イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

秋の祭典! アイランミーティング!

リアクション公開中!
秋の祭典! アイランミーティング!

リアクション

■フェス乳業プレゼンツ! 君だけのフェスアイスを作ろう! 1

 数々の奇抜なフレーバーを世に送り出してきた「フェスアイス」。その販売元であるフェス乳業の文字が踊る調理スタジオでは、フェスタ生によるオリジナルのアイスが次々と開発されている。
 チョコミント納豆、苺てんぷら、桃味噌カツパクチー……そんなキワモノフレーバーばかりのフェスアイスに対し、神宮司 嵐は敢えて直球勝負を挑んでいた。
 抹茶と黒蜜。
 普通に美味しそうな材料を神宮司 楓に渡して、嵐は言う。
「ここは和風系の甘味で参りましょう」
「任せてください、嵐姉さん」
 受け取った抹茶と黒蜜を並べて、開発担当の楓は考えた。任せてくれとは言ったものの、彼としてみれば実のところ、
(僕はチョコ系のアイスが作りたいのですよね)
 というのが本音であったのだ。
 少しばかり思案した後、楓はさっそく調理に取り掛かった。形作られていくのは、ただの和風アイスには留まらない、ブラウニーのようにしっとりとした見た目のチョコアイスだ。
 そこに抹茶と黒蜜を織り交ぜ、楓が完成させたのは抹茶黒蜜ブラウニー味である。
「とても美味しそうですね」
 嵐が微笑みを浮かべて、抹茶黒蜜ブラウニー味のアイスをスプーンですくうと、ゆっくりと口元に運んでいった。彼女の舌にチョコ色のアイスが溶けていく。
「ああ……抹茶の苦味と、黒蜜の甘味が絶妙ですわ……」
 嵐はしなやかな舞いを披露すると、手にした扇子を徐々に広げていった。ブラウニーのしっとりとした食感に、和風の味が広がっていく様子を体現した、見事なパフォーマンスであった。


「抹茶黒蜜ブラウニー味も美味しそうだけど、あたしだって負けらんないよ♪」
 桐山 撫子が開発したのは桜餅味だ。
 ニッチ層からは絶大な支持を得ている反面、一般層からは敬遠されがちなフェスアイスのラインナップ。
 そこで撫子は奇をてらわずに、華乱葦原の定番「桜餅」を取り入れることで、受け入れやすさを狙ったのである。彼女の誠実さが現れたフレーバーといえよう。
「お餅の皮を厚めにして……桜餅の風味を合体させるんだ! 中にはこし餡を入れて、塩漬けの桜の葉で包んで……固めて出来上がりだよ♪」
 撫子は完成した桜餅味のアイスを、かぷりと頬張ると、満面の笑みを浮かべた。
「うんうん、表面の荒塩が絶妙な☆ハーモニーだね♪ これはもう、『花見だいふく』として売り出せるレベルだよ!」
 そのネーミングには待ったが掛かりそうだが、ともあれパフォーマンスとしては上々で、撫子の笑顔は多くの視聴者の心を捕らえていた。


(……いまのところ、反応は悪くないみたいね)
 コーナーの進行役を務める村雲いろはが、会場中に目を配りながら、番組スタッフの様子を伺っていた。滑り出しとしてはまずまずといったところだろう。
「一人だと寂しいので、協力してもらえませんか?」
 そんないろはに、クロティア・ライハが声を掛けた。クロティアが両手に持ったお皿には、スイートサプライズで出したホットケーキと、オリジナルフレーバーホットケーキ味がそれぞれ乗っている。
「なるほど……。“ホット”ケーキなのに、アイスという矛盾を追求したのですね」
 いろはが感心した様子で頷いていた。
 二人はさっそく、ふたつのお菓子を食べ比べてみる。ぴくっ。彼女たちの身体が、跳ねるように震えた。
「味が……進化しています」
「まるで、ゲームの進化合成のように」
 いろはとクロティアは、迫真的な表情でカメラを見つめた。その口内からは、ソシャゲのキャラクター進化時を彷彿させる派手なエフェクトが、今にも飛び出しそうだった。


「わたしは、フェス乳業の方みたいな発想力はありません」
 前野 望はそう謙遜しながらも、オリジナルフレーバーを完成させた。ティラミス味である。
「表面のココアパウダーの苦味と、ザバイオーネ・クリームの甘さがベストマッチです。ちなみにザバイオーネとは、卵黄と砂糖に洋酒を加えて煮詰めたデザートで、フランス語ではサバイヨンといい……」
 ティラミス味のアイスを味わいながら、望は淡々と【雑学披露】していた。
「……ティラミスはイタリア生まれのデザートです。日本では約40年前にブームになったそうです。いわゆるバブル期ですね。ちなみに現地では、ココアパウダーではなく、エスプレッソの粉を使うこともあるようで……」
 望の話に影響された視聴者たちも、こぞってSNSに雑学を投稿していった。そのため、『ケーキの雑学』とつけられたハッシュタグが、トレンドに急上昇するほどであった。
ページの先頭に戻る