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【4】【バトル】セブンスフォール戦
2 レッドドラゴン・ハンターズ
2 レッドドラゴン・ハンターズ
この訓練は仮想空間上で行われている。用意された遺跡も、その障害物も、作り物だ。
とはいえ、その巨体を目にすれば、そうとわかっていても、物怖じしてしまうのが人間というものだろう。
しかし、そうであるならば、ものごとの行く末などそっちのけで覇道を進むものもまた人間。
天地 和は、どちらかと言えば後者の側であった。
「弱いわたしに力で勝っても、偉大なる竜の威光は増すどころか減るばかり。麻雀で知恵勝負をなされよー!」
そう高らかに宣言した和は、しかし親決めをする暇も与えられずドラゴンの太い腕に麻雀卓を吹き飛ばされてしまったのだった。
だが、その勇敢さに続いて、二人のアイドルがドラゴンへと走り込んでいく。
「さーんっ! にーっ! いーちっ! れーちゃんでーッス!!」
○ ー ○ ○ ○がフェアリーマイクを握り、大声でドラゴンを煽りながら周囲を騒々しく動き回った。
その動きに行く手を阻まれ、いら立った様子で息を吐くレッドドラゴン。
狙い通りとばかりにしたり顔をした○であったが、その蛮勇は吹き付けられた炎の吐息でもろくも阻まれてしまう。
「ギャーッ!?」
「大丈夫かいな、おとなしさん!」
ゴロゴロと前転しながら辛くもブレスから逃げ出した〇は、壁際に背中をぶつけてのびてしまった。
「ッ……目下の目標一等星(トップアイドル)っ! みんなのところに、しあわせくるくる、くる、くるるっ!」
だがその隙に、かりゆし くるるはヒム・チェインの先をドラゴンに向かって投げつけ、その足に巻き付けてその動きを封じる。
「みなさん、出番でっせ!」
「ああ、ありがとう!」
「待ってました!」
「何だかゲームみたいでワクワクするね!」
アーヴェント・ゾネンウンターガングと弥久 風花は勇敢な二人に感謝すると、ドラゴンに向かって勢いよく剣を振るう。
さらに世良 延寿が続き、アクロバットキックをドラゴンに見舞った。
アーヴェントと風花が同時に振るったイーヴルベインは、レッドドラゴンの脚に深々と傷を負わせ、延寿の蹴りがドラゴンをひるませた。
「そんでは一曲、聞いてくだせぇ……【スカイハイ】ッ!」
怯んだレッドドラゴンに向かって、くるるはスカイハイを放った。光の衝撃波が命中すると、ドラゴンは身を震わせた。
そしてそこから、剣を握って追い打ちを仕掛けたのは、Ultra Rayの橘 駿と桐島 泰河である。
二振りの剣が、アーヴェントと風花の与えた傷を深々とえぐっていく。太い脚に力が入らず、ドラゴンはたまらず体を傾けた。
「よぉしッ!」
その隙を見た風花は、紅染刀を構えると喉元めがけて勢いよく飛び掛かった。
しかしドラゴンはぐるりとやわらかく首をひねり、逆に風花に向かって大きな口を開き――炎のブレスを吐いて浴びせた。
それをあやうくスケイルシールドが防ぐが、直撃を受けた風花は突風めいた炎に巻かれて吹き飛ばされる。
「怪我はないか」
「多少は計算のうちよ。さすがはドラゴン、一筋縄じゃいかないってわけ」
気づかわしげに言った駿にパタパタと手を振ってこたえる風花の視線の先では、風花の作り出した隙をついて、延寿がスフィリカルブリザードをドラゴンめがけて投げつけ、さらにアーヴェントがユスティーツシュヴェルトを振るい、さらにもう一本の脚にイーヴルベインを叩き込んでいた。
鋭い爪が襲いかかるも、アーヴェントはそれをブロッキングで防御する。
延寿がスフィリカルブリザードを発動させて吹雪を開放すると、レッドドラゴンは咆哮しながら後ずさった。
そして前足をあげた一瞬を見逃さず、風花が同じ傷口に剣戟を重ねてかかる。
「――まずいッ! 二人ともさがれ!」
泰河がそう叫ぶなり、レッドドラゴンは翼を広げて羽ばたき始めた。
アーヴェントたちはその風圧に押し返され、すぐさま再び飛び掛かろうとしたが、しかしドラゴンは浮き上がったままブレスを吐き散らし、通路を崩して攻め込む道をふさいでしまった。
「あーあ……もう一手だったのに」
「つまんないの」
上に伸びる通路へ飛翔するドラゴンの姿を見つめ、風花は悔しそうに歯噛みする。
「いや、よくやった。少なくとも、あれで前足は使えないだろう」
駿が風花と延寿に、そう言って励ます。
「あとは、フェスタ生が点を取ってくれることを祈るだけだな」
「おう!」
目的を果たしたアーヴェントは、泰河とこぶしを勝ち合わせて笑った。
