの質問に、倖々葉はにっこりと答える。
「ハピラキラリン味でーす!」
「それは……何?」
「食べてみればわかるよー」
「そう……。なら、一口いただくわ」
いろはが鮮やかな緑色のアイスをスプーンで掬い、口に運んだ。
「これは――確かに、ハピラキラリン味ね」
いろはの食レポはなんの説明にもなっていなかったが、倖々葉の楽しげなダンスが、とにかく幸せな味であることを物語っていた。
「たべればはぴはぴ☆みんなハピラキラリンになぁーれっ☆☆」
「さぁ、フェスアイスの食レポやってくでぇ! かもん!」
溌剌とした調子でかりゆし くるるが番組スタッフを呼んだ。駆け寄ってくるスタッフの手には、くるるが作ったアイスポップ【Good Girl味】が握られている。
「おぉぉぉぉ……!」
自作の出来栄えに感動したのか、球体型のアイスをじっと眺めるくるる。ちょうど通りかかったいろはをガシッと捕まえて、彼女はじゃんけん勝負を挑んだ。もちろん、負けたほうが実食するルールである。
「泣いても笑っても一回勝負やでぇ」
「わかった」
「「じゃんけんぽんっ!」」
くるるの手は、チョキ。いろはの手は、グー。
いろはは握ったままの拳を高々と突き上げた。
「ガッツポーズ……!? 喜び過ぎやない!?」
自作のアイスがそこまで拒絶されたことを複雑に思いながら、くるるはGood Girl味をそっと口に入れた。自分でも何を入れたのかよく覚えていないので、どんな味がするのか未知数だったが――。
「あっ。美味しい」
思わずくるるは素になっていた。
うさルミマル着ぐるみを纏った小鈴木 あえかが、迅と打ち合わせをしていた。あえかの目的は、『いろはの笑顔で美味しさをアピールすること』であった。
「おっけー。ちょっとやってみるよ」
作戦を聞いた迅が、いろはを誘って、アイスでできた小さなお城の食レポをはじめた。
レポをそつなくこなし、スタッフから偽のOKが出たところで、あえかがパーティートラップを発動する。
アイス城の扉がゆっくりと開く。中から出てきたのは、パペットダンサーをお人形用のドレスで着飾った、小さなお姫様であった。
「どうぞ、お姫様」
迅が手を差し出して、小人姫を掌に乗せると、そのままいろはの目前までエスコートした。
小人姫が持っているスプーンには、アイスがちょこんと乗せられている。このアイスこそ、あえかの本命小人姫のとっておき味だった。
「あら……かわいい」
異世界への憧れが凝縮されたギミックに、冷静ないろはも驚いたようだ。彼女は少しだけ目を見開いて、ひと匙のアイスを口に運ぶ。
言葉はいらなかった。いろはの顔に浮かんだ微笑みが、小人姫のとっておき味の美味しさを物語っていた。
空花 凛菜はボウルに新鮮なフェスミルクと卵を入れると、“適量”の砂糖とバニラエッセンスを加えて、丁寧にかき混ぜていた。
ふんわりとしたクリームの中に、カルメ焼きとメイプルシロップを混ぜ合わせ、出来上がったのがカルメ焼withメイプルシロップ味だ。
「これは、普通においしそうだね」
凛菜のアイスを見つけた迅が、ひょいっとつまみ食いした。
その途端、迅はその場で悶絶した。
「どうしたの?」
と、いろはが訊けば、
「……すっごく甘い」
迅が震える声で答えた。
超甘党な凛菜からすれば、砂糖の“適量”が規格外だったのである。
あまりの甘さに悶える迅をよそに、凛菜は上品な仕草でカルメ焼withメイプルシロップ味を口に含むと、優雅な微笑をたたえ、カメラに向けて平然と言い放った。
「ほどよい甘さで、とても美味しいです」