イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

秋の祭典! アイランミーティング!

リアクション公開中!
秋の祭典! アイランミーティング!

リアクション

■フェス乳業プレゼンツ! 君だけのフェスアイスを作ろう! 2


 筒見内 小明は、肉じゃがみそ汁味のアイスを手に、カメラへ向けてひたむきな視線を投げかけていた。
「子供の頃、お母さんに教わりました。“素敵なお嫁さんになりたいなら、美味しい肉じゃがとみそ汁を作れるようになりなさい”と」
 肉じゃがと、みそ汁。それは小明が、お母さんに最初に教えてもらった料理だった。いまでは彼女の得意料理となっている。
 華のかんばせで頬を赤らめ、微笑みながら、小明は自信作の肉じゃがみそ汁味アイスに口をつけた。
「あなたと一緒に、このアイスを毎日食べたいんです」
 家庭的な料理と、一途な台詞。小明の女子力は最高潮に達していた。
 しかし自分で言って恥ずかしくなってしまったのか、小明の顔は、まるで鳳仙花のように真っ赤になってしまった。
「なんて、その……あの……キャーッ!」
 そのままスタジオを逃亡していく小明。そんな仕草も可愛らしく、限界を越えた彼女の女子力は、多くの男性視聴者を悶絶させた。

「ルミブレラ……頼むからそんな悲しそうな顔をしないでくれ」
 セブンスフォールに自生している、ルミマルっぽいキノコ――ルミブレラを原材料に取り込みながら、深郷 由希夜がオリジナルのフェスアイスを完成させた。
 その名もズバリきのこ味である。
「さあ、秋の味覚が恋しくなったらこれを食え!」
 由希夜は高らかに宣言すると、アイスを豪快に齧ってみせた。彼の背後からは、CMソングをイメージした【フェスアイス『きのこ味』のテーマ】が流れている。
(ん? んんっ?)
 実食してみて、由希夜はリアクションに困ってしまった。椎茸、松茸、シメジにエリンギ……。食用キノコがふんだんに盛り込まれている、ような味がする。
 美味しいとか不味い以前の問題であった。
「と、とにかくっ。キノコをいろいろ食べたいときにお勧めなのが、このフェスアイスきのこ味だ!」
 上手いことまとめながら、由希夜はアイスをもう一口齧った。『きのこ味』のテーマが軽やかな旋律を奏でていた。
 霧崎 玲奈は、そのパフォーマンスを興味深げに眺めていた。


「料理は好きですよ。科学のようなものでしょう」
 カメラを向けられたシャーレ・ビグリューカラムが、飄々と言い放った。彼女が作ったオリジナル料理は、いつも周囲の不評を買っているのだが、今回こそは問題ないと謎の自信を覗かせている。
「私、優秀ですから」
 不敵に微笑むシャーレの手には、フェスアイスカレー味が握られていた。万人に好まれる味、さらに辛さのサプライズ――。シャーレが事前に調査と研究を重ねた答えが、ここにあった。
(ふふふ。完璧です)
 シャーレは自信満々で、カレー味のアイスを実食してみる。
「こ、これは!!」
 あまりの美味しさにフラッと倒れそうになりながらも、即興でカペレのホムンクルスを指揮し、少し刺激的な気持ちを妖の色目に乗せてアピールする。
「なるほど……。カレーは良い着眼点だなあ」
 番組を見ていたフェス乳業の商品開発担当者が、すかさず手帳にペンを走らせた。


「う~ん、これもちょっと違いますね」
 新来喫茶兼酒場の娘である照美 瑠羽は、お店のメニューとにらめっこしていた。
(コーヒー? 紅茶? ……インパクトが足りません)
 瑠羽としてみれば、カフェ&バーの経験を活かした仰天フレーバーを開発したいところだが、かといって不味いものを商品にするのもプライドが許さなかった。
 そんな悩めるパートナーを、向有 ガイアがドキドキとした様子で見守っている。
(コーンポタージュ? クリームシチュー? ナポリタン? ……これはすでにありましたね)
 考えすぎて袋小路にはまりかけていたが、このときシャーレがカレー味のアイスを発表したことで、瑠羽のインスピレーションが爆発した。
「はっ! カレー!!」
「なにかひらめいたの、瑠羽~?」
「さらに、オムレツ! パスタ! これらを単品にせず、合わせ技にして――いけます!」 
 瑠羽は三種類の料理を、型の中にぎゅうぎゅうに詰め込んで、氷結させた。できあがったアイスは、茶・黃・赤の三層になっている。
「瑠羽、これなあに?」
カレーオムナポリタン味です。さあガイアさん、食べてください!」
「はぐっ!?」
 口にアイスを放り込まれて思考停止しかけたガイア。
 しかしすぐに気を取り直すと、それぞれの料理にまつわる雑学披露をはじめた。
「茶色の層は、みんな大好きカレー! カリーはインド料理。ナマステ! だけどカレーライスは洋食。ナマステ! 『こんにちは』から『さよなら』までナマステ! 黄色の層は、とろとろふんわり卵のオムレツ! 外国だと卵焼きもカニ玉も全部オムレットだから気をつけよう! 赤色の層は、ケチャップの酸味が効いた下町の味ナポリタン! ナポリと付いてるけど実は日本発祥。イタリアにはないよ!」
 ガイアは一気にまくしたてた後、瑠羽と手を組み、スタジオ内を走り回った。
「このアイスは……グルメの世界弾丸ツアーや~♪」
 そんな二人のパフォーマンスに、番組スタッフから笑い声が巻き起こった。


