秋の祭典! アイランミーティング!
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■ライブで遡上! シャケマルランナップ! 4
「えー、こちら春人です。レースもいよいよ佳境にさしかかってきましたー!」
ゴール付近で待機する春人が、カメラに向けて実況していた。川面を振り返ると、遠方に挑戦者たちの姿がぼんやりと見えはじめる。
「どうやら先頭にいる人たちはグループを組んで、役割分担を決めてから挑んでるみたいだね。小さなボートの上だとやれることは少ないし、チームワークは大切だよね」
戦況を見つめる春人は、解説役もこなしていた。
春人がそう分析したとおり、蔵樹院 紅玉と蔵樹院 蒼玉のコンビネーションは素晴らしかった。
ユニット双玉夜光として一艇のボートに乗り込み、ライブとバトルを交互にこなしている。
紅玉が持ち歌【紅月夜風】を明るく元気にテンポよく歌っている間、蒼玉はディフェンシブストロークで熊の攻撃に備えつつ、体力を回復する。【紅月夜風】の一番が歌い終わると、ハイパーバトンタッチで役割を交代し、蒼玉が持ち歌【蒼月月花】を明朗に歌い上げ、紅玉が防御態勢を取り周囲を警戒した。
「本日の仕事も周り回ってアイランに影響がある――ということで頑張りますわよ蒼玉さん!」
「はい。頑張りましょうねぇ紅玉さん」
二人は励まし合いながら、隙のないパフォーマンスを繰り広げていく。拡声器から響き渡る歌声に、シャケマルだけでなく、観客も熱狂していた。
「すごいすごーい! どうやら二人乗りということを考慮して、衣装も軽めのものを選んでいるようです!」
春人がファッションチェックも兼ねて、実況と解説を続けた。
「双玉夜光の二人が順調にゴールへと近づいてまーす! ……っと、ここで追い上げをみせたのはミルキー☆プリンセスだー!」
背中合わせにボートに乗った夢宮 恋とアリス・ラブハートが、かわいらしいパフォーマンスでシャケマルを加速させた。
おさかなのルミマル~♪ およいでいくよ~♪
すごいスピード みせてあげる~♪
恋が持ち歌の【シャケマル応援歌♪】を三味線の音色に重ねながら歌う。紅葉をイメージしたBENI=TEMARIの和風コーデが、秋らしい彩りを添え、観客を魅了していた。
「シャケマルさんは、私がお守りします♪」
アリスが太刀を抜くと、優しく口づけるようにそっとブレスウェイブを宿した。太刀を振るい衝撃波を飛ばしながら、恋の歌声に合わせて優艶の舞いを披露し、周りを警戒する。ときおり魅せる嫣然一生の微笑みは、観客だけでなく熊まで魅了するほどだ。
「えへへ~。一位になったらヤキイモ食べ放題かも~♪」
恋もカメラに向けて華のかんばせを浮かべる。視聴者へのサービスも忘れない、ミルキー☆プリンセスの快進撃が続く。
だっしゅ!だっしゅ! すい♪すい♪すい♪
がんばれ♪がんばれ♪シャケマル♪ おさかなのルミマル~♪
「う~ん、秋らしい和のコーデがいいね! それに納涼婆娑羅に水しぶきが当たって艶もあるよー」
これには衣装にうるさい春人も絶賛していた。
「双玉夜光とミルキー☆プリンセス! 両ユニットとも抜きつ抜かれつの接戦を繰り広げていまーす! ……だけど、さすがに二人乗りは、ちょっと厳しそうだねー」
いくら女の子とはいえ、狭いボートに二人で乗るのは少し窮屈だった。100%のパフォーマンスを発揮するのは難しい。
「と、なれば……本命はこちらのチームでしょーか!?」
春人の実況に合わせて、ズームするカメラが映し出したのは、四艇のボート。
ユニットリトルフルールたちであった。
リトルフルールのライブ担当虹村 歌音と藤原 陽が、それぞれのカスタマイズギターを楽しげにかき鳴らしていた。
「シャケマルちゃん、頑張って!」
「優勝めがけてテンション爆上げしてこーぜ!」
対するバトル担当のウィリアム・ヘルツハフトは、ぴちぴちと踊るシャケマルたちを見て、首を傾げていた。
(……この奇怪な生物は一体何なのか)
「シャケルミーッ!」
