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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

秋の祭典! アイランミーティング!

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秋の祭典! アイランミーティング!

リアクション

■芸能界最強!! ワダマツト・DX先生一日付き人体験! 2


●移動中

 ハイヤーで移動する間は、行坂 貫が付き人をしていた。
(危ないところだったな)
 貫はひそかに胸を撫で下ろす。彼はもともと「ワダさん」と呼ぼうとしていたのだが、その呼び方は古い友人にしか許されてないと、先ほど莉緒から教えてもらったのである。
 車内はチリひとつ残さず片付けておいたため、ワダマツトも文句はなさそうだ。さらに貫は、先生が退屈しないようにと、おつまみの詰め合わせを用意した。
「これ旨いじゃないのハッ!」
「お気に召されたようで、何よりです」
「食ってばっかりも暇だけどハッ!」
「でしたら、ちょっとした小噺をば……」
 そう前置きして、貫は鉄板トークをはじめた。最初はつまらなそうな顔をしていたワダマツトだが、徐々に喰いつい、最後の方は身を乗り出してきた。
 貫もだんだん調子づいてきたところで、つい、口が滑ってしまう。
「ところでワダさん、あ……、その、ワダマツトさん」
 すぐに訂正したものの、時すでに遅し。
「気安く呼ぶんじゃないよハッ!」
 狭い車内で、ワダマツトの怒号を浴びてしまう貫。フェスタ流護身術を使っていなかったら、致命傷だったかもしれない。


楽屋

「お勤めご苦労様です、姐さん」
 楽屋ではレキ・ガルハーツがワダマツトを出迎えた。
「あんた誰だいハッ!」
「えー、オレのこと知らないんですか」
 レキはここで、マネーイズオールで買収したスタッフにテロップを流させる。

 
ショタコン共に大人気 国民的弟アイドルのレキだよ


「……と言っても、もう15歳なんだけど」
「15でショタは無理だハッ!」
「でもオレ、芸能界で長くやっていきたいんだ。今すごく悩んでるんだけど……姐さんはこういう時どうしてた?」
 ワダマツトにマイクを向けながら、レキは訊く。
「ほら、“あの頃は”……?」
「ハッ!」
 気合いたっぷりの声が衝撃波となってレキを襲った。かろうじて500ダメージを耐えきったレキは、お約束が聞けたお礼としてサンマプリンアイスを渡し、丁寧に謝辞を述べた。
 ふらふらだったが、レキの顔は満足そうであった。


「意外な一面、お見せすればええんやろ?」
 レキと入れ替わりに楽屋に入った朝霞 枢は、子供っぽい仕草でワダマツトに近づいていった。怯えたように震えつつ、目があったらぱぁっと懐いた笑顔になる。艶っぽい芸の多い枢としては珍しいアピールだ。
「朝霞 枢ハッ! 肩でも揉めハッ!」
 ワダマツトががなり立てると、枢は応急手当の技術で肩を揉みながら、奔放な風であおいでみせた。スキルを効果的に使ったサービスに、ワダマツトも感心している。
 手ごたえを感じた枢は、ワダマツトの腰の上にするりと潜り込むと、子供らしい笑みを浮かべた。
「ちょっとだけ甘えられたらええなぁ、えへへ」
「……さすがにあざといハッ!」
 ついにワダマツトの怒号が飛んだ。枢のHPは高く、500ダメージを受けてもまだ余裕があったが、わざと派手に倒れてみせて、視聴者の同情を引こうとする。
「本当にあざといハッ! 自分、大物になるハッ!」
 枢を見ながら、ワダマツトはゲラゲラと笑っていた。


●スタジオ

「芸能界最強の怒号か……」
 龍造寺 八玖斗は、スタジオ入りするワダマツトをじっくりと観察していた。
「生で見ておけば、今後のアイドル活動に役立つだろう」
 そのためにはまず、ワダマツトを怒らせる必要がある。そこで八玖斗は番組に帯同しつつ、ワダマツトの打ち合わせが終わるまで、前説として『ワダマツト伝説』を披露することにした。
「ワダマツトさんは酒豪で有名ですが、ある日あまりにも酔っ払って、聖歌庁の前で大暴れしたことがあり……」
 と、飲みすぎて失敗した話を語った。八玖斗のトークに観覧客は大盛り上がったが、ワダマツトは当然、ご立腹である。
 前説を終えた八玖斗は、正々堂々とワダマツトの元に向かった。
「覚悟はできています。どうぞ、よろしくお願いします」
「ハッ!」
 念願だった怒号を浴びて、八玖斗はスタジオの端まで吹っ飛んでいった。


