和の世界「華乱葦原」には今、
　“新来芸道”……いわゆるアイドルブームが訪れています。

　地球と華乱葦原で、アイドルの才能を持つ人々が交流を行ってきた結果、
　地球のアイドルを真似した舞芸が流行し始めたのです。

　その新来芸道の流布にあわせて、アイドル育成学校フェイトスター・アカデミーは、
　より多くの人々にフェスタのアイドルを認めてもらうため、
　また世界を脅かす“悪しきイドラ”の謎に迫るため、
　学生たちによる舞芸者集団、ふぇすた座を立ち上げたのでした。


◆◇◆


　ある日、桜稜郭は床町のはずれを歩きながら、
　西宮　彩は物憂げにつぶやきました。

「ふぇすた座が立ち上がったとはいえ、
　すぐに大盛況というわけにもいかないでしょうし……。
　どこか別のところでも、公演ができればいいんですけど」

「俺に相談するな。興味はないぞ」

　彩は結界の点検に出ていた銀狐に、勝手について来ていたのでした。
　彼は、この町を守る結界を司る陰陽師で、天守である桜の丸に住んでいる、桜稜郭の要の一角です。

　そしてたどり着いた、銀狐の目的地である神社では、
　なにやら少年と舞芸者と思しき大人たちがいさかっているようでした。

「いい加減に邪魔するんじゃねえ、慎太！
　ここには、俺たち越後座がハコを建てるんだよ！」

「嫌だね！　神社を壊されたら、すみれが消えちゃうだろ！」

　慎太と呼ばれたこの少年の背後には、
　薄く透けた幽霊らしき女性が、おびえた様子で立っています。
　慎太は、彼女を舞芸者たちからかばっているようでした。

「このガキ、強情張りやがって！」

「はーいストップ！　子供相手にムキになるの、カッコ悪いですよ」

　彩は荒事に発展しそうな予感を覚えて、とっさに止めに入ります。
　すると、舞芸者たちの後ろから、見覚えのある一人の男が、彩の前に現れました。
　黒山　忍――グランスタの大幹部です。

「またフェスタですか……邪魔をしないでいただきたい」

「舞芸者なんて引き連れて、何かたくらみ事ですか？」

「たくらみ事などと、人聞きの悪い。
　私どもはただ、彼ら越後座を支援して、その拠点をここに建てようというだけのことですよ」

　そうだそうだ、と舞芸者の男が続きます。
　山吹なるその舞芸者は、桜稜郭一と名高い神楽座から独り立ちして、
　越後座という自分の座を立ち上げたのだと語りました。

「待て。ここには桜稜郭を守る結界の基点がある。
　お上の許しなしに、勝手なことはできないはずだ」

「それは“些末な問題”です。建ててしまえば許しも認めも、おのずと後ろからついてくるでしょう」

　黒山の強気は、グランスタがすでに華乱葦原においても
　かなりの影響力を持っていることを言外に示しました。

「慎太……もういいよ、ごめんね……。
　私はもう大丈夫だから、言うことを聞いて……」

　すみれと呼ばれた幽霊はさめざめ泣き、少年を背中から抱きしめます。
　少年の顔には、たくさんの生傷が付いており、
　これまで神社を越後座から守ってきたことを物語っていました。

「……西宮　彩だったか。
　お前、“ほかの公演場所を探している”と言っていたな」

「え？　確かにそうですけど、それとこれと何の関係が」

「関係はある。
　お前たちと越後座で、“御前披露”をするんだ」

　彼の言葉に、彩はなるほどと得心しました。
　“御前披露”、つまり城主や貴族を観客に迎えた舞芸の公演であれば、
　グランスタの影響力に太刀打ちできると、銀狐は踏んだのです。

「なるほど――いいでしょう。そのほうが、こちらも根回しの手間が省ける」

「言ってくれますね。こっちもちょうど、新しいテーマを思いついたところなんですよ。
　……幽霊さん、私と一緒に踊ってくれませんか？」

　彩の意図をくみ取ってか、幽霊のすみれはこくこくとうなずきます。

「決まりですね♪
　じゃあ楽しみにしてますよ、グランスタ……いえ、越後座さん」

「こちらこそ。ともに桜稜郭を盛り上げましょう、ふぇすた座さん」

　そうして、ふぇすた座はグランスタから神社を守るべく、
　越後座と“御前披露”を執り行うことになったのでした。


◆◇◆


　――それと時を同じくして。
　桜稜郭の巫たちに、道祖神を通じて、ある警句が発せられました。
　警句は映像の形として、巫たちに伝えられます。

　それは、仮面をかぶり、祈祷する陰陽師であり、
　彼を守るように次々に動き始める黄泉付きの骸であり、
　こちらへ向かって近づいてくる、柱と見まごうほどの巨大な腕でした。