ドラゴンは上にのぼっている、という情報がこの場にいる全員に知れるのはそう時間のかかることではなかった。
千夏 水希はドラゴンそのものには大して興味を示さなかったが、フェスタ以外のアイドルたちも次々に上がっていくのをみすみす放置する手はない。
明かりの差し込まない回廊に待ち構えて、水希は近づいてくる敵が、間合いに入るのをじっと待った。
「――来た」
こちらに気づかないまま近寄る数人の集団に向かって、水希はダークフレア・ウィップを振るった。
闇に紛れていた水希のふいうちに混乱したところへ、さらにダークネスを放つ。
そうして倒した敵を魔喰の花の枝に吸収させると、敵の姿は幻のように仮想空間から姿を消した。
それを確かめて、水樹は再び暗闇の中に身をひそめるのであった。
上に行くほどに吹き付ける風は強くなっていく。
遺跡の中でもどこからか隙間風が吹いており、春瀬 那智はジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァをかばうようにして狭い通路を歩いていた。
「気をつけろよ、ジュネ」
「ええ、心得ています」
那智は、自分たちを追いかけてくるものの気配を感じ取り、この閉所までおびき寄せていたのだ。
「――姿を現したらどうだ? 俺はフェイトスター・アカデミーの春瀬 那智だ。
さあ、こちらは名乗ったぞ」
那智が高らかに告げると、角に潜んでいた他校生は、キンドルクロスボウを構えつつ、こちらへと歩み寄ってきた。
自らの名前と所属を告げる間も、彼は武器をこちらに向けたままだ。
「そいつは、剣に有利な正しさだ」
「だが、弓矢に有利な間合いだ」
那智はジュヌヴィエーヴを退かせ、ツヴァイヘンダーを構えたところで、その戦いは始まった。
敵の火矢を見切り、ディフェンシブストロークで防ぐと、彼はさらに間合いを詰めて攻撃する。
キンドルクロスボウを再びつがえる間に接近した那智の攻撃を、敵は危うく一度かわした。
そして敵は転げ、再び放った火矢が那智の頬をかすめた。
「騎士様っ!」
「――ッ!」
だが那智のツヴァイヘンダーが敵のクロスボウを弾き飛ばし、その喉元に剣が触れることで、その勝敗は決された。
橘 駿と桐島 泰河からドラゴンが上にのぼっていることを聞きつけ、白波 桃葉は多くのアイドルたちと同じく、上階を目指していた。
駿と泰河の先導に従う桃葉の後ろには、藤崎 圭がピノ・クリスを守るようにつき、殿は矢野 音羽が務めている。
一行は広々とした階段に差し掛かると、そろって息をつめた。待ち伏せをするなら、それ以上に良いところはない。
事実、桃葉のウィザーズフェザーはすぐそばに魔力の動きを感知している。
敵は魔法を使えるのだ。
「俺たちで切り込むから、桃葉たちは援護を頼む」
駿の言葉に皆がうなずくと、圭がスピニングエッジを抜いて二人の後ろに着いた。
「圭くん、気を付けて」
「大丈夫だ。心配するほどのことはない」
圭がピノの頭を軽くなでて、Ultra Rayの二人に合わせて階段へ躍り出ていく。
それに合わせて、音羽はパワーリフを奏で始めた。
呼応するように撃ち込まれた敵の弓矢といくつかの魔法をあやうくかわし、三人は進んでいく。
その背中では、敵陣に向かってロック・スナイプを撃ち牽制をかける桃葉の姿がある。
魔術師が体を引いたところを狙い、第二波が来るよりも早く、泰河と圭はそろってラン&スラッシュを繰り出し、敵陣へと切り込んだ。
「今だ!」
乱戦の兆候を見せた陣形に向かって、桃葉はさらにロックスナイプを撃ちかけつつ、ピノと音羽の立ち位置を前へ進める。
敵の近づいての魔法が炸裂するが、駿はこれを難なくかわして反撃を行っていた。
そんな駿を狙ってコンポジットボウを射かけた敵を目ざとく見つけると、圭は、スピニングエッジのツインスラッシュを仕掛けてこれを阻んで倒した。
「すまない」
「例には及ばない」
そこにすかさずダークフレア・ウィップを構えた魔術師が襲い掛かる。
二人は危うく一撃目をかわすが、さらに敵は鞭のように炎を振るってきた。
「圭くん!」
だが、その背後からピノがライトニングエッジを投げ放ち、手元を狂わせる。
一撃必殺とまではいかないが、その一撃は確かに二人の窮地をしのぐ時間を稼いだ。
「いい仕事よ、ピノちゃん!」
それを好機として、桃葉が魔術師めがけてロック・スナイプを打ち込んだ。
魔法で発射された石礫をしたたか食らい、敵の魔術師はもんどりうって戦闘不能になった。
「危なかったー……」
「でも、なんとか勝ったよね」
「ああ。そうだな」