「個性派アイスでは、自分も負けへんでー!」
 マントを羽織った五条 克也は、吸血鬼のコスプレでスタジオ入りしていた。彼が手にしているオリジナルアイスは、ペペロンチーノ味である。
「おっ、アイスやのに麺が入ってるで。これは食べ応えありそうや。……んん? この赤いのはなんや。鷹の爪やろか?」
 鉄板トークでペペロンチーノ味の良さを充分にアピールしてから、克也はアイスを頬張った。
「にんにくの味が効いていて……こ、これは……ゴフッ」
 フェイクブラッドで吐血したふりをしつつ、克也はニヤッと笑うと、手に持ったアイスを高々と掲げた。
「吸血鬼も血を吐くくらいの美味さやで! フェスアイス【ペペロンチーノ味】、みんな食べてやー!」
 パチパチパチパチ!!!
 そのままCMに使えそうなほど完成度が高い、克也のパフォーマンスに、番組スタッフから拍手が巻き起こった。

 ナポリタン、ペペロンチーノとスパゲッティ系統が続くなか、藤原 明日香カルボナーラ味を完成させていた。カルボナーラは人気の高いパスタソースだが、アイスの味としてはどうなんだろう……などというツッコミは、いまさら野暮である。
「フェスアイスだし、面白い味がいいよね!」
 明日香は元気よくカメラに向き直ると、一風変わったフレーバーのアイスを齧ってみせた。
「ん~、まろやかでけっこう美味しい! 黄色いところはソースの味だね。……あ、なんかベーコンも入ってる」
 カルボナーラを忠実に再現したアイスを、食レポしていく明日香。そんな彼女はふと、黒いつぶつぶに目を止めた。
「あれ? この黒いところは何だろ?」
 首を傾げながら、明日香は黒い部分を齧ってみる。すると一口食べるやいなや、ハイジャンプでぴょーんと飛び上がり、飛炎を口から噴き出した。
「か、辛ーいっ! この黒いの胡椒だったよ……。そこまで再現しなくてもいいよ!」
 ワハハハハハハハ!
 身体を張った明日香のリアクションに、スタジオやお茶の間は、笑い声に包まれた。


「そんなんじゃ甘いわ。胡椒なんて、ワタシのアイスに比べれば黒砂糖みたいなものよ」
 ノエル・アドラスティアが、真っ赤なアイスを取り出しながら言った。そこにたっぷりと練り込まれているのは、唐辛子である。
「ちょっと待って、ノエル!? そんな地獄レベルで辛そうなものを口にするのは嫌なんだけど!」
 実食係の加宮 深冬が、椅子に縄で縛り付けられたまま、じたばたと暴れていた。パートナーの狼狽ぶりを意に介さず、ノエルは唐辛子アイスをメレンゲでコーティングすると、ブランデーを振り掛けた後、鬼火を放った。燃えるフェスアイス灼熱ファイアー味の完成だ。
「気温もだんだん下がってきている今日この頃……冷たいアイスは敬遠されるわ」
「だからって火を着けることないよね!?」
「大丈夫よ。メレンゲに熱を遮断されるから、中のアイスまでは溶けないわ」
「わたしが言ってるのはそういうことじゃないんだけど!」
 身をよじって抵抗する深冬に、灼熱ファイアー味のアイスをぐいっと突き出すノエル。
「さあ、召し上がれ♪」
「いやーっ!」
 抵抗も虚しく、深冬の口に燃え盛るアイスが押し込まれていく。そのあまりの辛さと熱さに、深冬は声も出せず悶絶し、代わりに字走り花火を次々と打ち上げていった。

《辛い!》 《熱い!》 《というか痛い!》 《水を!》 《HELP!》

 だんだん悲壮感が増していく文字を乱舞させながら、深冬はついに力尽き、そのまま椅子ごと倒れ込んだ。最後に打ち上げた彼女の字走り花火が、ダイイングメッセージのようにスタジオに漂っていた。

《ノエルの人殺しーっ!!》



「辛いだけじゃ物足りないのー。ちゃんと甘いのも混ぜるのーっ♪」
 リーニャ・クラフレットはバニラアイスにキラキラハニーを入れて、パペットカイトに混ぜてもらっていた。そうして合わさった材料に、ワイバーンドゥルールをちょい足しして、冷蔵庫で凍らせる。
 出来上がったアイスにマジカルスローキスを投げかけ、天使のような輪っかを浮かべれば、リーニャ特製天使の祝福or悪戯味の完成だ。
「良い人には祝福を! 悪い人には悪戯を!」
 リーニャはにっこりと微笑んでキラキラ光るアイスを食べた。ポリフォニーホーンを口元に寄せて、バニラと花の蜜のとろけるような甘さを表現していく。その柔らかな音色は、聴いている人々を幸せな気分にさせた。
「もうひとくち、いってみよーっ♪ ……って、か、辛いー!?」
 リーニャの食べた部分にはワイバーンドゥルールが混ざっており、彼女が思わず上げた悲鳴は、ポリフォニーホーンを通してスタジオ中に響き渡った。
 悪戯の味の音色が、それを聴いた人々を悶えさせていた。
ページの先頭に戻る