　陰陽師の祈祷が、腕を桜稜郭へと向かわせ、
　さらにその進路上にある人里を次々に破壊しています。

　そして道祖神は告げました。
　“かの腕は神代に封じられし、裏切りの天津神が一部である”と。

　神話にある神々の戦争において、黄泉の軍勢に寝返った神々“穢ノ神（えのかみ）”。
　それが腕だけとはいえこの葦原に復活し、桜稜郭を目指して飛来しているのです。

　復活させた陰陽師は、名を「真蛇（しんじゃ）」と言いました。
　表向きの名ではないようですが、祈祷に用いているため、
　道祖神はそのように巫へ伝えているようです。

　道祖神そのものが何かを告げることは極めてまれで、
　つまりそれは、それほど事態はひっ迫しているということを表していました。

　巫を通じてこの事態を知った桜稜郭の殿姫、此花は
　戦える者――とりわけ異世界からやってきたふぇすた座の舞芸者たちに、
　この恐るべき事件への対応を依願したのでした。

陰陽アイドル大戦のトリガーシナリオ「ふぇすた座出張ライブ　Feat.幽霊！」をお送りします。

トリガーシナリオはメインクエストやグランドシナリオなど、
メインストーリーに影響を与える重要なシナリオです！

基本的にシナリオ参加者全員が小説（リアクション）に登場することになります！
また行動内容や結果などによって称号がもらえることもあります！

シナリオのルールや遊び方につきましては、下記をご確認ください。

●プレイガイド「シナリオアクションの書き方」
●マニュアル「シナリオ」

シナリオに参加したら、下記のアクションパートから一つを選択し
アクションを作成、投稿してください。

※アクション投稿時に【芸格】アイテムを装備していると、リアクション公開時に昇段する場合があります！
こちらのシナリオでは、どのパートでも昇段の判定の対象となります。
※シナリオで昇段する場合、リアクション公開日の前日までに入手し、
　所持している【芸格】アイテムの内、最も上位のものより上の【芸格】アイテムが付与されます。


○基本的な状況
・元神楽座の山吹を筆頭とした越後座は、
　床町のはずれにある廃れた神社をつぶして大きな会場を建てようとしています。
・しかしそこは幽霊のすみれが住み着いており、
　彼女の友達である慎太は、すみれを守るため建造に反対してきました。

・越後座に神社つぶしをそそのかしたのは、グランスタの黒山　忍であり、
　そこには会場を建てる以外に何らかの意図があるようです。
・この神社は街を守る結界の基点の一つであるため、勝手に壊すことは本来であれば許されないことですが、
　黒山はグランスタの強権で都合よく握りつぶすつもりのようです。

・そこで、陰陽師の銀狐はこの騒動を“御前披露”に持ち上げました。
　政治を司る人々と、政治の影響を受ける街の人々の前で芸を披露し、この是非を問うことにしたのです。

・こうして神社を守るため、またグランスタのたくらみに迫るべく、
　ふぇすた座は越後座を相手取り、向かい合う特設ステージでライブ対決を行うことになりました。

・一方そのころ、桜稜郭からやや離れた名もなき廃寺に、陰陽師が忍び込みました。
　「真蛇（しんじゃ）」と名乗ったその陰陽師は、宝物庫にある小さな神像から、
　はるか神話の時代の“穢ノ神”を復活させ、桜稜郭へ向かうよう“祈祷”しました。
・しかし神像に封じ込められたのは穢ノ神の“腕”だけであり、桜稜郭へ向かっています。
　穢ノ神は腕だけでも非常に強力であり、桜稜郭に到達してしまった場合は、甚大な被害は免れません。

・さらに陰陽師の祈祷の影響で、神社の周囲一帯が強すぎる黄泉の瘴気に冒されてしまっている影響で、
　廃寺周囲の墓地が黄泉の瘴気に冒されてしまい、黄泉憑きとなった骸たちが人里へ降りようとしています。

・皆さんは今回のシナリオで
　越後座との芸勝負に勝って神社を守り、
　桜稜郭へ向かってくる穢ノ神の腕を止め、
　黄泉憑きを起こしている陰陽師「真蛇」の祈祷を止めてください。

