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  • 【ミニシナリオ企画】フェスタ★パーティ’29 inハワイ!

フェスタ★パーティ’29 inハワイ!

フェスタ★パーティ’29 inハワイ!


 観光にショッピングに海水浴に……やりたいことは山ほどあった。
 だがその中で、黒瀬 心美がチョイスしたのは、浜辺のライブステージに立つことだった。

「いっくよ――!!」

 人で賑わう白い砂浜に、心美のギターが冴え冴えと響いて、その音に視線が引き付けられる。
 ちょっと会話が通じなくても、心美の演奏は人の心をとらえたようだった。
 水着姿でステージの上を駆けながら、楽しげに奏でられる彼女の音色につられるように、観客たちも身体を動かし始めた。

(これが終わったら泳ぎにでも行こうかな……っと、集中集中!)

 つかみは上々。
 ノってきた観客に合わせ、演奏のボルテージを上げていく心美であった。


◆ ◇ ◆


 波打ち際にほど近い浅瀬では、藍屋 むくがこわごわと水の中……腰よりも少し下ほどの深さだが……を歩いていた。
 その手を引くのは藍屋 あみか
 不慣れな様子のむくに、文字通り手取り足取りレクチャーを施しているのだ。

「……そういえば、海のなかだとぷかぷかうかべるって、ほんとかな」
「むくちゃん、浮かんでみたいの?」

 そう話しながら足元のおぼつかない砂浜をおっかなびっくり歩いていく二人の傍らを、ふと一人の女性が泳ぎ去っていく。
 流されるまま、気持ちよさそうに浮いているその姿を、むくはじいっと見つめていた。
 そんなむくの表情に、ふふ、とあみかが笑う。

「じゃあ、お姉ちゃんが支えてるから、仰向けに浮いてみる?」
「……おねえちゃん、ありがとうなの!」

 あみかがむくの肩と手を支え、むくはゆっくりと力を抜いていく。
 足が離れ、胴が浮き、柔らかい風のような浮力に乗って、むくは水の上に胴を横たわらせた。

「――わぁ」

 仰向けに空を眺めるむくは、鮮やかな天蓋のような空の色に、感嘆の声を漏らす。
 そしてあみかはむくが自分の支えに頼らずに、きちんと力を抜けていることに気づいた。

(……ありがとう、むくちゃん。
 いつも元気と、優しい気持ちをくれる、私の大切な妹)

 あみかは支えていた手を離して、むくの隣で同じように、海の上に寝そべった。
 そして抜けるような空を、二人で眺めていた――。


◆ ◇ ◆


 ビーチは浮かれかえっている。
 長い棒を高く掲げてセルフィーしているものなど珍しくない。
 だがクロティア・ライハはスマホを構えて、海や空や建物をひたすらに撮り続けていた。

「せっかくハワイに来たんだし、背景写真はしっかり撮らないと……」

 そのようにして、しばらく。
 ひとしきり撮り終えて満足したクロティアは、スマホをダイビングケースにしまって海へとくりだした。

 ただガジェットを肌身離さず持とうとしている……だけではない。
 陽の光が淡く散る海中を見下ろしながら進んで、クロティアはカメラを起動する。

(こういう時じゃないと来られないしね!)

 海の底、あるいは泳いでいる魚。
 水中にレンズを向けて、やはりクロティアは写真撮影に余念がないのであった。


◆ ◇ ◆


「夕真! 海ですよ! 綺麗!!」
「翡翠、今日はテンション高めだね」
「夕真と一緒ですし、嬉しいんですよ!」

 穏やかな波を蹴って、月染 翡翠が砂浜を駆けていく。
 まぶしそうにそれを見つめながら、月染 夕真はしゃぐ翡翠の後ろを、ゆっくり追っていく。

(やっぱり新婚旅行だとわくわくするな)