魚型のルミマルが元気よく叫んだ。
(まあ……深くは追求しまい)
ウィリアムはそれ以上考えるのをやめて、防御態勢を取った。ゴールは目前に控えているが、辺りには獲物を狙う熊たちが待機している。最後まで気は抜けない。
「といっても、熊の縄張りに押し入ったのはこちらだ。出来る限り傷つけずに済ませよう」
聖式小型拳銃によるクイックドローを主軸に、ウィリアムは周囲を牽制し、仲間たちのボートから熊を遠ざけていく。
シャーロット・フルールも強力シャケの芳香剤を遠くに放り投げ、熊を散らしていた。残った熊には目を狙ってルミスナイパーの連射。
「それでも逃げない子は、どーんとやっつけちゃうよーっ!」
ウキスラッシャーの構えを決めて、シャーロットは張り切っている。
今でこそやる気満々な彼女だが、スタート直後は「泳げないボクにはめっちゃアウェーじゃんっ!?」と頭を抱え、山の幸に釣られて来たのをちょっと後悔していたのだ。しかし仲間たちに励まされ、気を取り直したシャーロットは、熊をばんばん撃退しまくり、今ではもうすっかり上機嫌だった。
「けどよ。かいちょは泳げないんだから、あんま調子に乗ら……」
「うわーっ!」
陽が心配しているそばから、シャーロットは足を滑らせて川に落ちてしまった。すぐに陽がボートを寄せ、手を差し伸べる。
「かいちょ! 早く捕まれっ!」
「あ、ありがとーっ」
差し出された手をしっかりと握り、ハイパーバトンタッチの要領で引き上げられるシャーロット。陽による応急処置のかいもあって、とくに怪我はなさそうだ。
「ったく、いきなり落水とか……心配するっしょ!」
「えへへ。ごめんね、よーちゃん」
ぺろっと舌を出して、シャーロットが反省した。
その時である。
「はーっはっはっはっは!」
澄み切った秋の空に、サイバネティック天河の笑い声が響き渡った。
「見よ! これが俺様流の川上りだー!」
巨大熊にボートごと吹っ飛ばされた天河は、血まみれになりながらも滑空し、他のアイドルたちをどんどん追い抜いていたのだ。
飛んでいく天河を見上げて、歌音が言う。
「わたしたちも負けられないっ。シャケマルちゃん! とっておきのキラーチューン聴かせてあげる!」
歌音はすかさず、持ち歌の【Shake My Life!】を披露した。シャケマルの川上りをテーマにしたポップな曲が、聞く者の心を震わせていく。
「Shakeルミーッ!」
シャケマルのテンションも最高潮に達し、歌音のボードを一気に押し進めた。
しかし――。
「はははは! 俺様が一番乗りだーっ!」
天河のボートが、先にゴール地点へ到達した。激しく地面に叩きつけられた衝撃で、ボートは粉砕し、天河は死にかけの状態だったが、それでも一番乗りには違いない。
まさかの番狂わせに、観客席からはどよめきと拍手が沸き起こっていた。
「え、えーっ。ちょっと待ってくださいねー」
レース会場内に、春人のアナウンスが流れた。なにやらシャケマル遡上レースの運営が、ルールの確認のため、協議をはじめたようである。
「あ。いま、確認が終わったようですー。えーとですね、運営によりますと……『ただいま一着でゴールした天河選手ですが、ボートが粉砕されているため失格』……だそうです」
「な、なにーっ!?」
通知を聞いた天河は、ショックのあまり気を失った。
「ということは……優勝は虹村歌音選手ですー!」
「やったー!」
歌音がぴょんぴょんと飛び回った。ひとしきり喜びを表現すると、最後はルミナイトフィーバーで、シャケマルといっしょにポーズを決める。
「それでは優勝者の歌音さん。いまのお気持ちをお聞かせくださいー」
春人にマイクを向けられると、歌音はレース会場をぐるりと見回して言う。
「優勝できたのは、みんなのおかげだよっ。リトルフルール、シャケマルちゃん、お客さん、ほかのアイドルたち……。みんなで頑張ったから、ここまでこれましたっ!」
「なるほど。ちなみに一位の賞品は山の幸フルコースですが、どうなさいますか?」
「もちろん、やることはひとつだよっ」