「本番入りまーす」
 スタッフの合図がこだまする中、八上 ひかり川村 萌夏は戦々恐々していた。
 今回収録する番組は、『パチンコ店を再現したセットを使って、ワダマツトとゲストがパチンコ対決する』というものである。ちなみに今回のゲストはひかりだった。
 もともとは萌夏にオファーが来ていたのだが、彼女の年齢が17歳だったので、ひかりに代わってもらったという経緯がある。
「も、もうヤダ、おうち帰りたい……」
 パチンコ店の店員役として収録に臨む萌夏は、すでに涙目になっていた。この番組はあくまでも、パチンコ店を再現したものではあるが、無類のギャンブル好きで知られるワダマツトは、台を打つ時はいつも本気なのだ。
「ハッ! なんで全然回らねぇんだハッ!」
 さっそく不機嫌になるワダマツト。リーチすらこない展開に苛立っていた。
 いっぽう間の悪いことに、ひかりは大当たりを続けざま引いてしまったので、なおさらワダマツトの機嫌が悪くなった。
(なんで当てちゃうかなあ……)
 出玉がどんどん貯まっていくパートナーを恨みがましく見やりながら、萌夏は店員としての雑用をこなしていった。おしぼりや湯茶の用意したり、灰皿を交換したり。
 萌夏が集めた吸い殻を捨てていると、ようやくワダマツトの台に動きがあった。リーチが掛かったのである。
(あ……どうか当たってくださいっ!)
 これ以上ワダマツトの機嫌が悪くならないよう、さっさと大当たりが出て欲しいと、萌夏は目をぎゅっと閉じて祈っていた。その時、彼女は足元にあるコードを引っ掛けてしまい、そのまま引っこ抜いてしまった。
 萌夏が引っこ抜いたコードは、ワダマツトの台の電源であった。
「………………」
 スタジオ内に沈黙が流れた。
 いちおうパチンコの筐体というものは、電源が落ちても当たりの情報は残っているらしいのだが、勝負事には流れというものがある。
 ワダマツトは真っ暗になった画面を、鬼のような形相で睨んでいた。スタジオ内の沈黙は、嵐の前の静けさだった。


●楽屋

 なんだかんだで、収録は無事に終わった。怒号でノックアウトされた萌夏と、巻き添えを喰らったひかりが、担架で運ばれていったのを無事と呼べるのであればだが――。
「お、お疲れ様でしたっ!」
 狛込 めじろは楽屋に戻ってきたワダマツトを出迎えた。秋口は冷え込むので、喉を労るために温かいお茶を出したり、時間を無駄にしないよう、必要な化粧道具をずらりと並べたりしている。
(大御所がどんなポリシーとプロ意識を持って仕事に臨んでいるのか知りたい……)
 という一心で、めじろはてきぱきと雑用をこなした。
 最初のうちこそ、ちょっとでもミスがあればふっ飛ばしてやろうと睨めつけていたワダマツトだが、隙のないめじろの働きぶりに、思わず太鼓判を押した。
「気に入ったハッ! 打ち上げについてこいハッ!」


●打ち上げ

 麦倉 淳が予約したお洒落なお店の、静かな個室では、絢爛な魚料理が次々と運ばれていた。淳はあらかじめタブレットPCを使って、評判のお店を予約していたのである。
「今日はお疲れ様だぜ、先生!」
 睡蓮寺 陽介がワダマツトをもてなした。妹がまとめてくれた【芸能マナー帳】の教訓は、しっかりと頭に入ってる。
(後はビビらず元気にいこう!)
 ワダマツトの貫禄に負けないよう、陽介は気合いを入れた。
「先生。ゆったりしてくださいね」
 淳もまた、ワダマツトをもてなした。彼が抱えていたうさぎの【あかり】も、ぴょんと飛び出してくる。
(わっ。懐こうとしてる?)
 飲食店で動物はさずかにマズいかと思い、淳は慌ててあかりを抱きかかえた。ワダマツトは怒号を言いかけたが、雰囲気のいいお店を予約してくれたことを鑑みて、トーンを落とした。
ハッ!
 腕の中で、あかりがびくっと震えた。

 気を取り直し、淳が食前のお酌をしていた。
「さあ先生。一杯どうぞ」
 そして陽介と一緒に、自分たちもお酒を頼む。無理やり連れてこられためじろは未成年なので、ウーロン茶だった。
 美味しい魚に舌鼓を打つうちに、アルコールも良い感じにまわってきて、会話も徐々に弾んでいく。最初の頃の緊張感はだいぶ薄らいでいた。
 宴もたけなわな頃合いを見計らって、陽介がファイアボールのジャグリングを披露する。
「お、陽介の大道芸きた☆」
 淳が盛りたてるなか、陽介は続いてフェアリーハーモニーを発動。ワダマツトのリクエストに応えながら、ビートフュージョンを重ね、耳と目で楽しませる。
「癒しの音色で疲れをとってくれよな!」
 彼らのおもてなしに、ワダマツトはすっかり上機嫌になった。淳、陽介、めじろの三人を見回して、ワダマツトは言う。
「自分らはハッ! 見込みあるハッ!」
 ワダマツトの口から発せられた言葉は、怒号ではなく、激励であった。
「いつか付き人ができるくらいハッ! ビッグになれハッ!」
「「「ありがとうございま……」」」
 その時。
 なぜか、三人を衝撃波が襲った。酔っ払ったワダマツト本人には、怒号も激励も区別がついていないようで、うっかりいつもの癖が出てしまったのである。
「「「わぁっ!」」」
 店の外まで吹っ飛ばされた三人は、もれなく500ダメージを受けた。
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