「へぇ、そんな可愛いこと言われちゃうとドキドキする」
「またすぐそういう――」
「水着、似合ってるよ」

 おどけた翡翠に、夕真が不意にトーンを下げて言う。
 はっとしてたたらを踏んだ翡翠の手を取って、夕真は翡翠を後ろから抱きとめた。
 結んだ手には指輪が光る。

「俺だけに見せて」
「ゆ……も、もう、からかわないでくださいよぉ」
「からかってなんかいないよ、本当のことじゃないか――うわぁっ!?」

 するりと身を離し、ふいにかがんだかと思うと、翡翠は夕真に水を浴びせかけた。
 唐突な攻撃にたじろいだ夕真を見ながら、声を出して笑う翡翠。
 満面の笑みが日差しを受けて、いっそうまばゆく見えた。

「あははっ……夕真!! 幸せ、ですね!!」
「……ふふ、そうだね。幸せだ」


◆ ◇ ◆


「はわぁ……すっごいなの!」

 麦倉 淳は、並んで浮かんだジェットスキーの前に仲間を連れてやってきていた。
 なんでも、レースをするつもりで用意したものだとか。

「麦倉、乗れるのか?」
「現地の人にレクチャーしてもらったし……何とかなるよ、たぶん☆」
「面白そうね、私も参加するわ! 私が勝ったらトロピカルなジュース奢りね!」
「じゃあ俺はあそこのバカデカいバーガーで」

 白波 桃葉の言葉に乗るように、龍造寺 八玖斗も手をあげた。
 指さした先のダイナーでは、挟まれているとは言いがたいハンバーガーが出されている。

「オッケー、オレが勝ったら冷たいミルクティを奢ってもらうよ。タピオカ増量で☆」

 そうして三人がジェットスキーへ乗り込むかたわら、栗村 かたり麦倉 音羽の袖を引いた。

「音羽ちゃん、みんなが行ってる間にパンケーキ作るなの♪」
「いいわよ。私はどのみち応援だけのつもりだったし、水着になるのもちょっと――恥ずかしいし」

 音羽の返事にうなずいて返し、かたりは早速準備に取り掛かる。
 タネを出して仕上げたら、用意していた簡易グリルに火を入れ、温めた鉄板に乗せる。
 かたりの乗せたもののほうが、少し大きい――ような気がするが、ふたをしてしまえばわからない。

「あっちは……どうなってるかしら」

 音羽の視線の先、ジェットスキーに乗った三人は、もう声が届かないくらいには離れていた。
 少し先のブイを折り返して戻ってくるコースだったが、桃葉と淳はジェットスキーの動きに苦戦を強いられる。
 そんな二人に反して、八玖斗は見事なハンドルさばきを見せ、ぐんぐん距離をつけていく。

「おー。すごいスピード」
「なんでそんなに上手いのよ!?」
「知るか、自分でも驚いてる」

 そのままのペースでつっきり、ジェットスキーの勝負は八玖斗が一着を勝ち取った。
 ついで淳、桃葉が到着するころには、かたりと音羽のパンケーキが焼き上がり、準備が整いつつあった。

「おつかれさまなの!
 みてみて、音羽ちゃんの焼いたパンケーキ、すごいほわほわなの!」
「かたりさんのも、クリームとフルーツたっぷりで可愛いわよ」

 水からあがった三人を、甘い香りが迎える。
 運動のあとということもあるだろう、身体が空腹を訴えており、八玖斗と桃葉、淳はテーブルに並べられたパンケーキの皿へ、飛びつくように駆け寄った。

「うまそう! いただきます☆」
「私かたりんのがいい! クリームもっと盛ろうよ!」
「じゃあ、俺はクリーム控えめのほうで」

 彼らはそれぞれに取ったパンケーキを口に運び、そろって感嘆の声を上げた。
 口に合ったみたい――。
 三人の反応に、かたりと音羽は成功の手ごたえを感じ、笑みを交わしあった。