歌音はふたたび、レース会場をぐるりと見回して言った。
「みんなで一緒に食べたいと思います!」
「えー、こちら春人です。レースもいよいよ佳境にさしかかってきましたー!」
ゴール付近で待機する春人が、カメラに向けて実況していた。川面を振り返ると、遠方に挑戦者たちの姿がぼんやりと見えはじめる。
「どうやら先頭にいる人たちはグループを組んで、役割分担を決めてから挑んでるみたいだね。小さなボートの上だとやれることは少ないし、チームワークは大切だよね」
戦況を見つめる春人は、解説役もこなしていた。
春人がそう分析したとおり、蔵樹院 紅玉と蔵樹院 蒼玉のコンビネーションは素晴らしかった。
ユニット双玉夜光として一艇のボートに乗り込み、ライブとバトルを交互にこなしている。
紅玉が持ち歌【紅月夜風】を明るく元気にテンポよく歌っている間、蒼玉はディフェンシブストロークで熊の攻撃に備えつつ、体力を回復する。【紅月夜風】の一番が歌い終わると、ハイパーバトンタッチで役割を交代し、蒼玉が持ち歌【蒼月月花】を明朗に歌い上げ、紅玉が防御態勢を取り周囲を警戒した。
「本日の仕事も周り回ってアイランに影響がある――ということで頑張りますわよ蒼玉さん!」
「はい。頑張りましょうねぇ紅玉さん」
二人は励まし合いながら、隙のないパフォーマンスを繰り広げていく。拡声器から響き渡る歌声に、シャケマルだけでなく、観客も熱狂していた。
「すごいすごーい! どうやら二人乗りということを考慮して、衣装も軽めのものを選んでいるようです!」
春人がファッションチェックも兼ねて、実況と解説を続けた。
「双玉夜光の二人が順調にゴールへと近づいてまーす! ……っと、ここで追い上げをみせたのはミルキー☆プリンセスだー!」
背中合わせにボートに乗った夢宮 恋とアリス・ラブハートが、かわいらしいパフォーマンスでシャケマルを加速させた。
おさかなのルミマル~♪ およいでいくよ~♪
すごいスピード みせてあげる~♪
恋が持ち歌の【シャケマル応援歌♪】を三味線の音色に重ねながら歌う。紅葉をイメージしたBENI=TEMARIの和風コーデが、秋らしい彩りを添え、観客を魅了していた。
「シャケマルさんは、私がお守りします♪」
アリスが太刀を抜くと、優しく口づけるようにそっとブレスウェイブを宿した。太刀を振るい衝撃波を飛ばしながら、恋の歌声に合わせて優艶の舞いを披露し、周りを警戒する。ときおり魅せる嫣然一生の微笑みは、観客だけでなく熊まで魅了するほどだ。
「えへへ~。一位になったらヤキイモ食べ放題かも~♪」
恋もカメラに向けて華のかんばせを浮かべる。視聴者へのサービスも忘れない、ミルキー☆プリンセスの快進撃が続く。
だっしゅ!だっしゅ! すい♪すい♪すい♪
がんばれ♪がんばれ♪シャケマル♪ おさかなのルミマル~♪
「う~ん、秋らしい和のコーデがいいね! それに納涼婆娑羅に水しぶきが当たって艶もあるよー」
これには衣装にうるさい春人も絶賛していた。
「双玉夜光とミルキー☆プリンセス! 両ユニットとも抜きつ抜かれつの接戦を繰り広げていまーす! ……だけど、さすがに二人乗りは、ちょっと厳しそうだねー」
いくら女の子とはいえ、狭いボートに二人で乗るのは少し窮屈だった。100%のパフォーマンスを発揮するのは難しい。
「と、なれば……本命はこちらのチームでしょーか!?」
春人の実況に合わせて、ズームするカメラが映し出したのは、四艇のボート。
ユニットリトルフルールたちであった。
☆☆☆
リトルフルールのライブ担当虹村 歌音と藤原 陽が、それぞれのカスタマイズギターを楽しげにかき鳴らしていた。
「シャケマルちゃん、頑張って!」
「優勝めがけてテンション爆上げしてこーぜ!」
対するバトル担当のウィリアム・ヘルツハフトは、ぴちぴちと踊るシャケマルたちを見て、首を傾げていた。
(……この奇怪な生物は一体何なのか)
「シャケルミーッ!」
魚型のルミマルが元気よく叫んだ。
(まあ……深くは追求しまい)