【１】【ライブ】越後座と座勝負をする　難易度２
コチラのパートの目的は「越後座との芸勝負に勝って神社を守る」ことです。

〇ライブのルールについて
　ライブは夜、日が沈んですっかり暗くなったころに開かれます。
　向かい合う二つのステージでライブを行い、
　全体の終演時点でより多くの観客を引き寄せた方が勝利となります。

　ふぇすた側のライブのテーマは「怪異」です。
　幽霊や荒ぶる神を題材とした舞芸は、この季節の風物詩として親しまれており、
　観客にはそうした要素を交えたエンターテインメントが好まれるでしょう。

　観客は街の人々がほとんどですが、貴族たちも特別席を移動しながら観覧しています。

　負けると神社が潰され、すみれは消えてしまいますが、勝利した場合は、
　神社を今後もふぇすた座の出張会場として利用できるようになります。

こちらのパートでは、例えば
下記のようなことができます。

・オバケの格好をしてライブをする
・怪談の寸劇を演じる
・幽霊を題材にした舞踊を披露する
・すみれと一緒にライブをする

などなど、「怪異」をテーマとしているライブならば、
自由に行うことができます！

〇神社について
　華叢大戦以前に建てられたという謂れを持つ古い神社です。
　しかし昨今はすっかりさびれ、幽霊のすみれと慎太を除いて、近寄るものはいません。

〇越後座について
　豪商の援助を受けて、神楽座から独立した舞芸者山吹が立ち上げた、今勢いを伸ばしている座です。
　豪奢さが特徴で、きらびやかな演出が評判な一方、成金趣味で虚飾的だと揶揄する人もいます。
　集まる舞芸者も華美なものを好み、特に山吹は【上分】の芸格を持つ腕利きの舞芸者として注目されています。

〇すみれについて
　神社にある結界の基点を依り代にした幽霊の女性です。
　生前は巫でしたが、黄泉に逝くことなく、結界を支える力の一部として同化しています。
　神社を壊されると依り代を失い、消滅してしまうでしょう。
　そのため、ライブの演出には積極的に協力してくれます。

※このパートでは慎太、すみれ、彩に対してアクションをかけられます。
※山吹に対してライブ対決を挑む場合、前座以上の【芸格】アイテムを装備している必要があります。
　１アカウントで複数のPCが参加する場合でも、いずれか1人のPCが【芸格】アイテムを装備していれば、山吹に挑むことができます。
　グループアクションで参加する場合、参加するすべてのアカウントに【芸格】アイテムが必要になりますのでご注意ください。

【２】【バトル】協力して穢ノ神の腕を止める　難易度３
コチラのパートの目的は「桜稜郭へ向かってくる穢ノ神の腕を止める」ことです。
時のころは夜、まさに桜稜郭でライブ対決が行われている最中です。

〇穢ノ神の腕について
　“穢ノ神”とは、神話の時代に封印された、裏切りの天津神の総称です。
　今回は腕だけが復活し、陰陽師の祈祷に従って桜稜郭へ向かっています。
　また非常に荒ぶっているため、みなさんの到着現在では、進路上にある人里や街を破壊しながら移動しています。

〇穢ノ神の腕と戦う
　太さ2メートル、全長10メートル程度の巨大な右前腕部です。
　馬と同じ程度の速度で、地面すれすれを飛行しています。
　非常に力が強く、漆喰の城壁程度ならば、やすやすと破壊してしまいます。
　頑丈で耐久力が高い一方、巫の攻撃を受けるとひるみやすい弱点を持ちます。

【３】【バトル】陰陽師の祈祷を止める　難易度２
コチラのパートの目的は「黄泉憑きを起こしている陰陽師『真蛇』の祈祷を止める」ことです。

〇廃寺について
　寺の周りにはうち捨てられた墓地がありますが、
　濃い瘴気の影響によって、動く屍にあふれています。
　屍は動きが遅く力も強くありませんが、数の力で攻めてくるでしょう。
　寺の中にも屍がさまよっており、本丸の陰陽師は宝物庫の中で祈祷を行っています。

〇「真蛇」について
　陰陽師「真蛇」は穢ノ神に、桜稜郭へ向かうよう祈祷を行っています。
　宝物庫の戸を開けば祈祷は止まります。
　祈祷を止めれば、穢ノ神は残りの身体の位置が分からなくなり、桜稜郭へ向かうことは難しくなるでしょう。
（とはいえ、穢ノ神の腕は祈祷されなくとも止まることなく暴れ続けます）
　祈祷が止まることによって黄泉の瘴気は霧散し、黄泉憑きとなっていた骸は動きを止めるでしょう。

※このパートでは、真蛇に対してアクションをかけることができます。