 そして、ひと仕事終えた音羽は、空と海の境目にぼんやりと視線をやる。
 いつのまにかかたわらに立っていた淳に少しだけ身を寄せてつぶやいた。

「空も海も、すごく綺麗」
「……また夜にでも観たいな」


◆ ◇ ◆


 砂浜のすぐ側にある評判のレストラン。
 青い海を臨むテラス席で、運ばれてきたロコモコに瞳を輝かせていたのは秋川 徹梧 双葉だった。

「んー! 美味しいっす! これならいくらでも行けるっすね!」
「うん、ハンバーグにかかったグレイビーソースがなんともいえない味わいね」

 美味しそうにがつがつとロコモコを平らげていく徹と、目を閉じてうっとりとハワイの味を楽しむ双葉。
 やがて双葉はスプーンを止め、少し困ったように眉尻を下げた。

「……でもね、私にはちょっと量が多いみたい」
「え、そうなんすか?」
「徹さん、私の分少し食べてくれないかな? はい、あーん。」

 自分の方へ向けられたスプーンを見て、徹は一瞬思考を停止させた。そして、ぶわっと顔を赤くする。

「って、あーんするんすか!? は、恥ずかしいっすよ!」
「恥ずかしいとか言わずに食べて欲しいんだけど、ダメ?」

 徹は葛藤する。双葉に大きな瞳でじっと見つめられて、「ダメ」だなんて言えるわけがない。やがて覚悟を決め、徹は耳まで真っ赤にしながら口を開けた。
 
「あ、あーん……」

 思い切ってぱくりと食べたその一口は、不思議と一際おいしい気がした。


◆ ◇ ◆


「皆、海で何かあっても安心してくれ! 俺はライフセービングの経験もあるからな」

 陽に輝く海を背に頼もしく胸を叩く龍崎 宗麟
 水着に着替えビーチに到着した一行は、初めてのハワイにそれぞれ胸を高鳴らせていた。

「それと、恋歌はナンパとかにも気を付けて――」

 しかし宗麟は狩屋 恋歌の指できらりと光る指輪を見て、「いや、その心配はないか」と付け足す。恋歌も少し照れながら指輪に触れた。

「ふふ、はい。私が誰かに付いて行くことなんてありませんから」
「まァ、変な輩に絡まれたらそこの兄チャンや俺に助けを求めろよ」

 天ヶ崎 玲央はぶっきらぼうにそう言って腕を組んだ。そして、やけに大人しい幼馴染――色造 空を玲央がちらと見下ろす。

「ん? ……流石に今、スケッチしているのは野暮だよな」

 夢中でページいっぱいに美しい海を描いていた空は、素直にスケッチブックをぱたんと閉じた。
 どこまでも青く広がる海を見渡して――さあ、何をしようか?

「あっ、あちらはなんでしょう?」

 恋歌が指を差した先では、海上を駆けるモーターボートとロープで繋がったパラシュートがちらほらと見られる。楽しそうに空を飛ぶ人たちを見上げて、宗麟がおおっと歓声を上げた。

「あれはパラセーリングだな! 凧あげの要領で空を飛べるんだ」
「ふむ、楽しそうだな」
「いいお天気ですし、すごく気持ちよさそうです」
「あァ、確か向こうで受付してたな。とりあえず俺が行ってくるから、空たちは迷子にならねェようにここで――」