ウィリアムはそれ以上考えるのをやめて、防御態勢を取った。ゴールは目前に控えているが、辺りには獲物を狙う熊たちが待機している。最後まで気は抜けない。
「といっても、熊の縄張りに押し入ったのはこちらだ。出来る限り傷つけずに済ませよう」
聖式小型拳銃によるクイックドローを主軸に、ウィリアムは周囲を牽制し、仲間たちのボートから熊を遠ざけていく。
シャーロット・フルールも強力シャケの芳香剤を遠くに放り投げ、熊を散らしていた。残った熊には目を狙ってルミスナイパーの連射。
「それでも逃げない子は、どーんとやっつけちゃうよーっ!」
ウキスラッシャーの構えを決めて、シャーロットは張り切っている。
今でこそやる気満々な彼女だが、スタート直後は「泳げないボクにはめっちゃアウェーじゃんっ!?」と頭を抱え、山の幸に釣られて来たのをちょっと後悔していたのだ。しかし仲間たちに励まされ、気を取り直したシャーロットは、熊をばんばん撃退しまくり、今ではもうすっかり上機嫌だった。
「けどよ。かいちょは泳げないんだから、あんま調子に乗ら……」
「うわーっ!」
陽が心配しているそばから、シャーロットは足を滑らせて川に落ちてしまった。すぐに陽がボートを寄せ、手を差し伸べる。
「かいちょ! 早く捕まれっ!」
「あ、ありがとーっ」
差し出された手をしっかりと握り、ハイパーバトンタッチの要領で引き上げられるシャーロット。陽による応急処置のかいもあって、とくに怪我はなさそうだ。
「ったく、いきなり落水とか……心配するっしょ!」
「えへへ。ごめんね、よーちゃん」
ぺろっと舌を出して、シャーロットが反省した。
その時である。
「はーっはっはっはっは!」
澄み切った秋の空に、サイバネティック天河の笑い声が響き渡った。
「見よ! これが俺様流の川上りだー!」
巨大熊にボートごと吹っ飛ばされた天河は、血まみれになりながらも滑空し、他のアイドルたちをどんどん追い抜いていたのだ。
飛んでいく天河を見上げて、歌音が言う。
「わたしたちも負けられないっ。シャケマルちゃん! とっておきのキラーチューン聴かせてあげる!」
歌音はすかさず、持ち歌の【Shake My Life!】を披露した。シャケマルの川上りをテーマにしたポップな曲が、聞く者の心を震わせていく。
「Shakeルミーッ!」
シャケマルのテンションも最高潮に達し、歌音のボードを一気に押し進めた。
しかし――。
「はははは! 俺様が一番乗りだーっ!」
天河のボートが、先にゴール地点へ到達した。激しく地面に叩きつけられた衝撃で、ボートは粉砕し、天河は死にかけの状態だったが、それでも一番乗りには違いない。
まさかの番狂わせに、観客席からはどよめきと拍手が沸き起こっていた。
「え、えーっ。ちょっと待ってくださいねー」
レース会場内に、春人のアナウンスが流れた。なにやらシャケマル遡上レースの運営が、ルールの確認のため、協議をはじめたようである。
「あ。いま、確認が終わったようですー。えーとですね、運営によりますと……『ただいま一着でゴールした天河選手ですが、ボートが粉砕されているため失格』……だそうです」
「な、なにーっ!?」
通知を聞いた天河は、ショックのあまり気を失った。
「ということは……優勝は虹村歌音選手ですー!」
「やったー!」
歌音がぴょんぴょんと飛び回った。ひとしきり喜びを表現すると、最後はルミナイトフィーバーで、シャケマルといっしょにポーズを決める。
「それでは優勝者の歌音さん。いまのお気持ちをお聞かせくださいー」
春人にマイクを向けられると、歌音はレース会場をぐるりと見回して言う。
「優勝できたのは、みんなのおかげだよっ。リトルフルール、シャケマルちゃん、お客さん、ほかのアイドルたち……。みんなで頑張ったから、ここまでこれましたっ!」
「なるほど。ちなみに一位の賞品は山の幸フルコースですが、どうなさいますか?」
「もちろん、やることはひとつだよっ」
歌音はふたたび、レース会場をぐるりと見回して言った。
「みんなで一緒に食べたいと思います!」