待ち伏せていた敵に残心しつつ、桃葉たちはその場を後にする。
彼女たちの狙いはほかにある。先を急がねばならない。
腕に自信のあるドラゴン狙いのアイドルたちが去り、地上層に残っているのは、さしてドラゴンに興味のないものばかりになった。
五条 克也と藤原 明日香の二人も、そうしてほかのアイドルを探して行動を共にしていた。
「いた。向こうは二人か……」
「気を付けてね」
克也はピルムを構え、物陰から飛び出して敵めがけて一気に駆けた。
敵のナイトはいち早くそれに気づき、槍の鋭い突きを剣で逸らして間合いを詰めてくる。
さらに振り下ろされる一撃を、石突きで逸らして足取りを変えて距離をとるや、克也は敵ナイトに向かってツインスラッシュを繰り出した。
「まずは一人!」
倒れたままのナイトを置き、彼はさらにプリーストに向かってピルムを構える。
攻撃のための魔法を習得していなかったらしく、そのプリーストは杖で応戦したものの、克也の再びのツインスラッシュが炸裂し、敵は倒された。
束の間の静寂に一息つく克也だったが、しかし、その直後、背後で剣を握る音を聞く。
「まずいッ……」
槍を構えなおすが、間にあうはずもなく――だが、敵の攻撃を阻んだのは、明日香のピクシー・ロッドだった。
杖をしたたか打ち付けられ、敵はもんどりをうって倒れ込む。
「危なかったね」
「ああ、助かったよ」
そして安心したように歩み寄った克也たちは、またどこかへ向けて歩き出した。
道なき道を駆り、寄り付く他校生を蹴散らし、レッドドラゴンの寝床を突き止めたのは、サーカス愛好会リトルフルールだった。
前足の力を失ったレッドドラゴンは、寝床にしている大広間で、前足をかばうように浮かび上がったまま、アイドルたちを見下ろしている。
「本物じゃないにしても、凄い迫力ね……」
アスティノア・シエスタリアは、目の当たりにするドラゴンの姿にそれぞれ違う意味で身震いを起こしていた。
「準備はいい? それじゃあ、リーニャちゃん、ウィリーちゃん!」
シャーロット・フルールの指揮を受けて、リーニャ・クラフレットとウィリアム・ヘルツハフトが武器を構えてドラゴンの前へ出る。
「みんな、気を付けて……!」
虹村 歌音が敵前に立つ三人の隊列にニンブル・ブレスの敏捷の恩寵を授け、アスティノアが続いて牽制のアクア・ダートをドラゴンめがけて放つ。
前足の自由を奪われていら立っていたドラゴンは、鋭い水の刃を受けてさらに興奮したのか、リーニャたちに勢いよく尻尾を振り下ろした。
「ぐっ――!」
ダメージを受けながらも、リーニャとウィリアムはドラゴンの攻撃をそれぞれの盾で防ぐ。
そして、さらにアクア・ダートを放った瞬間、ドラゴンがそれをかばうようにして身をよじったのを、アスティノアとシャーロットは見逃さなかった。
「あすちゃん!」
「ええ」
アスティノアが再びカタラクタ・イストークに魔力を込め、アクア・ダートを放った。
高速で飛翔する水弾をよけきれず、もろに受けたドラゴンはひときわ大きく咆哮する。
「みんな! 弱点は首だよ!」
確信を得たシャーロットは仲間たちにそう指示を出して、自らもスフィリカルブリザードを手に構えてドラゴンめがけて接近していく。
「待ってて、今回復するから……!」
歌音が慌てて、傷ついたリーニャとウィリアムにニンブル・ブレスを歌う。
敏捷の恩寵を受けたリーニャのレイジオブビーストと、ウィリアムのラン&スラッシュが身じろぐドラゴンの首めがけて繰り出され、その刃は深々と傷を与える。
さらに追撃を加えようとしたところで、ドラゴンは大きくのけぞり、アイドルたちめがけて炎のブレスを吐きだした。
「危ないっ!」
無防備になっていたシャーロットを、リーニャのスケイルシールドが守る。
そのおかげでシャーロットは、防がれることなく己のスフィリカルブリザードを投げ放つことができた。
ドラゴンの首にぶつかって弾けた水晶は、封じ込められた吹雪を解き放ち、その傷口に深々とダメージを与えた。
地面に落ちたところへシャーロットはクラッシュダガーを抜き、トリッキーラッシュを繰り出し、もはや息も絶え絶えであったドラゴンにとどめを刺した。
すると仮想空間内に、無機質なアラーム音が響き、ドラゴンは幻のように姿を消した。
「……ドラゴン、倒しちゃった?」
「みたいだね」
後衛の歌音と目を合わせて、シャーロットはぽつんと言った。
「やったわね。みんなでつかみ取った勝利よ」
「……ああ。そうだな!」
アスティノアの言葉を皮切りにして、彼らはみな喝采を上げて、互いを大いにねぎらい、称えあってしばらくその場にとどまっていた。