 玲央が言いかけた時にはもう空は砂浜へと裸足で走り出していた。

「よし、アレに乗るぞ!! こういう時は思い切りと楽しむ気持ちが何よりも大切だからな!」
「……オイ、言った傍から、走り出す奴が居るかね。普通」

 そうは言いつつ、玲央は年相応にはしゃぐ空の背中を見て表情を少し緩ませた。楽しそうというのは玲央も同意だ。

「ほらほら、早く来ないと置いて行くぞ!! はっはっは、気分転換も良いものだ」
「あっ……ふふ。空さん、待ってください!」

 そうして四人はフライトへ。
 風を受けて高く高く舞い上がったパラシュートに、宗麟は興奮したように拳を上げた。

「すげえな! 海を一望できるぜ! はは、まるでドラゴンになった気分だ!」

 DraGo,リントヴルム! いつもの台詞を宗麟が楽しげに口遊むと、恋歌や空も笑って真似をする。

「……偶にはこうしてのんびりすンのも悪かねェかもなァ。で、この後は何すンだ?」

 スイカ割りは流石にハワイまで来てやることでもねェか、と悩む玲央へ宗麟はバナナボートを提案する。

「全部やろう! 時間は有限、今日を満喫するぞ」
「空さん、スケッチはいいんですか?」

 恋歌が首を傾げると、空は晴れ晴れとした笑顔で頷いた。
 今しか見られないこの景色は、楽しい思い出と共に。きっと家に帰ったら完成させよう。


◆ ◇ ◆


「嫌ー! 連行されるなんてやだー!」

 海水浴場に高い叫び声が響き、何事かと観光客たちが振り返る。現地の警察に囲まれて必死に抵抗しているのは弥久 風花だ。
 なぜ彼女がまさかの警察沙汰を起こしたのかと言うと――

「しつこいナンパをちょっと叩きのめしただけじゃない! 手錠まで掛けて連行するなんて酷いわ!」

 暴れる風花の近くの木陰には、すっかり気絶している男たちが並べられている。おまけにその顔には水性マジックの落書き付きだ。風花が悪戯をしているところだけを見た者が警察を呼んだのだろう。

「あっ! そこの貴方! 助けてー!」

 しかし悲しきかな風花のたどたどしい英語はネイティブにはうまく理解されず、晴れ空の下に虚しく響くのだった……。


◆ ◇ ◆


 すっかり日も落ち、空には満点の星空が広がっている。
 その下で肩を並べ睦まじく砂浜を歩いているのは、行坂 貫行坂 詩歌の夫婦だった。

「わ、本当に星が綺麗に見えるね!」
「ああ、ハワイは晴れの日が多いから天体観測に向いてるらしい」

 日帰りとはいえ今日は二人の新婚旅行のようなもの。夜の涼しい潮風の中、二人の足取りは軽い。
 目を輝かせて星を見上げる詩歌が転ばないようそっと肩を抱きながら、貫も微笑ましそうに笑った。

「ねえ貫、ハワイって夏は何の星が見えるのかな?」
「んー、確か南十字星とかは赤道に近くないと見れなかった筈だな」
「へ~! ……えへへ、やっぱり貫って詩歌の知らないいろんな事を知ってるね」
「いや、俺もあまり詳しくはないが……」

 いつの間にか詩歌が星ではなく自分を見ていたことに気付いた貫は、照れ隠しのように再び夜空に視線を向けた。

「……あと有名なのだと、ぼうえんきょう座とかじょうぎ座かな」
「ぼうえんきょう座! 面白いね、どんな形してるの?」

 貫が「えーっと」と指差す先を目で追いながら、詩歌は幸せそうに微笑む。この先も、二人で同じ星を見上げられる関係でありたいと。


◆ ◇ ◆


 虹村 歌音ウィリアム・ヘルツハフトと二人きり、波音を聞きながら砂浜でのんびり星を見上げいた。
 昼間はめいっぱい海水浴を楽しんだが、夜の海は昼とは違ってとてもロマンチックだ。

「ウィルさん、今日は楽しかったね! ちょっと強引に連れてきちゃったけど……」
「いや、俺もそれなりに楽しめた。それに――」

 こうして二人で星を眺めるのも悪くないものだ。そんな台詞を口走りそうになり、ウィリアムは慌てて言葉を切る。

「それに?」

 不思議そうにこちらを見ている歌音の視線から逃れるように、ウィリアムは夜空を見上げた。願わくば、こんな時間がいつまでも続いてほしいと思っている自分がいる。
 まさか歌音相手にこんなことを考えるようになるとは。

「人生とは分からんものだ」
「えっ、ウィルさん? 何の話?」

 はぐらかすように微笑むウィリアムに歌音は頬を膨らませた。本心の分からない彼にほんの少しだけ不安になってしまう。

(……バレンタインでの模擬結婚式で、いきなりほんとのキスしちゃったけど……ウィルさん、怒ってないかな?)

 切なげに見つめる歌音を横目に、偶然にもウィリアムも同じ日のことを思い返していた。

(……そろそろ、あの時の返事をしてやらなければな)

 静かに決意を固め、ウィリアムは歌音を優しく見つめたのだった。


◆ ◇ ◆


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